2020年12月18日号 Vol.388

right
アートが繋ぐ人と人
ソフィア・チズコ 
アーティスト

Sophia Chizuco
出身:静岡県



★アーティストになろうと思ったキッカケは?
5歳の時、家族でヨーロッパ旅行に出かけ、パリのルーブル美術館で、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」に触ってしまい(多分、額縁だと思いますが)、警備員さんに優しく柵から出されました。その時、「これは何だろう?」と不思議に思ったことがきっかけです。

★影響を受けた人物は?
ダ・ヴィンチから始まって、シュールな作品に興味があり、サルバドール・ダリやポール・デルボーが大好きでした。ニューヨーク発のアートムーブメント、抽象表現主義の作品も好きで、2000年にニューヨークに移住して以来、70年代にニューヨークのスターと言われたラリー・プーンズから多大な影響を受けています。私の「生き方」に影響を与えてくれたのは、微生物学者の父。好きなことに対して周囲を顧みずに突っ走ってしまう性格が似ていると言われます。米寿を迎える父は、今でも研究論文に取り組み、コロナ禍前まで一人で世界中を飛び回っていて、「研究の為にここまでするか?!」と(笑)。若い頃は、父に反抗・反発しましたが、今では「父ができたのだから、私にもできる!」と、勇気づけられています。

★目標とする人物は?
最近では、目標とする「人物」はいません。「いかにアートを続けていくか」だけを考えています。元々、不安がつきまとう職業ですし、特に、コロナ禍でスタジオを去る友人も多い。どうにかこうにか頑張っていけたらなぁと思っています。自分らしく、のんびりと、お茶でもしながらスイーツを食べ、笑顔で制作を続けていきたいです。

★これまでに印象に残っているご自身の作品は?
2019年、ニューヨーク市保健局主催のコミュニティー壁画プロジェクトに選出。病院イメージの改善と病人に対する差別をなくすために、8つの病院で9人のアーティストが、病院関係者と共に壁画制作を行うプロジェクトです。私は、ハーレムの「カーター病院兼ナーシングホーム」を担当。4ヵ月に渡って病院の関係者とミーティングを重ね、どのような壁画が最適かを話し合った結果、「Together as One」をコンセプトに、タイトル「Circle of Life」=写真=を制作することに決まりました。実際に絵を描いていく「ペイント・デー」では、患者さんとそのご家族、ナーシングホームの住人、病院スタッフ、医師、看護師、セラピスト、NYPDなど90人以上が参加。私が作った37の色から好きな色を選んで、下描きを塗りながら、みんなで絵を仕上げていくというものでした。ストレスが多い病院生活で参加したみなさんは、「とても楽しかった」「ストレス解消になった」と笑顔で話してくれました。人工呼吸器をつけ、声が出ないご老人達は、身振り手振りで「うれしい」と伝えてくれましたし、何時間もじっくり描いていた車椅子の患者さんもいました。除幕式で患者さんが、「アートにどれほど救われたか」を話し、みんなで手を取り合って喜び合ったことは忘れられません。パンデミックになり、SNSを通して病院の役員やソーシャルワーカー、セラピストさんに、「みんなの事を心配している、くれぐれも気をつけてガンバって!」と伝えたところ、「みんな壁画をみてガンバっているよ!」「壁画に参加した人たちにもメッセージを伝える、みんな喜ぶよ!」「私たちはファミリーだから」「みんな繋がっているんだよ」といったメッセージをもらい、逆に家から出ることすら不安だった私も救われる思いでした。早くこのコロナ禍が終わり、みんなと一緒に、あの壁画を見たいと思っています。

★NYを活動の拠点に選んだ理由は?
最初に行ったパリは、自分が思い描いたアート界ではありませんでした。その後、ニューヨークで、有名な作品から理解不能なアートまで、すべて本物が見られる感動、「痺れる感覚」を味わったこと、さらに日本にいては巡り合えないアーティスト、ラリー・プーンズに出会い、「ここだ!」と感じました。

★どういうアーティストになりたい?
明日はどうなっているかわからないコロナ禍のニューヨーク。実際にあとどれだけ作品として外に出していけるか。命の尽きるその時まで制作し続けることが、私のゴールだと思っています。

sophiachizuco@gmail.com
www.sophiachizuco.com
instagram.com/sophiachizuco




HOME