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迷いと実験の50年:ニューヨーク拠点の美術家・野田正明、回顧展開催

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迷い、実験、挑戦
未発表作品から見える50年の軌跡
美術家・野田正明「過去が未来になる」

2025年10月3日号掲載|12

「手探り、迷い、実験、がむしゃらに走ってきた50年でした」と語る野田正明氏は、ニューヨークを拠点に世界で活躍する美術家だ。今年で作家活動50周年を迎え、10月2日(木)から11日(土)まで、JAAホールで個展「Past Becoming Future(過去が未来になる)」を開催する。

野田正明
「がむしゃらに走ってきました」と50年を振り返る野田氏(アトリエで)

広島県福山市出身の野田氏。物心ついた頃から絵を描くこと、物を作ることが大好きで、大学進学にあたりアーティストを志すようになったという。

1977年にニューヨークへ移住して以来、精力的に制作活動を続けてきた。「当時、すでにコンテンポラリーアートは日本にも伝わっていましたし、パリや他の都市は、自分の中では過去になっていました。20代の頃、外国帰りの作家たちと交流する中で、話題は自然とニューヨークに集中。『今、アツイのはニューヨークだ』と認識し、この地で勉強しようと決意しました」と当時を振り返る。

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アートの最先端都市として注目されていた1970年代のニューヨーク。パンク、グラフィティ、ネオ・エクスプレッショニズム(新表現主義)、コンセプチュアルアート、ミニマリズムなど、さまざまな潮流が同時進行で展開。若手アーティストとベテランが混在する実験的な環境が広がっていた。そんな活気にあふれる街で、野田氏は自己表現を模索。来米直後は、版画を中心に制作していた。

「アートのトレンドに巻き込まれながら、試行錯誤していた私の活動は、ひとつの実験だったと捉えています。『版画家』という本筋はありましたが、時代の流れと変化の中、『版画家スタイル一本の野田正明』はいつか終わると予見していました」

現在は、版画だけでなく彫刻家としても活動。故郷の福山を筆頭に、東京、大阪、広島、島根、ニューヨーク、ギリシャ、中国、モンゴル、など、各地に作品が永久設置されている。

作品
今回、展示される作品の一部

今回の個展は、そうした実験の中で誕生した初期の未発表作品(絵画14点、彫刻2点)で構成される。

「数年前から『50年』という節目を意識していました。私の年齢(75歳)の節目と『キャリアの総括』という位置付けでもあり、過去の未発表作品を集めた回顧展です。同時に、来年、チェルシーの画廊で開催する新作発表に向けた大規模個展への前哨戦でもあります。50年という節目で、重要な個展が続く。作品を通して、『野田正明』がどのように現在に至ったのかを知ってもらう機会になるでしょう。自身の足跡を確認する展覧会でもあります」

改めて自らの歩みを見つめ、どんな道を歩んできたかを伝える|それが野田氏の鍵となる思いだ。

「これまでの迷いや苦闘、実験の軌跡を鑑賞していただきたい。時代を経て、『野田正明』がどう変化してきたのか、皆さんに知っていただく。本音を言えば、自分がどうこうというよりも、作家である以上、作品を世間に知ってもらうのは宿命ではないでしょうか。今回は、一つの節目として『作家としてどう生きてきたか』を示したい。発表してきた作品の陰で、どのように変化してきたかも見せたいのです。普段は見せない部分ですが、埋もれさせておくのは残念でなりません。彫刻に移行した経緯も含め、実験的に作った作品が多く、『何をやっていたのか』と思われがちですが、その過程があってこそ、今の自分があります。振り返っても『まんざら捨てたもんじゃない』と思える作品ばかりで、その変遷をお見せできると考えています」

野田正明
「作家としてアートの最先端に居続けることが重要な条件」と話す野田氏

さまざまな試みを通じて到達した現在。今後の活動はどのような形を構想しているのだろうか。

「知人や作家仲間の中には日本に帰国した人もいます。年齢を重ねた今、私にとっても帰国は重要な問題で、昔からずっと考えてきたことでもあります。では、どんな形が良いのか? 近年は日米での活動が半々である上、世界各地に自ら赴き、展示発表の活動を拡げています。そんな中で『理想の形』を考えた時、まず第一に重要なのは『作家』であること。作品を制作し、発表し続けること。そう考えると、活動拠点はニューヨークと東京。もちろん故郷の福山も視野に入れていますが、世界に向けて発信するという点に置いては十分ではないでしょう」

アートの最先端に居続けることこそが、作家にとってやはり重要な条件、ということのようだ。

「時代が変わり、終わっていく中で、どうサバイバルしてきたかが大切です。私はこれまで、実験的にさまざまなことに取り組んできましたが、その姿勢はこれからも変わりません。迷い、苦闘しながら挑戦し、制作を続けていきます」

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75歳の野田氏にとって、本展はこれまでの歩みの集大成。試行錯誤や実験の一つひとつが積み重なり、現在の制作やこれからの挑戦につながっている。刻々と過ぎる時の中で、それらの試みが『野田正明』を形作り、未来へと続いていく。(ケーシー谷口)

■10月2日(木)〜11日(土)
※休館4日・5日
■オープニングレセプション:2日(木)5 – 7pm
■会場:JAAギャラリー
 49 W. 45th St., 5th Fl.
 Tel:212-840-6942
http://masaakinoda.com

野田正明

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