マサチューセッツへ行こう!(2)
ノーマン・ロックウェル美術館
雑誌「MAD」を特集
マンハッタンから約3時間弱、マサチューセッツ州ストックブリッジに位置する「ノーマン・ロックウェル美術館」は、タングルウッド音楽祭の会場から車で約10分の距離。ニューヨーク生まれのロックウェルは、庶民の日常を描いた画家・イラストレーターで、日本でも人気が高い。ストックブリッジは、ロックウェルが亡くなるまで居住していた街で、同美術館は彼の作品を多数収蔵。近くにロックウェルのアトリエを復元し、30分のガイド付きツアーも行っている(別料金・要予約)。
「MAD」展
「心配するな(What, Me Worry?)」
6月8日(土)から10月27日(日)まで、アメリカの雑誌「MAD」を特集した展示「心配するな(What, Me Worry?)」を開催中。
1952年、E Cコミックのシリーズとして誕生した「MAD」。1955年、「MAD」24号からイラスト・マガジンとして再考。表面上は子ども向けの「コミック風」だったが、その内容は、政治腐敗、消費主義、セレブ文化、社会運動、奴隷解放など、当時の問題をユーモアで提起。真実を探ろうとする姿勢が人々の心を捉えたと同時に、多くの批判も浴びた。
同誌は日本でも紹介され、漫画家の赤塚不二夫やモンキー・パンチが、その影響を受けたと公言している。
本展では、「MAD」で主力となった多数の作家やアーティストの作品を紹介。同誌に欠かせない「いつものバカ集団」が手がけた象徴的なオリジナルアートワークや写真、印刷物、ビデオなど250点以上を展示。「MAD」に50年以上貢献した風刺漫画家、モート・ドラッカーの作品=写真①=を集めた特別ギャラリーも設置されている。
「MAD」の表紙を飾っているのは、マスコット・キャラクターのアルフレッド・E・ニューマン=写真②=。赤毛、飛び出た耳、そばかす、すきっ歯の少年が、うっすらとした笑みを浮かべ、世の中を風刺する。
ロックウェルが30年以上も表紙イラストを手がけた雑誌「サタデー・イブンイング・ポスト」に見える温かく穏やかなユーモアとは異なり、「MAD」の攻撃的でシニカルな視点は、カウンターカルチャー雑誌として、社会に強い影響力を与えた。
同館の館長兼CEOのローリー・ノートン・モファットは、「ロックウェル美術館は、社会と文化におけるイラストの役割と重要性について対話を提示し情報を提供、刺激することを指針としています。MADマガジンは、今もなお解決すべき問題を、先見の明をもって我々に投げかけていた。この展覧会を開催できることに誇りを感じています」とコメントしている。
ネットメディアの台頭・隆盛という時代の流れにより「MAD」は2018年に店頭販売を終了。現在は不定期発行で、定期購読またはインターネットでのダイレクト販売のみ。
ロックウェルが温かく描いたアメリカの日常と、「MAD」がユーモアたっぷりに皮肉った日常。この機会に、アメリカの「両面」を鑑賞したい。
- What, Me Worry? The Art and Humor of MAD Magazine
■10月27日(日)まで ※水曜休館
■会場:Norman Rockwell Museum
9 Glendale Road, Stockbridge, MA
■Tel: 413-931-2221
■大人$25、シニア$23、大学生$10、子ども無料
■https://www.nrm.org