2021年10月1日号 Vol.407

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やり通せ、自分に負けるな

武島アイカ
Aika Takeshima
ダンスアーティスト/ライター/LGBTQIA+活動家

・出身:大阪府羽曳野市

★ダンス、執筆、活動家、それぞれを始めたきっかけ
ダンスが最初で、執筆と活動家はほぼ同時期です。ダンスは中学生の時に流行っていたMAXやDA PUMPに憧れて真似をしていたのですが、高校にはダンス部がなかったため柔道部に。大学でダンスサークルに入り、継続的にスタートしました。

執筆は、コロナによるロックダウンが始まった直後から。実は文章作成が大嫌いで、小学生の映画感想文で「感激し過ぎて何も書けません」と提出したことも(笑)。そんな自分に「本を出版しないか」というオファーをいただき、「自分の想いを文字にして伝える」という方法を知りました。自分が「伝えたいコト」とは、大抵規模が大きく複雑なことが多いため、いつでも読み返せる「文章」という表現方法に魅了。情報を発信する場合、同じ量であれば、文章を読むよりも動画の方が時間がかかると個人的に感じています(単にトークが苦手という理由もありますケド・笑)。執筆は、自分の考えを文字にすることで頭の中が整理される上、読んで下さる方の情報にもなるという、二重の喜びがあります。



LGBTQIA+として活動するきっかけは、コロナ禍によって熟考・発信する時間が出来たことが大きいでしょう。カミングアウトしたいのにできない、受け入れたいけどなかなかできない…という人々を見ている内に、皆が受け入れあい、生きやすい社会にするために、自分にできることは何だろう?と、活動家として動き出しました。

★プロフィール「マイノリティ中のマイノリティ(LGBTQのL、ハーフコリアン、部落出身、父元ヤクザ組長)」について
私は自身の境遇を恥じていません。現在の活動も、決して恥ずべきことではなく、より多くの人に「本当のその人自身」を見て欲しいという想いから、すべてをオープンにしています。韓国人の父は、「プロボクサーか俳優になる」という夢がありましたが、知人に騙され断念。当時は今より反韓感情が強く、選べる職業も少なかった。9人兄弟という大家族で、一人のピアニストを除いて全員ヤクザの一家。末っ子だった父は、職探しの難しさから、兄たち同様にヤクザの道を進んだのではないでしょうか。でも私が知る父は、誰よりも店員さんなどにも親切で、阪神淡路大震災では、自衛隊よりも先に食料品などをかき集め、現地に直行。被災者のためにボランティア活動を行ってました。また、母の家は貧しく、「美容師になりたい」という夢を断念、子どもの頃から働かされたそうです。

ですが、私は知っています、父の運動能力と行動力、そして母のファッションセンスを。世界には貧困やマイノリティであるがゆえに、夢を成しえる方法を知らず、機会さえ与えてもらえず、「自分はそんなにすごくない」と過小評価してしまう人々が大勢います。でも私は誰もが、自分が考えているより多くの「自由と可能性」を持っていること、ただそれに気づいていないこと、その方法を教わる機会がなかっただけだということを知っています。少なくとも、私はあきらめたくありません。
 
私がピンチの時に、母がかけてくれた言葉「やり通せ。自分に負けるな」。自らの現在や過去の境遇がいかなるものであろうとも、それらに引っ張られるな、それらに自分の人生を決めさせるな、ということです。私は、自分のこともあきらめたくない、誰にも何かをあきらめて欲しくない。生い立ちや社会が貼るラベルに人生を左右されないで!本当はみんなすごいんだから!と伝えたい。自己肯定感が上がれば、他人のことも受け入れやすくなり、人が自分と違っても受け入れあえる社会になる、と信じています。ありのままの自分と、ありのままの他者を受け入れる。一番難しいことですが一番大事なポイントだと考えています。

★今後の予定
2022年1月21日と22日に新作「L Train」を発表する他、いくつかのパフォーマンスを予定(日程はウェブサイトで随時発表)。社会的影響力のあるアーティストにインタビューをする新シリーズ「社会を変えるアーティストたち」や、ウェビナー「自分ってなんだろう?」では、ゲストと共に皆で一緒に世界の可能性を探っています。

zukazukaaika@gmail.com
https://aikatakeshima.com
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