2018年4月13日号 Vol.323

[第87回]
今昔物語「キャブの忘れ物」


30年近くキャブを運転していると、忘れ物にも時代が反映されるとつくづく感じます。20〜30年前の忘れ物といえば、カバンや財布、電話帳、現金ってとこでしょうか。時々タブロイド紙を賑わした話題に、演奏家が忘れていった自分の楽器があります。ヨーヨーマが自分のチェロをキャブに置き忘れたことがありました。
そのキャブのドライバーが1日棒にふって落とし主を探したらそれがヨーヨーマで、チェロを届けたら75ドルだかを謝礼にもらったと。数百万ドルの楽器を届けて75ドルはないだろうと、タブロイド紙の餌食になった出来事でした。その後ヨーヨーマはきちんとお礼をしたと聞いています。
とにかく、一昔前ならキャブの忘れ物といえばこういうアナログな感じでした。それが10年くらい前からでしょうか、忘れ物の主流が携帯電話やスマホになりました。ラップトップを忘れていく人もいます。
去年の暮れの僕の体験はこんな感じ。
アッパーウエストからペンステーションまでの女性客を乗せたところ、その女性が「誰かが忘れ物をしているわ」と言いました。ケースに入ったラップトップでした。
忘れていったのは、、その直前に乗せた女性客だと思うんですが、アップルのマックブックとかなら、コンピューターを開くにはパスワードが必要なはずなので、勝手に開けるわけにもいかないしで、僕としては忘れた女性がTLC(タクシー&リムジン協会)に連絡してくれるのを待つしかないと思いました。
ところがこの女性客、「私がやってみるわ」とコンピューターを開けて何やらやりだし、なんとパスワードをどうしたのか知りませんが、落とし主の電話番号を探り当てて、自分の携帯から電話して話し始めたんです。
会話の内容を聞いていると、ラップトップの中には、落とし主の勤務先の重要な情報が入っているみたいでした。拾った女性は「じゃあ明日***で、###時に会いましょう」って話してるんですよ。
これが映画なら、拾った女性が悪者で、ここから企業犯罪に発展する展開でもおかしくない状況。ラップトップってそんなに簡単に開けられるものなんでしょうかね? なんだか空恐ろしい思いで、この女性たちの会話を聞いていました。
そこで本日の教訓。忘れ物に今昔あれど、キャブのレシートさえもらっておけば、どのキャブでいつ忘れたかピンポイントで分かり、後でTLCに連絡することができます。レシートは要らないと思っても、もらうようにしてください。(白石良一)



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