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[ 5 ] 03/11/2022 YOMITIME・WWW.YOMITIME.COM・info@yomitime.com・
  NEW FILMS FROM JAPAN : ACA CINEMA PROJECT
A C A シ ネ マ プ ロ ジ ェ ク ト シ リ ー ズ 第 3 弾「 N e w F i l m s f r o m J a p a n 」が 3 月 1 1 日 ( 金 ) から 17 日 ( 木 ) まで、IFC センターで開催される。海外での日本映画上映と展開を促 進する目的で行われる文化庁委託事業「日本映画海外展開強化事業」プロジェクトだ。 今回は「Blue/ ブルー」( 吉田恵輔監督 ) と「由宇子の天秤」( 春本雄二郎監督 ) が上映。 それぞれの監督へ、映画にかけた想いを聞いた。※映画あらすじは 6 面で紹介
      すべての挑戦者へ贈るエール
誰もが持つ心の本質を問いかけ
      NS S
MC
40
14
13
■ 3 月 11 日 ( 金 ) 〜 17 日 ( 木 )
■会場:IFC Center
 323 6th Ave. (at West 3rd St.)
■ www.ifccenter.com/series/aca-japan-2022 ■一般 : $17、シニア / 子供 : $14
 IFC メンバー $12、学生 $13 ( 要 ID)
※ ACA cinema project ポストカード提示で $4 割引
★上映日程: 「Blue/ ブルー」Blue
 9:30pm:11 日 /13 日
 6:30pm:12 日 /14 日 /16 日
「由宇子の天秤」A Balance
 6:30pm:11 日 /13 日 /15 日 /17 日  8:45pm:12 日
10
   「BLUE/ブルー」吉田恵輔 監督
  「由宇子の天秤」春本雄二郎 監督
 「基本的には愛の ある映画を作りたい と、いつも思っていま す。人間を描写する には短所と長所、両 方を描くことが必 要。短所を掘り下げ た作品も多いのです が、それでも『人間っ て愛おしい』と思え
年以上前に出会っ くる。他者の「才能」 きなことを続けてい 登らなくてはいけな ますが、『これで失敗
 女子高生イジメ自 殺事件の真相を追求 する、ドキュメンタリ ー・ディレクターの主 人公、由宇子(瀧内 公美)。取材の過程 で、自らの父が犯し た罪を知ったことか ら、彼女の『真実』が 揺れ動いていく。
鑑賞者それぞれが、 会的な罪を隠そうと 動くのが日本人の特
狡さといった普遍的
るようなキャラクタ 方です。彼はC級ラ ます。私自身、映画 成する」のは一握り。 酷さが生きがいなの ーを目指しています」イセンス(4回戦)で、監督を目指して自主 多くの人々にとって、かもしれません。夢 と説明する。 2勝 敗の記録を残 映画の映画祭に何度 「夢」はやはり夢な の終わりが崖でない  3人のボクサーを して引退。一般的に も挑戦、ずっと落選 のが現実だろう。 ことをいつも願ってい 主軸にした人間ドラ ボクサーは、数敗す してきました。諦め  「『夢』とは、よく ます(笑)」 マ「BLUE/ブルー」。ると引退してしまう ようとも思いました 使われる言葉ですが、 本作の は「譲 中学2年からボクシ のですが、彼は勝て が、それでもやめる 『夢=呪い』のよう れないものは、あり ングを続けていると なくても、ひたむき ことが出来ませんで な側面があると思っ ますか?」と、我々
 映画に登場するの い。それがどんな結 は、どこにでもいそ 果になろうとも!」 うな普通の人々だ。  好きなコトを差し 負け続けるボクサー、 違える覚悟で続けて 頭に爆弾を抱えるボ いく。それには特別 クサー、女にモテた な「才能」や「夢」が くてボクシングを始 必要な訳ではないと、 める男...。ハリウッド 「BLUE/ブルー」は
いう吉田監督。自ら に練習を続け、負け した。才能がどうこ ています。手に入れ
脚本を書き、拳闘シ ても笑顔で他の選手 うというよりも、『好 るまでは楽しく、指
ーンでは殺陣指導も を応援できる、とて き』という気持ちが 針となりますが、そ
担当した。 も素敵な人でした」 最優先されたからだ れが叶った瞬間に一  「自分の作りたい  「主人公・瓜田(松  長く努力し続けて と思います。続けた 転する。その喜びを 作品だけを作りたい。 山ケンイチ)のモデル いる人物ほど、自分 結果、どうなるかは 噛み締める余裕もな 生活の為、仕事がな は実在の人物です。自身の限界が見えて 分かりませんが、好 い中で、次の階段を いなど、不安もあり
映画のような見目麗 しいスーパー・ヒーロ ーは登場しない。  「ボクシングの試 合で『青コーナー』に 立つのは挑戦者、加 えて青い炎は温度 が高い、それがタイ
伝えている。
た人で、選手でもあ を目にした時、嫉妬 り、トレーナーもして し挫折を味わう。 いました。私も一緒  「『才能』については、 に練習したり、ミッ 時代や流行りなども トを持ってもらったり 大きく作用するので と、お世話になった はないかと考えてい
る『姿』は、たとえ惨 いという焦り、せっか するなら悔いはない』トル『BLUE/ブル
 「映画自体が、『正 合、どう行動するの 義とは何か?真実と だろうか。天秤のよ は何か?』を問いかけ うに揺れ動く『真実』 ています。個人から を、『ドキュメンタリ 見える真実、それぞ ー作家』の目を通し れの人々から見える て描いています」 真実など、異なった  約 日間で撮影し 立場から見える景色 たという同作。監督 を描きたいと思いま 自らスケジュールを決 した。スマホを持って め、時間配分しなが いれば誰でも情報発 ら演出。長く助監督 信ができてしまう今、 を務めていた手腕を 情報を正しく扱い真 発揮した。 実を伝える『プロ』の  「今回、制作テー 存在は重要です。と マのひとつとして『、演
る』と感じるモノも
ありました。もちろん、さまざまな想像力を
音楽も映画の重要な 掻き立たせることに
要素であり、作品を 繋がれば嬉しい」
より豊かにしますか  同作は、アジア各
ら、それを否定する 国のみならず、ヨーロ わけではありません。ッパや北・南米など、では『恥』よりも『恐 い脆弱性を描いたこ
ころが、その『プロ』 の人間が窮地に立た された時、果たして 真実を正しく伝えら れるのか。それが真 実に忠実であるべき 報道関係者だった場
出』『脚本』『音響効 果』で、全編を見せ たいと考えていまし た。私がこれまで関 わってきた作品には、 音楽を挿入すること で、『音楽に頼ってい
友人など、監督は普 通の人々が持つ多種 多様な「天秤」を映
し出す。
 「人間の弱さや揺 らぎ、真実は多面的 であるという側面、かけている。
敗しようとも美しい。 く手にした夢に逃げ という仕事を選びた
ー』の意味するとこ ろです。すべての挑 戦者たちに『今、お 前は最高に格好良い ぞ!』と言ってあげた
その美しさは結果よ り、豊かなものかも しれません」  どんな分野でも「大
られてしまうという い。刺し違える覚悟 恐怖もあるでしょう。 を持てる作品と向き 私にとっての夢とは、 合う、そこは譲れな 試練であり、その過 い部分です」
ただ私は音楽を使わ
ず、音響効果、例え
ば自然の音、子ども
の声、電車の響きな
ど、実際の『音』を使
いたかった。本作では、
鑑賞者にもたらす効
果を、音響担当と話
し合い、計算・予想
しながら制作。音楽
が流れるシーンもあ
りますが編集で挿入
したのではなく、撮
影中に流れていた音
楽を使用しています。徴されるように、『社 ば誰もが持つ弱さや
に問いかける。監督 にとって「譲れないも の」とは何か。
な部分。正義を声高 徴』として捉え、そ に掲げている人々が、
の部分と重ねている 己の公正さ、罪の暴 のではないかと感じ 露を問われた時に抱 ます。ですが、最近 える矛盾。人間らし
に迫りそうな数の 怖』が勝っている。建 とが、環境や文化を
映画祭で上映され、 前を気にしない世代 超えて人々に理解さ
高評価を得ている。 がふえ、欧米ではバ れたのだと思います」 我々に欠けているこ  「アジア圏、特に ッシングされる恐怖  嘘をつき続けるこ とは何か、自分のこ 中国や台湾、韓国の に共感を感じている とで得られる利益と、 とには真剣になれて 人々からは、大きな のではないかと分析 真実を暴露すること も、他人事ならどう
共感を得ていると感 しています」 じています。一方で、   などを通 欧米の人々は『日本 して誰もが情報発信 の恥の文化』と結び 者になれる現代。激 付けているのではな 増した情報量、複雑 いでしょうか。日本 化したネット社会で の『家名に泥を塗る』 の「真実」は千差万 という言い回しに象 別だ。「人間であれ
で失うもの。被害者、か...そういった人間 加害者、親子、師弟、 の本質を探りたかっ
た」  「罪の暴露」を課せ られた時、それがで きるか否か...誰もが 持つ心の本質を「由 宇子の天秤」は問い




















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