2021年1月15日号 Vol.389

文:佐々木香奈(猫グルーマー)
NCGIA (National Cat Groomers Institute of America) member

予防のためのグルーミング

パンデミックの煽りを受け、昨年夏やむなくグルーミングは休業宣言したのだが、年末になって立て続けに問い合わせが入り驚いた。聞くと、グリニッチビレッジのレスキューグループのwebサイトに、私の名前が猫専門グルーマーとして載っていたらしい。

残念ながら全部断ったのだが、問合せの内容から痛感したことが一つ。猫の飼い主には、グルーミングのニーズについての教育・啓蒙が先決だということだ。大晦日のアメリカ人女性からのメールの文面は、正直目を疑った。「18歳の老猫が食欲もなく、最近やっと少し食べるようになったけど、獣医に行くには状態が悪すぎる。体全体が汚くて、臭くて、歯も抜けて口臭がすごい。もう長くないとは思うけど、せめて体を綺麗にして余生を送らせてやりたい。グルーミング代はいくら?」と。一体どこからどう説明したものか…。この人には、「あなたの猫ちゃんは、グルーミングを受けるだけの体力がないから、勧められない。グルーミングよりもまず獣医に相談した方がいい」と説得し、とりあえずマイクロファイバーのタオルを使って、全身を拭いてやる方法をアドバイスしたが、やってるかどうか。

随分前にも一度、瀕死の猫をグルーミングしてくれと頼まれ、結果的にグルーミングをする代わりに獣医に付き添って行ったこともある。

もう一件の大晦日の電話も、「メインクーン2匹。毛がマット(毛が絡まってほぐせない状態)。グルーミングしてくれない?」というものだった。

このように猫の飼い主は往々にして、「猫は自分でグルーミングする」と信じ込み、定期的なグルーミングを怠った挙句に、ひどい状態になって初めてグルーマーを探すパターンにハマる。著名なホリスティック獣医のマーティー・バーンスタイン先生も言っているが、「年に数回のシャンプー&ドライは、毛と皮膚の健康管理に効果的」であることを知ってほしいなと思う。

そもそも究極の状態になった猫のグルーミングは困難を極めるし、猫にとっても辛いグルーミングとなる。そうならないように、「予防」のためのグルーミングのニーズを、猫の飼い主にわかってもらうには、どうしたらいいものか。

Turkish Van

Turkish Van =写真=という、大型のセミロングヘアの猫ブリードがある。トルコの湖Lake Van地域発祥の猫で、最大の特徴は水が好きなこと。「泳ぐ猫」の異名を持ち、泳ぎに適した体型と毛並み。水の好き嫌いは個体により、雑種でも水大好きな猫も結構いるものだ。

Kana S. Cat Grooming
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