2019年9月20日号 Vol.358

文:佐々木香奈(猫グルーマー)
NCGIA (National Cat Groomers Institute of America) member

猫の爪切り、4〜6週間に1回がメド

たかが爪切り、されど爪切り。飼い猫の爪切りに四苦八苦している飼い主も多いのでは? 私が猫グルーマーになって、結構多いリクエストが「爪だけ切ってほしい」というものだ。実際、あの鉤爪をジャキーンと出して、ガシュっとやられたら人間などひとたまりもない。
家猫は狩りをするわけでもなく、木に登るわけでもないので、放置すると必要以上に爪が伸びてしまう。究極の状態が「ingrown nail」だ。ぐるっと伸びた爪が足の裏の肉球に刺さり、食い込んでしまった状態。これは痛いし、感染症にも発展する。グルーマーになる前は写真でしか見たことがなかったが、この春ピッツバーグの猫専門グルーミングサロンでの実習で「実物」を見て驚いた。その猫は保護猫で、シェルターのおばちゃん曰く「様子から見て元は飼い猫。捨てられて間もないはずだけど、爪を切ってもらってなかったみたい。肉に食い込んで痛いから機嫌が悪いのよ」と言って連れてきた。
この場合の処置は、グルーマーによっては獣医師に連れて行くことを勧めるが、私の師匠は元獣看護師、猫グルーマー歴25年の猛者。「お前は見てろ」と言われたので、私はおとなしく見学した。師匠は「グルー、グルルー」と唸る猫の爪を手際よく切り、肉球に刺さった爪を抜いた。当然血が出るが、「止血するな」と。流血とともに、肉球の傷からバクテリアを流し出すため。すると、特に止血せずとも、ブラッシングと抜け毛処理をするうちに血は止まり、シャンプーが終わる頃には、痛みから解放されたこのお猫さまはゴキゲン。さっきまでの唸りが「ゴロゴロ」に変わっていた。ブロードライとブラッシングを満喫されたご様子で何より。その後シェルターの獣医さんに診てもらい、爪を抜いた肉球は感染症にはなっていなかったことを確認した。
今年7月からニューヨーク州では、猫のdeclaw手術が動物虐待とみなされ違法になった。州レベルでの法律は全米初だが、デンバーやサンフランシスコなどは、市の条例で随分前から違法にしている。Declawについては次回詳しく書くとして、最後になったが、今回言いたかったのは、「猫の爪は4〜6週間に1回をメドに切りましょう」。自分でできないなら、かかりつけの獣医さんで爪だけを切ってもらうこともできるし、私のような猫グルーマーを呼びつけるオプションもあり。
それから、爪のケアとストレス解消のためにも、スクラッチングポールは必須アイテムなので、数カ所に置くことを勧める。いつも猫が引っ掻きそうな家具のそばに置くと、家具を守ることにも。ただ、それは爪切りの代わりにはならないので、「スクラッチングポール+定期的な爪切り」が、大事なお猫さまの爪と健康を守るレシピということになる。

ライオンやトラなど大型猫科動物は咆哮(roar)はしても、ゴロゴロ(purr)喉を鳴らさない。唯一チータだけがゴロゴロ鳴らす。


グルーミングはまず爪切りから。ささっと迅速に。自分の身も守りつつ、お猫さまのご機嫌も取りつつ。


Kana S. Cat Grooming
kanacatgrooming@gmail.com
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