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よみタイムVol.135 2010年4月23日号掲載
 
前衛アーティスト 加藤シオー
「12の菩提心を描く」テーマに
人、自然との出会いで創作に変化

「海の心の菩提心」Mix Media

 書と絵画を融合させたアートで、日本とアメリカで多くの仕事をしてきたユニークなアーティスト、加藤シオーが5月21日から27日まで、日本ギャラリーで個展を開く。
 もともとは書家。「かな作家」「漢字作家」であることに飽き足らず、前衛書のカテゴリーで思う存分創作活動して数々の賞を得てきた。そのうち白と黒の墨の濃淡での表現だけでなく、色彩も入るようになった。
 師匠から「書道の範囲を超えている。これは絵画ではないか」と叱責された。これを機に「モダンアートのメッカ、ニューヨークだ!書の精神美と西洋のモダンアートの融合を目指そう」と、71年渡米を決行、29歳の意気盛んな時だった。
 ところがニューヨークへ行くはずの加藤は、途中下車したサンフランシスコの魅力に取り憑かれ、予定を変更して制作活動の拠点を置いた。
 当時のサンフランシスコはヒッピー文化花盛り。アメリカが世界第一国としての繁栄を謳歌していた時代の落し子ともいえるヒッピー文化の発祥地であった。一人ひとりが思い思いの価値観と意志を持ち、自由で、おおらかで、少しのお金でも食べて行ける魅力的な世界がそこにあった。  
 硬直した古い価値感に縛られた日本を飛び出し、新天地に立ってみるとこれからどんなことでも出来るぞという開放感が加藤を満たした。ヒッピー思想の精神の中心に「東洋思想」「釈迦の思想」「禅の思想」が定着し始めたころだった。
 思い切って飛び込んだアメリカは、人生と作品制作に関するいくつものターニングポイントを与えてくれた。
 最初は、ネバタ山中に日本家屋を移築して住んでいる詩人ゲーリー・シュナイダーに招かれ1週間ほど滞在した時のこと。シュナイダーはその後ピュリッアー賞を受賞するが、滞在中毎晩、歌人西行の生き方への感動、東洋哲学を日本語で講義してくれたという。「どう、思いますか?」というその質問に答えることが出来ず、どちらが日本人なのかと大きなショックを受けた。
 第2のターニングポイントは、ピーターという友人から「釈迦の説かれた八正道は素晴らしいね。もっと聞かせて」と質問されても、目を白黒して一切答えられなかったこと。これもまたショックだった。「無神論者を気取っていた私を奮い立たせましたね」と加藤は笑う。
 日本人としてのアイディンティティーと日本文化の再考察、東洋思想の見直し、これこそが加藤のその後の創作活動を決定づける、精神的変革、作品の変化の原動力となった。
 グランドキャニオン、モニュメントバレーなど美しいアメリカの大地、大自然は多くのインスピレーションを惜しげもなく与えてくれた。宇宙に、自然に存在する大きな力とエネルギー、その命の深淵さに惹かれ「地・水・火・風・空」の五大の響きを作品として描き続けることになる。 
 自然の姿、月、太陽、空、山、川、大地、風、海などの持つエネルギーに「菩提心」大いなる慈愛を見出すという日本の哲学者、思想家でもある高橋佳子氏の「12の菩提心」の美しい言葉に出逢った時にも、衝撃に似た感覚にとらわれ、この言葉を絵画で創作したいという想いが募った。以来、書とモダンアートとの融合を目指し、制作に没頭、今回の「12の菩提心を描く展」はそんな加藤のエッセンスがつまった展覧会といえる。
 「菩提心・ボーディサットバー・慈愛の心とは、誰の心の中にもある光。本当の自らを求め他を愛し、世界の調和に貢献する心」を、自然の姿に重ね、インスピレーションによって表現したいと、その言葉を万葉がなで表現した。
 現代の世界の混乱、混迷、混沌の中にあって、一人ひとりの内に「大いなる菩提心」が蘇り、その輪が広がっていけば、始まりは小さくとも次第に大きく世界を変えて行く原動力になるはずと加藤は願う。「私は、『12の菩提心を描く』ことをテーマとして、自然と喜怒哀楽を抱えた人間のありようを、「人間讃歌」の想いでこれからも描き続けて行きたいと思っています」と加藤は透明感のある瞳を和ませて結んだ。(塩)

5月21日(金)〜27日(木)
日本ギャラリー:145 W. 57th St.
10:00am〜6:00pm(日休館)入場無料
Tel:212-581-2223\
www.nipponclub.org