2022年12月16日号 Vol.436

五嶋みどり、デビュー40年(2)
音楽を通して持続可能な社会を

日本では、身体障碍児の療育センターや学校のクラス、クラブなどで「特別楽器指導支援プログラム」を継続。そこでは、ミュージック・シェアリングに属するサポーティング・アーティストが定期的に指導。楽器貸与やメンテナンスなども引き受け、地域の文化祭やイベント、複数のグループが一堂に集まる合同コンサートも行っている。

2021年、コネチカット州のデリエンで国連でのイベントのために収録を行った。

「私も一緒にステージをシェアしています。若いミュージシャンたちにコンサートホールでの演奏を経験してもらうことで、音楽には『一生の友人』を作る可能性があることを体験して欲しいのです」。卒業生たちが父兄の協力をもとに室内楽を楽しむ会「いずみプロジェクト」にもサポーティング・アーティストを送っている。



「音楽の授業をカットしたNY州では、子ども達の相互理解を深めることを目的に、他国籍音楽を披露したり、楽器演奏を指導しています。放課後、帰宅して一人になっても、『音楽があれば寂しくない』と子どもたちに感じて欲しい。実は時々、バスの中などで、クラリネットやバイオリンのケースに「Midori & Friends」と書かれた楽器を大切そうに持っている子どもを見かけることがあり、その瞬間、喜びを感じて胸が詰まります。その子に向かって、思わず『THANK YOU!』と言いたいのを押さえていますよ(笑)」

2021年、アメリカの文化・芸術に貢献したアーティストに贈られる「ケネディ・センター名誉賞」を受賞したみどり(写真右端)(Photo @The Kennedy Center)

社会貢献と、みどり自身の公演。両者にはどのような違いがあるのだろうか。

「音楽活動(コンサートなど)は、私の『生活の基盤』。『演奏家』として日々の技術向上、音楽的センスを磨く、歴史的背景を学ぶなど、演奏曲のバックグラウンドを知り、身につけることすべてが『コンサート活動』に繋がっています。楽器のメンテナンス含め、衣食住に欠かせないものですから必要不可欠ですね(笑)。一方で、社会貢献活動は、そんな私の『生活』の上に立っているもの。社会貢献が出来る人間になるための音楽活動だと思っています」

さらに、米国カーティス音楽院を筆頭に、世界各地の音楽院や講習で教鞭を執るほか、日本の小中学や施設、海外の日本語学校を対象にした教材アニメーションの制作・配布など、その活躍ぶりは枚挙にいとまがない。

10月31日に行われた「ミドリ&フレンズ」のガラ・プレビュー・パフォーマンス会場で (Photo by KC of Yomitime)

10月31日、マンハッタンで「ミドリ&フレンズ」のガラ・プレビュー・パフォーマンス(後援:三菱UFJ銀行、スタインウェイ・ホール)が開催された。みどりと教え子たちは来場した支援者の前で演奏を披露、心からの感謝を告げた。

「音楽が人々にもたらす影響とは『孤独からの解放』や『尊敬する心』を養うことだということを、これまでの活動から実感しています。年齢は関係ありません」

日常生活の中で、ごく自然に寄り添い、助けとなる音楽の力。人と人を繋ぎ、癒し、楽しみを与えてくれる。

「音楽は、私を育んでいるすべてです」と話す五嶋みどり。音楽を通し、持続可能な未来を目指し続ける。

10月31日に行われた「ミドリ&フレンズ」のガラ・プレビュー・パフォーマンス会場で演奏を披露したみどり

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