2021年9月17日号 Vol.406

文:佐々木香奈(猫グルーマー)
NCGIA (National Cat Groomers Institute of America) member

猫の生食:合う合わないはケースバイケース

今回は、猫のローフードダイエット(生食)について考えてみようと思う。うちのルフィーは、実は生食に半分スイッチしてから1年以上が経つ。「半分スイッチ」とは、ルフィーは異常に飽きっぽいので、生食ばかりをやるのはアウト。生食と、普通のウェットフードを半々で食べさせている。「お手」の練習用トリートも、生の鶏肉とサーモンのフリーズドライ限定。

結果から言うと、12歳になろうとしているのに、半年に一度の定期検診で血液検査と尿検査の腎臓の値が改善されていて、獣医さんもびっくり。検便でも寄生虫がいたことは一度もない。それに、生食にしてからウンチが小さくなり、しかも臭くない。定期購入している生食メーカーによると、「生食はほとんどが栄養として体に吸収されるため、排泄量が減る。混ぜ物がない分、便の臭みも軽減される」のだそうだ。



ただ、生食にスイッチするのは容易ではなかった。何度諦めようと思ったことか。成功したのは、このメーカーの太っ腹お試しパッケージのおかげだった。スイッチが難しいことを承知していて、1ヵ月分のローフードを15ドルでお試し(送料込みだったと思う)させてくれるのだ。その間失敗を繰り返し、カスタマーサービスに相談しながら、2ヵ月かけてなんとかスイッチに成功した。ちなみにルフィーが食べているのは、カリフォルニアにあるメーカー「Darwin's」の商品だ。2、3ヵ月に1回の頻度で、冷凍した生食がUPSで翌日配達されてくるように設定している。便利だし、ルフィーは量を食べないので、必要量だけ分けてやることができ、予想に反して食費の節約にもなっている。

ルフィーの生食準備。冷凍パックを使う分だけ開けて、4等分して一食分ずつ包み直し、再度冷凍庫へ。ルフィーは小食なので、意外にも食費節約にも貢献。

と、ここまで持ち上げておいてナンだが、生食にはまだまだ賛否両論があるのも事実だ。文句なしに推奨する獣医さんもいるが、多くは懐疑的。このコラムで以前紹介した、猫DNA検査をしてくれるカリフォルニア州の猫ラボBasepawsが、猫の食事ウェビナーを開催し、その中で獣医さんたちは「猫にとって生食は、理論的には理想の食事。でも現実には寄生虫やバクテリアなどが懸念されるため、獣医学界で完全に受け入れられてはいない」ということだった。

ルフィーの行きつけの獣医さんも、この9月末の定期検診の時に同じことを言っていた。さらに、「生食は、ちゃんとビタミンやミネラルのバランスが取れていないと、栄養が偏るよ」とも。ルフィーが食べている生食は、ラベルを見る限りビタミンやミネラルが足されている。

飼い主のライフスタイル(自宅勤務でないと基本、生食は無理)と、猫の食の嗜好と体質によって、生食が合うか合わないかは、ケースバイケースだろう。うちのルフィーにはハマった、ということだと思う。

猫ラボBasepawsの獣医さんによると、猫の食事の重要ポイントは3つ。「何を」「いつ(頻度)」「どのように」与えるか。次回はそれについてしたためる。

世界中で、猫の飼い方が屋内にシフトしたのは1970年代。特にアメリカでは多くの獣医師が、交通事故や野生動物から猫を守るために、完全屋内飼いを奨励し始めた。(ジャクソン・ギャラクシーの著書「Total Cat Mojo」から)

Kana S. Cat Grooming
kanacatgrooming@gmail.com
Voice/Text: 646-456-6399




HOME