2021年12月17日号 Vol.412

コロナワクチン紙面勉強会[第2弾](2)
ブースター、変異株、子どもへの接種
〜日本クラブ・米国日本人医師会のウェビナーから〜


Q:4回目のブースターもあるのでしょうか?
A:その可能性は十分あると思います。ただ政府医療機関によるその判断は、長期的な抗体価データに基づいたものになるでしょうし、今あるワクチンの変異株への有効性にもよるでしょう。今回のブースター(3回目)は、2回目から6ヵ月経過していることが条件ですが、そうした詳細も今後のデータ次第です。

Q:うちの子どもは来年4月に12歳です。年齢的にギリギリでワクチンの量が少なくないでしょうか?
A:ファイザーの子ども用の容量は成人の3分の1で、12歳から成人と同じ量になります。お子さんの場合、どの時点で3回目の追加接種が必要になるかなどについては、必ず新しいデータが出てきますので、それを待つのが正しい対応だと思います。

Q:カナダでは、接種の間隔が8週間と聞きます。アメリカと随分違うのはなぜですか?
A:国によってアプローチは違います。アメリカのFDAは、21日間隔で行われた治験のデータを基に接種間隔を決めているとしています。例えばイギリスでは当初、アストラゼネカを認可後、接種間隔を空ける方が免疫反応も良かったというデータや、カナダ自国の心筋炎発症率に関するデータ(論文発表待ち)もあり、カナダはそういったデータを基に8週間と決めたようです。アメリカもカナダもそうですが、そうした背景を全て国民にインターネット上で公開しているのは透明性を確保する点で非常に素晴らしいことだと思います。

Q:中国のシノバック製ワクチンを打った後、ファイザー、モデルナのブースターを打っても、健康に害はないでしょうか?
A:シノバック製ワクチンも、WHOが認可するワクチンの一つです。CDCはそれらのワクチンも、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンと同じように考えています。大きなデータはありませんが、私はCDCの判断に準じて、対応しています。ぜひ主治医と相談して、どのワクチンを受けるか、決めてください。

Q:ワクチンの抗体と、感染して治癒した抗体は違うのでしょうか? 抗体価の違いはなぜ起こりますか?
A:感染しても、症状がない場合、軽い場合、重症の場合と、いろいろなケースがあり、それによってできる抗体の量も質もまちまちです。症状がなかった場合など、抗体価も低いはず。したがって、コロナウィルスに特化した抗体を作るワクチンよりも、感染による抗体価は平均的に低くなり、2度3度の感染の可能性もあるため、CDCは一度感染した人にもワクチン接種を奨励しています。



Q:ファイザーのブースターを打ちました。オミクロンの脅威はどの程度でしょうか。再度異なるワクチンを打たなければいけないのでしょうか?
A:オミクロン株についてはまだデータ不足です。遺伝子の変異から考えると強い懸念がありますが、実際に感染力が上がっているのか、ワクチンの効果が下がっているのか、重症化のリスクが上がっているのかは、今後のデータが待たれるところです。デルタ株の時も、それに特化したワクチンの必要性が議論されましたが、結果的にはこれまでと同じワクチンでデルタにも効果がると判断されました。オミクロンに関しては、今後のデータが待ち遠しいですね。

Q:変異株に対するmRNAワクチンは、8週間程度で出来るという話を聞きましたが、本当ですか?
A:変異株に対するワクチン作成は、比較的短期間で可能かもしれませんが、政府認可をクリアしないといけません。 効果と安全性を担保するためにFDAの認可に再び治験が必要なのか、インフルエンザワクチンのように、毎年型が違っていても承認される方法をとるのか。今回のオミクロンや、今後の変異株の発生と、その時の社会における緊急性により、そうした事情は変わってくるのではないかと思っています。

Q:人口の多いアフリカで、感染者数も死亡者数も少ないですが、無防備・無対策、つまり自然体でいる方がいいのではないですか?
A:アフリカにいる医療従事者らと話す限り、アフリカは、ワクチンもですが、検査キットの不足、コロナ感染やワクチンに対する認識の低さや疑念が問題化しており、十分な疫学的なデータが取れているとは思えません。感染率も死亡率も、正確に把握できていないことが大きな問題になっています。また、アフリカの地域によっては感染者への差別もあると伺っており、陽性になると2週間仕事に行けず、コミュニティから疎外されるため、検査を受けたがらないという問題もあるそうです。そうした地域と、西洋諸国や日本を単純比較はできないと思います。

イギリスもパンデミック当初、自然免疫確保の方向でしたが、そのために蔓延してしまい、すぐに方針を変更し、厳しい規制を敷きました。そうした事例からも、無防備・無対策がいいとは思えません。

ワクチンは予防策の一つ。マスク、手洗い、うがいなど、日常的にできることと併せて、総合的に予防していくことが大事だと思います。

QWHOが、先進国でブースターを進めるよりも、アフリカなど途上国でのワクチン接種を進める事の方が重要だと言っていますが、どう思われますか?

A先進国だけでなく、途上国にワクチンを広めることは大切だと思います。感染者数を減らすことは、今後の変異株の発生を抑えるのに非常に大切です。コロナやワクチンに対する認識を高め、疑念を払拭していくなど、多角的な対応が求められると思います。今後WHOやワクチン先進国のリーダーシップが待たれます。
話題のコロナ経口治療薬

ウェビナーでは、今話題の経口抗ウィルス薬についても説明があった。ファイザー製の「Paxlovid」、メルク製の「Molnupiravir」があり、いずれも米食品医薬品局(FDA)の緊急承認待ちで、感染直後の早期投与により、重症化リスクの高い患者で顕著な治療効果を示したと、メディア発表されている。「ただ、正式なデータはまだ公開されていません」と兒子医師。11月30日、FDAの委員会にMolnupiravirの最新情報が提出され、当初のメディア発表の50%有効から30%有効と修正された。

新型コロナ感染は2つの段階があり、まず感染するとウィルスが肺などに障害を起こし症状が出る第一段階。次に、それによって体が炎症を起こし重症化するのが第二段階。治療も、①第一段階のウィルスを標的とする治療と、②第二段階で炎症を標的とする治療に分かれる。話題の経口薬は①だ。これまでは静脈注射か筋肉注射しかなかったが、経口薬なら患者への投与も格段に簡易化される。

ただ、インフルエンザの治療薬タミフルと同じで、感染直後の早期(発症後3〜5日間)に投与しないと治療効果が見込めないので、コロナ検査結果のスピードアップが大前提となる。また、「陽性結果が出た人に処方箋を出し、患者自身が薬局に取りに行くことも好ましくなく、どのようにして経口薬を患者に届けるか、病院内でも積極的に話し合われています」と兒子医師は話す。



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