2021年12月17日号 Vol.412

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俳優は自分自身を知るきっかけ

中根 大樹
Taiju Nakane
役者

・出身:東京都

★俳優デビューのきっかけ
両親が幼児教育の一環として芝居を習わせたらどうかと、私を東映撮影所の養成所に入れたのです。稽古をしながらオーディションに行くようになり、気がつけば、映画「雨あがる」の現場にいました。当時6歳でした。友達とヒーローごっこや、映画のキャラクターになって遊ぶのが好きでしたので、撮影現場でも同じ感覚でいたと思います。俳優の道に進みたいと強く感じたのは、中学3年生の頃に出演した劇団「東京スウィカ」の舞台でした。脚本演出が比佐廉さん、看板女優が吉田羊さんという俳優の大先輩方の中で芝居にどっぷりと浸り、偶然か必然か、進路を決める時期にそのプロダクションに関わった事で、ぼんやりしていた気持ちが明確になりました。



★俳優(演技)の魅力
山ほどありますが、ひとつは「自分」を受け入れられるようになったことです。人の目を気にしたり、失敗しないように、恥をかかないようにと、緊張して生きてきたのが、逆に自分の情けない面や、人には見せたくないネガティブな部分こそが、役をより魅力的にするエッセンスになり得ると思えるようになったことで、自らの気持ちに正直に生きられるようになりました。また、新しい作品に出会うことは、これまで知らなかった社会問題、歴史、病気、思想、さらには自分自身を知るきっかけとなります。演じることで、日々、世界が広がっていく感覚を楽しんでいます。演技する際には常に「力を抜くこと」と、子どもが大人に「何で?何で?」と質問するように、自分の役については納得するまでしつこく追求するようにしています。

★NYを選んだ理由
NYU大学院のクルーが来日して撮影した際に参加した映画「小春日和」(洋題:A Warm Spell)との出会いが大きな分岐点でした。映画撮影の現場で求められる演技が斬新で、まさに新たな世界を見せられたような感覚。さらに追求したいと思い、勢いで「NYで演技を学ぼう!」と来米しました。この街は刺激の宝庫。例えば、ホームレスが大声で誰もいない空間に向かって罵声を浴びせているのが、まるで一人芝居を見ているようだったり、セントラルパークを上半身裸の女性がジョギングしている姿がシュールで、映画の世界に飛び込んだような感覚に陥ったり。街で知り合った人が有名なアーティストというのは日常茶飯事で、第六感まで漏れなく刺激される街だと感じています。

★目指すものは
約70年前の作品、黒澤明監督の「生きる」が好きなのですが、何十年経っても上映され続ける作品に出演する俳優を目指しています。もう一つ、小学校の自由研究で特攻隊について調べるほど戦争に対して強い興味があります。祖父は特攻隊で、その体験談は作り話では、と疑ってしまうほど信じ難い内容でした。戦争を知らない世代ですが、戦争が終わらない世の中で戦争とは何なのか、俳優として反戦を訴える作品に携わる事は一つの大事な使命だと感じています。

★今後の予定
NYC Artist Corpsの助成金で制作した短編映画「Bilocated」が完成しましたので、映画祭に出展する予定です。舞台の出演予定もあり、詳細が決まり次第、SNSで告知させていただきます。

nakanetaiju@gmail.com
www.taijunakane.com
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