2022年10月28日号 Vol.433

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独自の音楽で癒し空間を提供

山田 朱実 Akemi Yamada
ジャズシンガー/作曲家

・出身:東京都

★キャリアの始まり
母が慶應義塾ワグネル・ソサエティの女性合唱団OGで卒業後も合唱団活動を続けていたことや、銀行員の父がハワイアンミュージックのアマチュアグループで演奏活動をしていたことから、小さい頃はすべての家庭にウクレレやスチールギター、マラカスがあるものだと思っていました(笑)。さらに、6歳上の姉がピアノのレッスンを受けていたことで、私が4歳の時、親に「ピアノを習いたい」と伝えたことは記憶に残っています。

★大学では政治を学ぶ
学習院女子高等科でバンド活動をしていた頃は、ギター(エレクトリック)とコーラスが担当でした。同じ学習院女子と大学に通っていた姉は、高等科で一番人気のバンドのボーカリスト。大学で政治学科だった姉の影響や、社会科系統の科目が得意だった私は「政治が面白そう」と思ったことから、姉と同じ学習院大学の政治学科に進学。本格的にボーカル活動を開始したのは大学卒業後でした。



★ジャズに傾倒
高校までは、洋楽のロックやポップス、日本の「ニューミュージック」にハマっていましたが、大学在学中、多くの知人に恵まれ、多種多様なジャンルの音楽を深く聴くことを楽しみました。Earth Wind & FireやStevie Wonderなどのブラックコンテンポラリー、マンデー満ちるさんのアルバム、ジャズボーカルの名盤、ブリティッシュ・ロック、オーストラリアのフォークロックなども聴いていましたね。そのうち、好きだったクラブで「歌いたい!」と思うようになり、気が付くとボーカルレッスンを受け、ギグをするようになり、クラブミュージックやソウルミュージック(アレサ・フランクリンなど)などを歌っていました。そんな頃、DJがかけるインストゥルメンタル・トラックに合わせて「何か即興で歌って」と言われたのですが、自分ではどうやって歌えばいいかわからず…。それで「即興演奏の勉強をしたい」と思ったことがひとつの転機でした。ジャズの名盤を深く聴けば聴くほど、ハーモニーの美しさ、即興の素晴らしさに感動し、深く入っていきたいと。「ジャズの醍醐味」とは、その場のモーメントを感じながら、バンドのメンバーと一緒にintuition(知覚)で、音楽を作っていく生演奏の楽しさ、その「瞬間」を音に刻める事だと考えています。ジャズボーカルも同様で、2度と同じ演奏はできない。特に即興(スキャットソロ)を入れる時、その楽しさ・醍醐味を感じています。

Akemi Yamada Dreamy Jazz Quartet

★プロへの道
大学時代、シカゴ郊外に語学留学した際、老舗ブルースクラブに連れて行ってもらった時のことです。一番前の席でノリノリで聴いていると、舞台で歌っていたブルースシンガーから、いきなりマイクを差し出されました。何の違和感もなくマイクを受け取り、そのフレーズを真似して歌ったら大ウケ。その時に「海外のステージでお客様を喜ばせて歌うイメージ」が出来たのだと思います。大学卒業後、東京で仕事をしながらクラブでボーカル活動をしていましたが、NYのジャズ大学(City College of New York Jazz Vocal Studies)留学を決意してから、プロとして本格的にジャズの作曲とボーカル活動をしていきたいと考えるようになりました。

★独自のスタイル「ドリーミー・ジャズ」とは
ジャズの伝統的な演奏や歌唱は大好きですが、本格的には大人になってから聴き始めたジャンルで、「自分を表現する」という意味で自然ではありませんでした。NYのジャズ大学を卒業し、学んだ伝統的なスタイルのジャズから解放。都会的で洗練されたニューヨークの最先端を走るコンテンポラリージャズや、ジャズハーモニーの影響を受けて発展したブラジリアンジャズにインスパイアされ、追求したい音楽性が広がりました。器楽演奏のスタイルをボーカルにも取り入れ、ジャズをベースにしつつも、私がこれまで聴いてきた様々な音楽(ブラックコンテンポラリー、ゴスペル、日本のポップスや唱歌、クラッシック音楽など)要素をブレンドした「独自の音楽ジャンル」を築きたいと強く考えるようになりました。洗練された音の響きと、心の奥底から湧き出るキャッチーでエモーショナルな感情の音とのバランスを模索、曲を作り、演奏する事で新しい世界を表現したいと。コンテンポラリーなボーカルジャズを作曲、演奏し始め、モダンでドリーミーな感じのコード進行を多用した音楽、かつ私のボーッとした性格も表す「ドリーミージャズ」と、とりあえず命名しました。後で変えるつもりでしたが、それが浸透してしまったので変えられなくなりました(笑)。

★目指すもの
地球的な、情景的な世界観を作曲に反映していけたらと思っています。パンデミック前までは洗練性や複雑さを重視していましたが、今後はもっとシンプルにし、空気感や色彩感、質感や情景を表現できる曲を作り歌いたい。その為には旅をしたり、映画を観たり、読書をしたりなど、見聞を広げることが重要。様々な立場や状況に置かれた人々の気持ちを理解することで、作詞・作曲や歌唱表現に役立てたいと思っています。私の音楽で世界中のより多くの人々に、癒しの時空間を提供していければ幸いです。

akemiami@gmail.com
www.soundcloud.com/akemiyamada
instagram.com/mistyjazzy

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