2019年8月23日号 Vol.356

文:佐々木香奈(猫グルーマー)
NCGIA (National Cat Groomers Institute of America) member

「カッカッカッ……ゲロッ!」夏の毛玉地獄

いきなりだが、猫専門のグルーマーがいることを皆さんはご存じだったか? 私は去年の夏まで知らなかった。以来1年間、NCGIA (National Cat Groomers Institute of America)というマスター猫グルーマー養成機関で学び、この春ピッツバーグでの実習を終え、晴れて私は猫グルーマーとしてよちよち歩きを始めた。これから月1回の連載でいろんな猫話を書いていきたいが、初回はイントロ的に、私のグルーマー転身のきっかけとなった「夏の毛玉地獄」を一席しばこう。
去年の晩春から夏にかけてのこと。当時8歳のうちのメス猫ルフィーが、えげつない頻度で毛玉を吐くようになった。週に2回、成人女性の人差し指大の毛玉を「ゲロッ」。早朝に吐くことが多く、あの「カッカッカッ」という、吐く前段階音が寝耳に聞こえてくると、ベッドから飛び起きたものだ。朝が早い同じフロアの住人が廊下を歩く足音が、この「カッカッカッ」に酷似しており、「ゲロだ!」と思って飛び起きる始末。カーペットやシーツが汚れるのはしょうがない。それより問題はルフィーの健康状態だ。頻繁な毛玉ゲロは、何らかの病気に起因していることもある。
そのルフィーは5歳半の時、ワケあってうちに来ることになったのだが、元の飼い主からあっさり「1週間に1回毛玉吐くから」と言われていた。しばらく様子を見ていると、週1の頻度で長さ15センチはある大量の毛玉を吐く。いくらルフィーがセミロングヘアとはいえ、尋常にあらず。獣医さんに相談し、ブラッシング(奴はブラッシングが嫌い)と、チューブ入り毛玉処理ペーストで、その後3年ほどはゲロ頻度を月1〜2回程度にまで抑えた。
去年の晩春から急に状況が悪化したのは、ルフィーの加齢もあってだろうか。検査をしても異常はなく、獣医さんの診断は「季節の抜け毛」。病気が原因ではないのは朗報だったが、すでに万策尽きたと思っていた我が家の毛玉対策だ。はて、どうしたものかと途方に暮れた。「ライオンカットしたら?」と獣医さんは言う。
猫友達に大騒ぎしてヘルプを呼びかけ、見つけたのがブルックリンを拠点にする猫専門グルーマーだった。二人のマスターグルーマーがうちに来てくれて、ライオンカットを渋る私に「腹の毛だけ刈れば、背中の毛はブラッシングできるでしょう?」。
結論から言うと、肛門周りと腹の毛を刈って、シャンプーしてもらって毛がフサフサになって、その直後からいきなり毛玉を吐かなくなったのだ。いやもう感謝感激。毛玉地獄からルフィーと私を引き上げてくれたのが、猫グルーマーだったというわけだ。このコラムではグルーミングという視点から、猫の健康やQOL(生活の質)について考えてみようと思う。

キャットリッターが発明され商品化されたのは1947年アメリカ。Ed Loweさんという発明家・起業家によるもの。(文献「Total Cat Mojo」ジャクソン・ギャラクシー著)


腹の毛を刈ってもらい毎日のブラッシングで毛玉問題解決。ご機嫌のルフィー


Kana S. Cat Grooming
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