2021年4月30日号 Vol.396

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自分らしさを踊りに繋げたい
菊池 梨緒
ダンサー

Rio Kikuchi
出身:東京都

★ダンサーになろうと思ったきっかけは?
小さい頃からクラシックバレエを習っていましたが、「ダンサーになりたい」と意識し始めたのは中学1年生頃です。バレエコンクールに出場したのですが、上手な人たちの踊りに衝撃を受け、バレエ界の厳しさを感じ、「もっと上手くなりたい!」と思ったのがきっかけです。また、どんなに学校で疲れたり普段の生活で嫌なことがあっても、そんなマイナスな気持ちを忘れてくれる存在でした。心から「踊る事が好きなんだな、将来も踊り続けたい」と強く思いました。

★影響を受けた人、目標とする人は?
アルビンエイリー・アメリカンダンスシアターのダンサーたち。初めてNYを訪れた年、エイリー・カンパニーの公演を観て、言葉を失いました。正確で強いテクニック、パワフルながら優雅、今までに見たことのない世界に感激しかありませんでした。シンプルな振付けの中にある深い表現力。一人ひとりのダンサーから放たれるオーラ。私も彼らのように表現力のある、一目見ただけで観客へ何かを伝えられるようなダンサーになりたいと感じました。目標とするのは、アルビンエイリー・カンパニーに所属する唯一の日本人ダンサーの瀬川寛治さん。私がエイリースクールに通っていた時にお話する機会が何度かあり、「誰もが同じタイミングでチャンスは訪れない、チャンスは人それぞれのタイミングで、必ずやってくる」と言われたことがとても心に響きました。その頃はまだスクールの1年目で、オーディションで自分を出し切れずに落ちてばかり。どうしても自分と他人を比べてしまい、悩んでいる時期でした。瀬川さんの話を聞き、「自分と他人を比べるべきではなく、自分は自分。そのチャンスがやってくるまで、十分な準備をしておこう、もっと頑張ろう」という気持ちになれて、素直に、ひたすら努力し続けました。その翌年、ニューヨークシティセンターの舞台に立ち、現在所属するナイニーチェン・ダンスカンパニーにも合格。今でも、瀬川さんの言葉は忘れられません。



★これまで印象に残っているご自身のパフォーマンスは?
ナイニーチェン・ダンスカンパニーに所属して一年目、「ニューヨーク・ライブアーツ」で開催された4日間のカンパニー30周年公演が思い出深いです。ダンス学校を卒業し、初めてプロダンサーとしてカンパニーの独自公演に参加、全てが新鮮でした。4日間の連続公演は、常にベストな状態を保ち、連日、パフォーマンスに挑まなければならない。ダンサーとして当然のことですが、私は緊張しやすいタイプなので毎日ドキドキしながら、本番前にウォームアップをしていました(笑)。劇中、自分がソロやデュエットを踊っている際、舞台からダンサーが発する世界観やオーラと、観客から湧き出る空気が混ざりあっていく…踊りながらもそれを感じて感動しました。「この瞬間のために今まで頑張ってきたんだ。舞台に立てて幸せだな」と。その瞬間は私自身にとって、とても特別なものでした。

★どんなダンサーになりたい?
自分にしか表現できない踊りで、人に影響を与えられるようになりたい。NYに来て、「自分らしさの大切さ」を学びました。もちろん、上手くなって高度な技術を持ったダンサーにもなりたいですが、自分が歩んできた人生経験や、過去で感じたその時々の気持ちは、とても特別なものです。そんな個人的なモノを踊りに活かすことができれば…と思います。ダンサーとしての人生の中で、自分を認められずに嫌いになることがある一方、どこかで自分の事を期待してる部分もあったりと、相反する気持ちがぶつかり合い、混ざりあって、多様な感情が生まれる。ダンスの技術面だけでなく、人として様々なことを学び、吸収して、成長したい。自分の心の奥で感じる感情を大切にしながら、それを踊りに繋げていきたいと思います。

riodance1212@gmail.com
https://www.instagram.com/rio_kikuchi12


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