「America is back」にしても、国際社会の反応は芳しくない。前政権から引き続いて、対中国では厳しい姿勢を見せ、日本、インド、オーストラリアとの4国連携を示す「クアド」や、イギリス、オーストラリアとの軍事協力を掲げる「AUKUS」を作って見せた。が、その後の習近平主席とのライブ対話では、例によって融和的な微笑先行で、貿易や人権、東シナ海・南シナ海における現状変更など、中国が進める覇権主義的政策の変更を迫る厳しい気概と迫力は微塵も感じられなかった。ブリンケン国務、オースティン国防両長官やサリヴァン安全保障補佐官ら側近の顔ぶれを見ても、能吏タイプというだけで、国際社会を覚醒する革新的な政策を立案実行できる人材には見えない。今の国際社会は、間違いなく「非常時」であって、創造力と想像力に富み、実行への迫力を備えた重量感ある人材の配置が望ましいのだが、現状は真逆と言って良い陣容だ。
2021年6月25日、ホワイトハウスでアフガニスタンのアブドラ・アブドラ議長(左)とアシュラフ・ガニ大統領(中央)と会談するバイデン大統領 (25 June 2021)
アメリカ民主主義の特徴は3権分立と言われる。行政府は立法府に予算編成・財政支出・戦争権限・条約締結の権限を握られている。立法府は司法府により、法律が憲法の規定から逸脱していないか監視される。司法府は、行政府に判事の指名を委ね、立法府に承認の権限を委ねている……checks and balances……3権が互いに抑制し合いながら均衡 を保つよう設計された。18世紀の終わりに、遥かな未来に向けさまざまな思いを込めて新しい国の制度を決めたであろう先人たちの深謀遠慮が、230年余を経て無残に引き裂かれようとしている。これを危機と言わずして何というか。(敬称略)