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クリストとジャンヌ=クロードの「ザ・ゲート」誕生20周年記念、2つの展示

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2025年2月28日号掲載|03

クリストとジャンヌ=クロード「ザ・ゲート(門)」
誕生20周年記念、2つの展示 
「ザ・ゲート:拡張現実体験」
「ザ・ゲートと実現されていないプロジェクト」

夫婦で環境アートをテーマに制作を続けていた「クリストとジャンヌ=クロード(Christo & Jeanne-Claude)」(以下クロード)が2005年2月12日、セントラル・パークで展開したインスタレーション「ザ・ゲート(The Gates)」。20周年を記念した回顧展が2月21日(金)から始まり3月23日(日)まで、ハドソンヤードの「ザ・シェッド(The Shed)」と、セントラルパークで開催されている。

門
①現実世界にデジタル情報を重ねたAR(拡張現実)の「ザ・ゲート」(Photo by Yomitime)
門
現実世界にデジタル情報を重ねたAR(拡張現実)の「ザ・ゲート」(Photo by Yomitime)

当時、公園内の遊歩道23マイルに設置された「門」は7503基。鮮やかなサフランカラーの布が揺れる「門」を見ようと400万人以上がセントラルパークを訪問。ニューヨーク市全体で推定2億5400万ドルの経済効果があったとされている。

ARで「門」を再現 @セントラルパーク

セントラルパークで体験できる「ザ・ゲート:拡張現実体験(The Gates: An Augmented Reality Experience)」=写真①=は、2005年の「ザ・ゲート」の一部(約5%)をAR(Augmented Reality・拡張現実)で再現。来場者は専用のモバイルアプリ「Bloomberg Connects」(無料)を通して、再考された数百基もの「門」を見ることができる。

Nori

事前にモバイルアプリ「Bloomberg Connects」(無料)のダウンロードをしておこう。これが無いと見ることができない。

ARの門
①専用アプリをアクティベートしてカメラをかざすとバーチャルの「ザ・ゲート」が出現する(Photo by Yomitime)
ARの門
①専用アプリをアクティベートしてカメラをかざすとバーチャルの「ザ・ゲート」が出現する(Photo by Yomitime)

ARルートは、5番街の72丁目からチェリーヒルへ続く遊歩道=写真②=。ルート沿いに設置された「スキャンステーション」=写真③=でQRコードを読み取りモバイルアプリを起動、アクティベイトすることで「門」が出現する。

Nori

実はこのアプリのアクティベートが難解。5番街と72丁目付近に「The Gate」のパーカーを着たスタッフが居る場合があるので、迷わず助けてもらおう。以下、簡単に手順を紹介。

アプリのアクティベート方法
①スマホのカメラで「スキャンステーション」=写真③=のQRコードをスキャン 
②表示されるURLへアクセス 
③手順に沿ってアプリを起動
④「スキャンステーション」をカメラで捉えるよう指示される(自分が立っている位置をGPSで認識させる必要があるため)。丸い円の中に「スキャンステーション」が表示されているので、スマホを見ながら「その位置」へ移動する
⑤正しい位置に来ると、スマホの「スキャンステーション」にOKの「チェックマーク」が入る
⑥スマホの円内カメラ画像に「バーコード」が表示されたら、その場所でスマホを地面に向けるとオレンジ色の「点々」が見える。地面にスマホを向けたまま「バーコード」の表示が左右一杯になるまで、スマホを左右に動かしながら「点々」をスキャン。
⑦「バーコード」が一杯になると、OKの「チェックマーク」が入り完了。景色の中に「門」が出現する。

門の地図
②ARルート地図。数カ所に設置された「スキャンステーション」で自分の位置をアプリに認識させる必要がある
門の地図
②ARルート地図。数カ所に設置された「スキャンステーション」で自分の位置をアプリに認識させる必要がある
スキャンステーション
③スキャンステーション

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アートワーク展示 @ザ・シェッド

「ザ・シェッド」では、2005年の「ザ・ゲート」風景写真やアートワーク、図面、ビデオなどを紹介=写真④=。加えて、実現しなかったプロジェクト(ローワーマンハッタンのビルを梱包)=写真⑤=なども案内されている。

展示風景
④「ザ・シェッド」の展示風景Courtesy of Bloomberg Philanthropies 2025
展示風景
④「ザ・シェッド」の展示風景 Courtesy of

クロードが、「ザ・ゲート」のアイディアをニューヨーク市に提案したのは1979年。3度の市長交代を経て2005年、ブルームバーグ市長の下でゴーサインが出され実現に至った。構想から完成までに費やした時間に敬意を評し、「ザ・ゲート」の制作年は「1979〜2005年」となった。

ちなみに「ザ・ゲート」を鑑賞した人々は、伏見稲荷大社の鳥居との類似点(形や色)を指摘。クロードは「偶然である」と主張していた。

ビル梱包模型
⑤実現しなかったローワーマンハッタンのビル梱包模型 Christo, scale model for Lower Manhattan Packed Building (Project) 20 Exchange Place (1964). Photo: André Grossmann. Courtesy of the Christo and Jeanne-Claude Foundation.
ビル梱包模型
⑤実現しなかったローワーマンハッタンのビル梱包模型 Christo, scale model for Lower Manhattan Packed Building (Project) 20 Exchange Place (1964). Photo: André Grossmann. Courtesy of the Christo and Jeanne-Claude Foundation.

クロードの作品テーマは「梱包」。美術館や橋、歩道、島、海岸など、他に類を見ないスケール感で人々を惹きつける。さらに、彼らはプロジェクトの実現にかかる巨額な資金を、政府機関や美術館などの支援を受けず、自らの作品販売などで調達。公共施設やパブリックスペースを利用することから、地元団体や市民との対話が必要となるが、「それも作品の一部だ」と説明していた。

共に1935年6月13日生まれのクリストとジャンヌ=クロード。2009年にジャンヌ=クロードが、2020年にクリストが死去。「ザ・ゲート」は二人による唯一のニューヨーク・プロジェクトとなった。

★セントラルパークでのAR体験
The Gates: An Augmented Reality Experience

■3月23日(日)まで
■場所:E.72nd St.と5th Ave公園入り口からCherry Hillへの通り(上記地図②)
※要・携帯アプリ「Bloomberg Connects」(無料)

Christo and Jeanne-Claude:The Gates and Unrealized Projects for New York City
■3月23日(日)まで
■会場:The Shed:545 W. 30th St.
■入場無料($10寄付奨励)・要予約
https://www.theshed.org

門

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