2020年7月24日号 Vol.378

文:佐々木香奈(猫グルーマー)
NCGIA (National Cat Groomers Institute of America) member


シッポの付け根がベトベト?

猫は皮膚から油脂を分泌していて、それが抜け毛とくっ付き、たまりにたまるとダマになる。猫はとても脂っこい生き物なのだ。年齢や性別、毛の長さや毛のタイプなど、いろいろな条件による個体差はあるが、猫によってはシッポの付け根から背中に続く部分、さらにはシッポ全体が、異常にベトベトしてくることがある。ひどくなるとワックス状になる。これは通称「stud tail」、正式名を「tail gland hyperplasia」という、皮膚と毛の症状だ。

一般的には、去勢していない雄猫に多いと言われるが、どっこい避妊手術をした雌猫にもよく見られる。基本、性別や猫種、短毛種・長毛種も関係なく起こると思っていていい。ファクターをあえて指摘すれば年齢か…。猫は高齢になるほど皮膚が薄くなり、皮脂分泌量も増えるから。それと、太っているとこの部分は自分で毛繕いができない。

こういう猫がグルーミングサロンに来ると、程度にもよるが、「Groomer's Goop」という、強力なdegrease用のペーストを、ベトベトした部分に擦り込み、しばらく置いてからシャンプーし、ゴシゴシ擦って脂分を落とす。ひどいstud tailは、一度のシャンプーではベトベトが完全に取れず、1、2週間してからもう一度シャンプーしないといけないこともある。脂は水を弾くので、ワックス状になった毛にはなかなかシャンプーが馴染まず、グルーミングも大変。とりあえず毛を全部剃ったほうがいい場合もある。

「うちの猫、ちょっとシッポの付け根がベトベトしてる」という人は、定期的にシャンプーしてやるのがベスト。シャンプーしたら必ずブロードライすることも忘れずに。猫の毛は濡れているとダマになりやすい。老齢になって問題が起きて初めてシャンプー&ドライをすると、猫の精神的負担も大きいはず。理想を言えば子猫のうちからシャンプー&ドライに慣らしておきたいところだ。

シャンプー後、次のシャンプーまでのメンテナンスとしてできることは、スーパーで売っているコーンスターチを、ベトベトしやすい部分に少量振りかけて、クシ(ブラシよりはクシ)でといてやることくらいか。コーンスターチがある程度、脂を吸収してくれる。

アメリカで猫の避妊手術(spay/neuter)が始まったのは1940年代だが、普及していなかった。ロサンゼルスに初の低コストspay/neuterクリニックがオープンしたのが69年。72年にはASPCAがペットのアダプション前に避妊手術を義務付けた。
Kana S. Cat Grooming
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