昭和100年の終わりに―高市ではダメなのだ
さて我が日本に目を転ずれば、この10月、高市早苗が初の女性総理に選ばれた。昭和100年の終わりに初の女性――本来なら喜びたい。が、「高市ではダメ」なのだ。
臨時国会で総理に選ばれた翌週、10月28日にトランプと初の首脳会談に臨んだ。緊張の中にも、ウキウキした表情でトランプと向き合い、冒頭からお世辞タラタラ。その後ワーキングランチを挟んで、トランプの専用ヘリ、Marine Oneに同乗して向かった横須賀では、停泊中の原子力空母「ジョージ・ワシントン」上で数百人の米軍将兵を前に選挙演説のようなスピーチを終えたトランプから「日本初の女性総理、彼女は勝利者だ」と紹介されると、喜色満面で壇上に駆け上がり、トランプの懐に飛び込むような仕草で何度も飛び跳ねる、異常で異様で場違いのはしゃぎ方だった。これが日本の総理大臣か!
日本共産党前委員長の志位和夫が「正視に耐えない」と呟いたそうだが、一国の宰相が決してしない、してはならない恥辱的行為だった。日本初の女性宰相とは、かくも軽薄・低劣な人間でしかないのだ。

(Photo courtesy: Official White House, Photo by Daniel Torok
この邂逅を伝えた29日付のニューヨーク・タイムズは1面トップに空母の甲板で寄り添う二人の大きな写真付きで
「Trump bonds with Takaichi but no deals」の見出しを掲げた。
「トランプの政治集会そのものの拵え(の空母甲板)で、トランプとタカイチは、この日最高潮の『共演』の風景を見せた……しかし、二人の一連の会談では、日米間の貿易上の懸案を解決する道はほとんど何も示されなかった……二人が署名したのは漠然とした文言の二つの覚書。一つは、日米同盟の『黄金時代』を宣言し、もう一つは、希少金属レアアースのサプライチェイン拡大への協力を謳ったものだった(筆者注:具体策なし)」
同記事には、「ホワイトハウスのレヴィット報道官が、タカイチさんが大統領をノーベル平和賞に推薦したと述べた」とも書いていたが、これには日本の女性週刊誌までが「トランプ氏にとっては願ってもないスペシャルサービスだろうが、過激な発言がたびたび話題になる同氏については、ノーベル平和賞の受賞にふさわしい人物なのかという疑念もしばしば取り沙汰されている」と疑問を呈した。
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高市ではなぜダメなのか? 私見を述べたい。
そもそも、頭がよくない。それが行動に如実に出ている。10月4日の自民党総裁選に立候補した5人の候補は、高市も含めて申し合わせたように、「解党的出直し」をスローガンにしたが、高市はその総裁選に勝つために唯一派閥を維持している麻生太郎の下に参じ、協力を仰いだ。麻生は解党的出直しとは最も遠いところにいた人物である。
小泉純一郎がかつてないスピードで政策を次々断行したことで取り戻した自民党への信頼感を根こそぎ崩してしまった後継の3内閣――安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の3人目に列し、前代未聞の低支持率に喘いだ末、09年衆院選で300あった自民党の議席を119まで減らして民主党に政権を奪われた過去を持つ。
日本のメディアは、石破茂が総理・総裁として臨んだ昨年来の衆院選、参院選で「自民党大敗」と書き立てたが、二つの選挙とも、自民党は議席は減らしたが「最大党派」は譲らなかった。つまり、自民党は負けたが、勝った政党もなかったのである。麻生は、本物の「惨敗」を招来した総理・総裁であった。そんな人物に膝を屈した高市に党の「出直し的改革」などできると思うか。
総裁になると時を移さず麻生を副総裁に任じ、幹事長に鈴木俊一、総務会長に有村治子と麻生派を起用した。そのうえ、あろうことか、自民党凋落の直接原因となった「裏金問題」の張本人と言える萩生田光一を幹事長代行に指名したのである。
安倍派の議員が派閥の資金集めのパーティ券を売り、そのキックバックを受けたのに政治資金報告書などに記載しなかったのが「裏金」とされたのだが、萩生田は、その裏金を2700万円超も受け取っており、しかも、報告書の修正にあたっては、裏金とされた金額の大部分を「使途不明」と申告して、てんとして恥じなかった人物である。さらに、旧統一教会とも緊密な関係を結んでいたことが指摘された。このような人物を「皆さんに働いてもらいます」の一言で要職に起用する真意が奈辺にあるか、理解し難い。(次ページへ続く)
高市の政治信条は、息を吐くようにウソをつくことで長期政権を維持した安倍晋三の後継者たることだという。「総理になって一番力を入れるのは経済」と言うが、アベノミクスは成長戦略が機能しなかったという点で「破綻」した政策だ。GDPは伸びず、中国はおろかドイツにも抜かれて世界4位に凋落した。デフレの克服もできなかった。それでも高市は経済政策を、安倍に極めて近い形で運営しようとしている。
外交では、「世界の中心で咲き誇る日本外交」という安倍の修辞句をそっくりそのまま得意げに頻用している。高市が「世界の中心で咲き誇る」など想像もできないし、万が一、そのようなことになれば心臓が凍る思いだ。
現に、台湾有事をめぐる国会答弁で中国をいたく怒らせ、「一番力を入れる」と言う経済に打撃を負わせつつある。接近に成功した(と高市は思っている)トランプは、中国が憤激する様を見て、「(日本が)同盟国だと言っても、中国以上に米国から利益を巻き上げてきた国だ」と素っ気なかった。

(Photo courtesy: Official White House, Photo by Daniel Torok)
少数与党としての国会運営では、長年、閣内連立してきた公明党から離別の通告を受けた後、日本維新の会と手を結んだ。ここ数年、スキャンダルの連続暴露で党勢が減退している政党だが、ラブコールに手もなく乗せられた。党内でも党外でも目先の利だけで動いている。こんな人物が、一国の総理として信頼に値するか?
高市の言動、佇まいを見聞きしていると、「魔女の執念」を感じる。あの狡猾な作り笑いの奥に何が隠されているか、不安でならぬ。
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不思議なことに、この高市が総理になると決まってから、日本の株は上がり始めた。「タカイチ・トレード」なる言葉ができて、10月27日には日経平均が終値で史上初めて5万円の大台を超えた。事実は事実として受け止めるしかないが、何故これほど市場でもてはやされるのか、私には全くわからない。
さらに、世論調査での高支持率――ご祝儀相場を超えた支持を得ている。
だが、私は高市の言動をできるだけ見ないように、聞かないようにしている。Takaichi Derangement Syndrome=高市錯乱症候群とでも言おうか? 昭和100年が終わろうとしている今、私は寂寞たる孤立感に苛まれている。<了>