長くなるが、演説の後を続けよう。
<アメリカだけの努力では成功しないでしょう。けれども、それをリードすることはできる、それを始めることもできます。ですから、私は今日ここで、核兵器なき世界の平和と安全保障を求めるアメリカの約束を明確にしたいと思います……私はただの世間知らずではありません。早急に目標に到達することはできないでしょう。私の生きている間には無理かも知れない。忍耐と粘り強さが求められます。しかし、私たちは、世界を変えられっこない、と言う声に逆らうことも必要です。私たちは主張しなければなりません、Yes, we can>
前年の大統領選挙で使ったスローガンYes, we canがここで登場する。堰を切ったように、広場を埋めた群衆から歓呼の声が上がった。
<道筋を示しましょう。第一に、アメリカは核兵器なき世界に向けた具体的な一歩を踏み出します。冷戦期の思考に終止符を打ち、私たちの安全保障戦略における核兵器の役割を減殺し、他の国々にも同じことをするよう勧めます……私たちが保有する弾頭と備蓄を減らすために、ロシアとの間で新しいSTART(戦略兵器削減条約)に向けた交渉を始めました……核兵器の実験を完全にやめるために、私の政権は、CTBT(包括的核実験禁止条約)の早期批准を積極的に求める作業を直ちに始めます。
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第二に、協力の基礎となるNPT(核兵器不拡散条約)の強化に努めます。核保有国は軍縮に向けて動き、非保有国は核兵器を取得せず、平和利用へのアクセスは得ることができるという(条約の)基本条項は健全なものです。ただ、この条約を強化するために、いくつかの原則を受け入れる必要があります。国際的な査察を強化するためにより強い権限と資源も必要です……いくつかの国はルールを破っています。だからこそ、そうした国は然るべき結果に直面するという仕組みを作っておく必要があるのです>
ちょうどこの朝、北朝鮮が核弾頭を装備できる長距離ミサイルの実験を行ったことが伝えられていた。
<こうした挑発があるからこそ、行動が必要なのです。安保理の決議だけですむものではありません。核兵器を絶対に拡散させないという強い決意が求められるのです……違反は罰せられなければならない。世界は、核兵器の拡散阻止のために共に立ち上がらなければならない、国際社会の強い対応が必要であり、北朝鮮は、自国の安全への道が、脅威や不法な兵器によって得られるものではないことを知らなければなりません>
そして結び近くでこうも訴えた。
<私たちは希望より恐怖を選ぶとどうなるか、知っています。(国際的な)協力の呼びかけを非難したり、肩をすくめて見過ごすのは易しいことかも知れない、しかし戦争は、そういう意識から始まります。そこで人類の進歩は終わるのです>
共に起ち上がることの尊さを重ねて訴えて28分間の演説を終えたのだった。この演説と、「核なき世界」に向けた国際社会への働きかけが評価されて、オバマは、この年のノーベル平和賞を受けることになる。
2016年5月27日、広島の平和公園を訪問、演説を行ったオバマ大統領
それから7年後、2期8年のオバマ政権が終わりに近づいた時期に、オバマは広島にやってきた。アメリカの現職大統領として初めてのことである。平和公園で演説した。
<科学の進歩は目覚ましいものであるけれども、そうした発見がより効率的な人殺しのマシーンになり得る、ヒロシマはこの事実を教えています。技術の進歩は、それと等価の人間社会の制度の進歩を伴わない限り、死の宣告と同じことです……あの日の苦しみに言葉だけでは無力です。歴史に直接目を向けて、あの苦しみを繰り返さぬためにできることは何か。いつの日か、ヒバクシャの声は聞けなくなるでしょうが、1945年8月6日の記憶が消え去ることはありません。その記憶こそが私たちに変化を促すのです>
ナポレオンの名を口にするなど国王気取りで手前勝手な発言を重ねる今の大統領と比べて、人間としての品位・品格に天地ほどの差があることは疑う余地もない。(敬称略、つづく)