NY近郊ゴルフ場ガイド
「毎日のようにここで食べます。こんなに安くておいしい中華料理はほかにありません」と、ある日本人読者から編集部に情熱的な「タレコミ」があった。しかも、「ほんとは自分だけの秘密の場所にしておきたいんですけどノ」と、もったいぶった口ぶりで。 その中華料理屋とは、45丁目の1番街と2番街の間にある「Shih Lee(シー・リー)」だ。一見何の変哲もない質素な店構え。国連に近いことから、ランチタイムは世界中からの国連勤務者でごった返すが、もともと商売っ気がないので夜はいつも空いてるし、週末はなんと店を閉めるという。 中華料理といってもいろいろあるが、この店は台湾の家庭料理。1990年創業で、当時の経営者のオリジナル・レシピをそのまま引き継いでいる。人気メニューの一つが煮物というちょっとユニークな中華料理屋だ。 中華の宴は、まず餃子を食べないことには始まらない。薄い皮に、豚肉がたっぷり詰め込まれた肉肉しいポーク・ダンプリングと、野菜ダンプリング(5ドル)を注文。写真はフライに近い焼き餃子だが、この店の餃子は蒸し餃子のほうが日本人の口にあう。 メインには、「日本の豚の角煮に近い」と評判のポークシチュー(12ドル95セント)を。皿いっぱいに盛られた豚肉の量にもびっくりだが、肉は見るからに時間をかけて煮込んであり、脂肪とゼラチンがぷりぷりした絶品だ。しっかり味がついたしょうゆベースのソースも、肉から溶けたゼラチンでとろとろしている。 ちなみに、シェフに確かめたわけではないが、この店ではMSGはほとんど使っていないはずで、その証拠に何を注文してもMSGの味がしない。 この「タレコミ読者」によると、「豚の角煮(ポークシチュー)をテイクアウトして、ニンジン、ジャガイモ、タマネギやハルサメを入れて、肉じゃがを作ると、これがまたうまい」ということだった。同様に、「オックステール・シチュー」(12ドル95セント)や、珍しい「腸の黒豆炒め(Tripe with Black Bean Sauce)」(11ドル)もおすすめ。 付け合せの野菜料理なら、「Buddhist Delight」(7ドル85セント)。チャイニーズ・バージョンとアメリカン・バージョンがあるので、日本人はチャイニーズ・バージョンを注文すること。白菜と湯葉ときくらげとハルサメの炒め物で、肉料理にぴったりのあっさり味だ。ここでしか食べられない一品。 ランチメニューの一番人気は「ブレイズド・ビーフ・ヌードルスープ」(7ドル25セント)と「ポーク&ピックルキャベツのヌードルスープ」(7ドル25セント)だそうだ。スープには絶対の自信があるという、オーナーの一人ユージーン・リーさんのイチオシ。 _ビーフを試したら、自慢するだけあって、スープはビーフの出しが利いて文句なしにうまい。たっぷり入っている牛肉もとろけるように柔らかかった。欲を言えば、麺の改善か。細くてコリコリの縮れエッグヌードルを期待していたら、ローメン風の麺だった。 儲ける気があるのかないのか分からないくらい、サービスは「ゆるい」。悪いのではなく「ゆるい」。ウエーターがいないので、リーさんと相棒のキング・ユーさんの二人のオーナーが、あれこれ経営の仕事をしながら、接客している。リーさんはアメリカ生まれだし、ユーさんも英語が堪能。二人ともIT専門のインテリだ。 (きん)