村井の版画作品「チューブ」。大波の下のサーファーの視点を表現。「真ん中の白いところが出口。ここを目指してボードを滑らせます」 |
新井の油絵作品には人間の「顔」が隠されている。「雲の中から下を向いて海を見ています」。どこにあるか、分かるかな？ |
抽象版画の村井一裕と、油絵の新井ひとみのコラボレーションによるアートショー「ＰＲＥＳＥＮＴ（今）」が、クイーンズ区アストリアのカフェ「ＭＵＮＤＯ」で、２月７日（月）から28日（月）まで開かれる。
二人がコラボするのは今回が初めて。「一緒にアートの学校に通った」という仲良し二人組だ。ニューヨークで活動するアーティストは、日本で美大を卒業した人が多い中、この二人は異色の存在。日本ではアートの勉強をしたことがなく、ニューヨークに来てから目覚め、マンハッタンにあるナショナル・アカデミー・スクール・オブ・ファインアートで学んだ。
版画と油絵、抽象と具象と、スタイルは全く異なるが、二人の共通点は自然がテーマになっていること。
94年から02年まで「ＬＡで波乗りしてました」というサーファーの村井は、もっぱら海をテーマに「波」を版画で表すアーティスト。空中から、水面下から、さらにはサーフィン中の大波の間からと、あらゆる角度から見た海を、独自の色使いで表現する。
「日本ではミュージシャンやってました。ギターでいろんなジャンルの音楽をやってました」と村井。サーフィンはそのころからずっと続けている。ニューヨーク市近辺の海でも、１年をとおしてサーフィンを楽しんでいる。
そういう意味では、村井の作品はまさに海との一対一の触れ合いであり、自身のライフスタイルそのものだ。写真の作品は「チューブ」。「サーフィンで大きな波がきて、その下にすっぽり飲み込まれたときに、ちょうどこんなふうに見えるんです。真ん中の白いところが波間の出口で、僕たちサーファーはそこを目指してボードを滑らせます」と説明してくれた。
プラスチックを削って版を作ることもあれば、鉄の粉とボンドを垂らして乾かしたものを版にすることもある。
一方の新井は、自然の中に隠された「スピリット」を幻想的な油絵で表現。今回のショーでは、雑木林や蝶をモチーフにした作品のほか、村井とのコラボを意識して、海をテーマにした作品も展示する。
新井が描く作品には、「顔」が隠されている。「どこに顔があるかわかりますか？」と新井。意外に見つからないが、「ここです」と教えられると、まさにそこに人間の「顔」がある。
絵を見る視点や、発想の転換といったものを、見る者が自然と考えてしまう、不思議な魅力を持った作品だ。次の作品の「顔」を探したくなるので、ショーを見に行く人は、ぜひトライしてみよう。
「雲を見ていると、いろんな形が隠れていますよね。見方によって人の顔のようだったり、動物のようだったり。そういう、普段は自然の中に隠されて気づかない世界を表現したかったんです」と新井は話す。
_
村井は姫路出身。94年にロサンゼルスに渡り、ニューヨークに移ったのは02年。新井とはその年、英語学校で知り合った。７年もロサンゼルスにいた後、ニューヨークでやっと英語学校に？「ＬＡで波乗りばっかりしてたんです」と笑う。その波乗り三昧の生活が、今アートに活かされている。
新井は東京出身で、ニューヨークに来たのは01年９月10日。同時多発テロの前日だ。「着いていきなりテロで、びっくりしました」と当時を振り返る。今はパーティー会場のデコレーションなども手がけ、それが自分の作品を展示する場にもなっている。
二人ともアーティストとしてのキャリアは浅い。美大出のサラブレッドでもない。そんな二人の魅力は、自由な発想とライフスタイル。今後ニューヨークを拠点に活躍が期待される。（きん）
村井一裕＆新井ひとみ
アートショー「PRESENT」
2月7日（月）～28日（月）
Mundo：31-18 Broadway, Astoria
TEL: 718-777-2829
www.mundoastoria.com
村井一裕：kazookazoo.com
新井ひとみ：Planetaura.weebly.com
|
