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よみタイムVol.20 2009年9月4日発行号

 [其の34]

世直しを叫ぶ作家・米谷ふみ子

「おばはん感覚」で過激な新著
幼な友だち小田実の遺志貫く

 米谷ふみ子様


NYで再会した幼馴染みの小田実さんと

 新著『年寄りはだまっとれ!?』(岩波書店刊)を、拝読しました。そして今、ほんとに胸がすかっとしています。
 アメリカに移住して約50年のあなたならでこそ実感できる日米の暮らしの温度差を客観的にとらえて、つねに両国の庶民の視点からものを言うすがすがしさ! 
 米谷さんの日本人に対して感じていらっしゃる危機感は、日本や世界の動きに対する日本人の意識の鈍さ、歴史感覚のなさ、今さえよければという刹那主義、「長いものには巻かれろ」の他者依存、娯楽で欲求不満を癒す不勉強といったものでしょうか。
 日露戦争から大平洋戦争まで、長い戦争の時代が続きましたから、物心ついてからずっと戦争だったという日本人は、今でもかなりいるはずです。そういう人たちは、思想や言論の統制、相互監視のための隣組体制、女性蔑視、強制的な生活の困窮で、戦時と戦後の半生を送りました。
「愛国心という言葉を聞くとゾォーッとします。どの国にも愛国心という言葉を使って国民を操ろうという指導者がいるものです」と、米谷さんも本の中で述べていらっしゃいます。
 誰が、国民をこんな目にあわせていたのか、私たちは、まだその真犯人を突き止められないでいます。あるいは、無名の共同犯行だったかもしれません。戦犯を処刑しても、それは戦勝国アメリカの考えであり、日本人はいまだにこの問題を避けて、曖昧にしています。 
 米谷さんの原稿を「偏見や差別を扱うから」過激だと、日本の大手のメディアが掲載拒否したり、手直しをしたりするそうですけど、日本のメディアは戦争中の言論統制にまだ従っているのでしょうか、それとも権力におもねての自主規制でしょうか。それでは、社会の問題点にスポットをあてるジャーナリズムの役割を、自ら放棄しているも同然です。アメリカ在住50年の日本人の「おばはん」の、怖いものなしの小言は、事なかれ主義者には、耳が痛いはずです。
 米谷さんも書いていますが、旧敵性国には、ドイツがユダヤ人に対して行ったように、はっきり謝って、政府でなく、その一番の被害者である一般国民にきちんと賠償するべきだと思います。もちろん元慰安婦にも、被爆者にも。本当は、戦争被災者全員に、きちんと賠償すべきです。(911の後では、被害者に莫大なおカネが払われました)。
 米谷さんが、ほとんどが高齢者の、地域の反核運動に参加していられることは、すばらしい! 
 核兵器がどんなものか、知らない人が多すぎます。核の脅威は、勝負がないことです。すべてが破滅しますから。戦争当事国だけでなく、地球が破滅します。
 それを全人類が自覚すべきです。核廃絶のみを目指すこと以外にありません。もしやられたらどうするなどという、オールドファッションな防衛論はなりたちません。地球を救おうというあなたの提言が、どうか地球全体に大きく響きますように。
 戦争の言い尽くせぬ苦しみの後、私たちの得た最大の収穫は、民主主義と平和憲法でした。思想言論の自由、信教の自由、男女同権、女性参政権、農地改革、教育改革、そして何よりも戦争放棄を宣言した新憲法でした。
 自由の素晴らしさ、これは、310万人とかいわれる戦死者が、命をかけて遺してくれた宝物。これこそが、ゼロから始まった戦後の日本の原動力だったと想います。それこれを守ることは、米谷さんの幼な友だち、[殺すな!]と、最後まで叫んだ小田実さんの遺志でもあるでしょう。
 経験に基づいた知恵者の集団、後期高齢者による国際的平和運動を起こそうではありませんか!
 私の母は今98歳ですが、初めて会う人が老人だと「戦争のとき、どこにいらしたんですか? 焼け出されましたか?」と、聞きます。戦争を知らない若い人には、「戦争はしてはいけませんよ。戦争でいいことなど一つもありませんよ」と、お説教します。母にとっては、戦争はまだ続いているのです。

米谷ふみ子:1930年大阪生まれ。異文化の社会の人間関係を扱った「過越しの祭」で、1985年度の芥川賞を受賞した作家。在米50年。夫のジョシュグリーンフェルド氏はシナリオライター。辛口の日米文明批評エッセイでも知られる。