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 よみタイムについて
   

よみタイムVol.99 2008年10月17日号掲載
 
社会派陶芸作家 北出 健二郎

「羊人間」で問題提起
「毒と下らなさ」を武器に


ガスマスクをつけた子ども

 ミート・パッキング地区の真ん中にあるギャラリー「hpgrp」で、10月10日から11月9日まで開かれている。
 陶器作品だが、実用性のないファインアート。アメリカではコンフロンテーション・アートと呼ばれる社会的なメッセージが込められた作品だ。
 ぷっくりしたお腹、全体に丸みを帯びた人体、4、5歳の子どもをイメージしたオブジェがなぜか、どれも顔にガスマスクを着けている。よくみると頭は羊、からだは人間という異形の存在。遠目には無邪気に遊ぶ子どもの姿で一見平和なイメージなのに、細部に目を転じると、底知れない暗い穴の中を覗き込むような得体の知れなさが広がる。
 「世界は今、不安、不信、絶望で押しつぶされそうに感じるんです。食の安全が危機にさらされてるし環境破壊は地球規模で進んでる。マネーゲームの過熱で磐石と思われていた超大国の経済は揺らぎ、理想や価値観の違いから国家間や民族間の抗争も絶えることがないですよね」。
 羊の頭を持つ北出のキャラクター群は、ただ単純に大気汚染から身を守るためにマスクを着けているわけではない。人間の心に宿る不安感や不信感はやがて「恐怖」に変わる。「僕はその全体としての『恐怖』を象徴するものとしてガスマスクを使ってるんです」。
   ◇
 今年31歳。父の仕事の関係で中学生2年生の時に家族でニューヨークへ。その後、両親は転勤で日本に帰国したが、そのままコネチカットの私立高校に進み大学はNYUへ。偶然受けた陶芸の授業で画家志望を捨てる。小学校時代、先生が陶芸家で学校には大きな電気の窯があった。北出も陶芸部に入ってのめり込んだ経験がある。そのころの忘れていた記憶が、粘土の感触が、指先から暖かい湯が沁みこむようにからだに広がっていった。大学院ではわき目も振らず陶芸一本だった。
 北出作品に登場する羊人間。ある時、自分をモデルにした作品を作ろうと思い立った。当時アフロヘアで北出の頭は異様にふわふわと大きかった。「さて、どう表現しようかと思案しているうちに、羊のイメージが湧いたんです」思考錯誤するうちに頭は羊、からだは人間という「羊シリーズ」が完成。
 羊人間たちははっきりした輪郭を持って独り歩きを始める。「僕の作品は次第に社会現象に対して疑問、質問をぶつけるという要素が強くなり、それなら人間と人間が直接顔つきあわせるよりも、羊人間でワンクッションおくことによって、お互いの行き来が素直になれるんじゃないかと考えついたんです」。
 個展を開くたびに、テーマが少しずつ変わる。去年東京で開いた個展では「環境問題」を提起した。今年の北京オリンピック開催直前にニューヨークSOFAに出展したテーマは「公害」、今回のテーマは「希望」だという。「作品見てもらってもどこが希望なの、っていうものばかり。作品の毒と下らなさを見てもらって、これいいねって笑ってもらえるのが一番の手ごたえかな」と頭をかく。
 来年3月下旬、ニューヨークで籍を入れたばかりの妻、桂さんと東京の乃木神社で神前結婚式を挙げる。「小じんまりした神社なので式は庭でやるんですよ。かがり火が焚かれて神楽が舞われるんです。夜桜がきれいだといいな」と目を輝かせた。 
(塩田眞実記者)

北出健二郎展
10月10日(金)〜11月9日(日)
HPGRP GALLERY NEW YORK
32-36 Little West 12th St, 2nd Fl.
(Bet. Ninth Ave.& Washington St.)
Tel: 212-727-2491
www.hpgrpgallery.com
時間:火〜土11:00am〜6:00pm
日12:00pm〜6:00pm