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よみタイムVol.87 2008年4月18日号掲載

 歌川派研究者/キュレーター ローラ・ミューラー

浮世絵に賭けた人生
現代にも流れ息づく



ローラ・ミューラー共著、Mueller, Laura J., with Fujisawa Akane, Kobayashi Tadashi, and Ellis Tinios「Competition and Collaboration: Japanese Prints of the Utagawa School」
Leiden: Hotei Publishing, 2007
232ページ豪華本、英語

ローラ・ミューラー著「Strong Women, Beautiful Men: Japanese Portrait Prints from the Toledo Museum of Art」
Amsterdam: Hotei Publishing(2005年)
96ページ、英語

 浮世絵展「歌川派:マスターズ・オブ・ジャパニーズプリント1770〜1990」がブルックリン美術館で6月15日まで開催されている。
 この浮世絵展のキュレーターがローラさんである。歌川派は、豊春を始祖とし、三代豊国、国芳、広重の三代画系を擁した江戸時代最大の画家集団だった。ゴッホに代表されるヨーロッパ印象派画壇に影響を与えた日本の浮世絵だが「実際に注目を浴びたのは晴信や歌麿、清長などの初期の絵師の作品で、歌川一門の作品はどちらかと言えば敬遠される状況にあった」という。
 その理由をローラさんは「当時の浮世絵版画は柔らかさ、イメージの豊富さ、オリエンタル趣味を満たしてくれるような題材が好まれました。歌川派の特徴である、明るい色彩で骨太のタッチによる役者絵などはあまり評価されなかったためと考えられます」。
 それでも19世紀の日本国内での歌川派への需要は高く、役者絵から美人画まで、世相を反映する身近な作品と共同で作業にあたる歌川一門のパワーは温存されて、20世紀に至っても「新版画」として命脈を保ち、豊国門下の国貞、国芳の伝系から、明治に入って活躍した月岡芳年、さらに鏑木清方を経て、伊東深水などに受け継がれている。
 「村上隆などの現代アーチストの作品や、漫画、アニメなどの文化の底にも流れが息づいていると思うんです」という。

 ローラ・ミューラーさんはミネソタ州ヘンドリックス生まれ。父親は医師、母親は看護婦という家庭で育った。「結構ワイルドに育ったんですよ」と日本語も流暢だ。子どものころから活発で、「スポーツ・ガール」だった。6歳で始めたゴルフは忙しくて今はあまりチャンスがないが、ミネソタの実家に戻る時はいつもゴルフバッグをかついでいくという。プロを意識したこともあったほどの腕前だそうだ。今は「ボギープレイヤーですね」同じころ始めたバイオリンは、両立は無理と中学でやめた。
 高校ではバスケットボール、シューターとして活躍。後年、日本政府のジェットプログラムで1年間徳島にホームステイして地元の公立中学校で英語を教えた体験を持つが、地域の社会人女性バスケットチームに参加、週2回、夜の練習や試合で活躍したという。
 「スポーツ・ガール」はやがて、地元ミネソタの大学に進学し国際経済を専攻する。
 漠然としたビジネス指向と子どものころから憧れていた「世界旅行への夢」が合体したのだ。大学生となって1年後、90年の夏、初めての海外旅行に選んだのは「京都・山科」だった。「暑さには参ったけど夏の京都は見るものが多く、最高でした。特に祇園祭りはよかったです」と当時を懐かしむ。3か月に及ぶホームステイで京都の夏を満喫、大学卒業後はジェット・プログラムで四国は徳島県に。1年間中学校の英語教師として教鞭を取った。92年のことだった。「ちょうどアメリカのテレビ番組『ポリス・クリップス』が日本で放映されていましたが、教室での質問に、先生はどんな拳銃を持ってますか?とかどんなドラッグを使ってるの、などと聞かれ大いに慌てました」と大笑いする。
 アメリカに戻ったあと、ダラスのサザン・メソジスト大学大学院で、ダブルメジャーでMBAとマスターオブアートを取得。二度の日本滞在の体験が大きく影響したのだろうか、次第にアートへの傾倒が輪郭を取り始める。
 ロンドンにある世界規模のアジア美術商「アシュケナージ」で1年間働きながら知識を吸収した。「美術一般からアジア美術、そして浮世絵の世界へっていうのが私の歩いてきた道ですね」。ウィスコンシン大学で博士課程を修了した。論文は「江戸の出版文化における継承、競争、共同制作―歌川派を中心に」というテーマだった。
 現在、ジョーンBマービス・ギャラリーでディレクターとして籍を置き、日本の屏風絵、現代陶芸なども手がけているが、あくまでも専門は浮世絵。ブルックリン美術館でのキュレーションは、他も含めてローラさん自身の手になるものとしては4回目。国際交流基金、文部科学省を通じた、2度の学習院大学大学院での研究も3年間に及ぶ。そのほか、トリード美術館、ウィスコンシンのチャゼン美術館での学芸員コンサルタントと経験は豊富だ。
 今回のブルックリン美術館の歌川派展もニューヨーク・タイムズ紙に大きく取上げられ、新進気鋭の浮世絵版画・歌川派の研究者としてローラさんは、またひとつ大きくなろうとしている。
(塩田眞実記者)

浮世絵展
6月15日まで
Brooklyn Museum
200 Eastern Pkwy
Tel:718-638-5000
www.brooklynmuseum.org