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同時代を生きた 2人の画家
「ピカソ:青の時代を描く」展
 「マチス:赤いアトリエ」展
 Pablo Picasso, The Blue Room , 1901, Oil on canvas, 19 7/8 x 24 1/4 in. The Phillips Collection, Acquired 1927
© 2022 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York
Mo MA
   Henri Matisse, The Red Studio, 1911. The Museum of Modern Art, New York © 2022 Succession H. Matisse / Artists Rights Society (ARS), New York
Pablo Picasso, Two Women at a Bar, Barcelona, 1902, Oil on canvas, 31 1⁄2 x 36 in. Hiroshima Museum of Art, Japan
© 2022 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York
Pablo Picasso, The Soup , 1903, Oil on canvas, 15 3/16 x 18 1/8 in. Art Gallery of Ontario, Gift of Margaret Dunlap Crang, 1983. 83/316
© 2022 Estate of Pablo Picasso / Artists Rights Society (ARS), New York
Picasso: Painting the Blue Period
■ 6 月 12 日(日)まで
■会場:The Phillips Collection  1600 21st St, NW, Washington DC ■大人 $16、62 歳以上 $12
 学生 $10、18 歳以下無料
■ www.phillipscollection.org
Matisse: The Red Studio
■ 9 月 1 0 日( 土 ) ま で
■会場:The Museum of Modern Art  11 W. 53rd St.
■大人 $25、65 歳以上 $18
 学生 $14、16 歳以下無料
■ www.moma.org
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                                                                                                首都ワシントン にある美術館「フィ リップス・コレクショ ン」のお宝ともいう べきピカソの油彩画 ている。
女性刑務所を訪れ ている。世紀末のバ ルセロナは、失業者 で溢れていた。生き ることの悲哀や苦悩 が、藍や群青、透明 なブルーといったさま
場した。ここでの一点 の中のマチス作品の り感激せずにはいら 買い上げを拒否した されたのである。 は、同館所蔵の有名 所在を丹念に突き れない。 のである。その後、  すでに見知ったは
「青い部屋」。巨匠  本展は、こうした ピカソの長い画業の 科学的根拠を横軸 中でも、「青の時代」に、パリとバルセロ
デルも、自画像とし う珍しい展示である。 レクターでマチスの ての画家の存在もな「だからどうした?」大ファンだったセルゲ い。主役はあくまでも、という気持ちもあ イ・シューキンが、モ レンガ色の赤、平面 るのだが、画中画で スクワの自邸用にと
も酷評を浴び、巡り 巡って が収 蔵したのは1949 年。その2年後に開 催されたマチス回顧 展では一転、大きな 評価を集めた。その 頃、アメリカのアー ト界では、バーネット・ ニューマンやマーク・ ロスコら抽象表現主 義の画家たちが赤を 主体にモノクローム
だが、近年の赤外線 調査により、さまざ まな新事実が浮上し
作「赤いアトリエ」で 止め、「一堂に集め  「赤いアトリエ」は、 1913年の国際展 ある。画面には、モ てみました!」とい 帝政ロシアの大物コ「アーモリーショウ」で
ずの作品でも、今回 のような一点集中、 しかもゆったりとし た展示には、絵画 との味わい深い対話 が待っている。また、 若き日の間借りのア トリエ風景から、晩 年、 歳にして描き 上げた「大きな赤い 室内」まで、マチスの 一連のアトリエ画が 紹介され、充実の展 覧会となっている。
(1901〜 )と ナを行き来しつつ、 ざまなシェードの青
呼ばれる絵画スタイ 新しい絵画表現を追 に象徴されている。 的に塗られた色自体 はざっくり描かれた 注文したものだった
ルを代表するこの絵 求した若きピカソの  日本から貸し出さ は、まだ 歳のピカ 展開を多くの作品例 れた絵画も少なくな ソが2度目のパリ滞 を通して跡づけてい い。ひろしま美術館 在中に描いたもの。 る。実際、ピカソに の「酒場の二人の女」、 いわば青の時代の出 とって画布の再使用 ポーラ美術館の「海 発点をなす一点だ。 とは、今描いたばか 辺の母子像」、アサ  絵画表面の分析に りの自作をさえも否 ヒビール大山崎山荘 より、もとは縦長で、 定し、新たな手法を 美術館の「肘を付く 顎髭のある男の肖像 試みる挑戦の場だっ 女」、愛知県美術館の が描かれていたとい たようだ。 「青い肩かけの女」、 うことが分かっている。 画題には、女性 三重県立美術館のパ 同様に、カナダのオ 像が多い。昨今、オ ステル画「ロマの女」 ンタリオ美術館が所 ークションで高値を と計5点。どれも傑 蔵する「しゃがむ乞 呼ぶピカソの女性像 作揃いで、日本のコ 食女」と「スープ」に といえば、妻や愛人 レクションのレベルの も別の絵が隠されて を描いたものが多い 高さに驚かされる思 いるようだ。古いキ が、青の時代の女た いである。 ャンバスの再使用は、 ちは、娼婦や女囚、 ◇ 珍しいことではない。幼子を抱えた母親  ピカソの青に対し
であり、強いていえば、 だけの風景画やヌー が、先に仕上がった「ピ その色の海に浮遊す ド画が堂々の姿を現 ンクのアトリエ」には
てマチスの赤。何と る自作の絵画や彫刻 し、画面左下の絵皿 満足したものの、赤 の絵画を発表し、マ
まだ無名のピカソに など、社会の底辺に
は、画材の節約の意 生きる者たちだ。当
味もあったのだろう。時ピカソは、パリの 会が に登  本展は、これら絵 るのを見ると、やは な構図と映ったのか、た作品の先駆とみな
もタイムリーな展覧 だろうか。 まで実物が並んでい の方はあまりに奇抜 チスの赤は、そうし
(藤森愛実)




















































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