 バンケット・オブ・ザ・スピリッツ |
ブラジルが生んだ世界最高峰の打楽器奏者シロ・バプティスタ。アマゾンのジャングルで、ありとあらゆる生き物や自然の草木たちが一斉に演奏を始めたら…そんな世界をありとあらゆるパーカッションで実現して聞かせてくれるのがシロだろう。
一般の人は彼の名前を聞いてもピンと来ないかもしれないが、彼がコラボレーションを続けているアーティスト名を聞けば、いかに音楽界で重要なパーカショニストであるかがわかるはずだ。ポール・サイモン、ハービー・ハンコック、ウィントン・マルサリス、ヨーヨー・マ、ジョン・ゾーン、スティングと挙げ始めたらきりがない。
グラミー賞受賞作品にも数多く参加、レコーディングしたアルバムは実に300枚以上にも上る。
つまり、もしあなたが過去30年の間にラジオを聞いたことがあるのなら、まず間違いなくシロの演奏を聞いているはずなのだ。
シロが共演したアーティストたちの中には日本人の名前も多い。著名なところでは、坂本龍一、津軽三味線の吉田兄弟、ヒカシューのリーダー巻上公一、新しいところではマイア・バルーやニューヨークでも活躍中の吉田野乃子が名を連ねる。「日本は僕の心の一部」と言うシロにとって、日本は特別な国らしい。
そんな彼の才能は作曲や演奏をするだけに留まらず、独創的なパーカションを開発までしてしまう。
さらに、ダンスとパーカッションを融合するシロのプロジェクトの一つ「ビート・ザ・ドンキー」では、一般的な打楽器に加えて、冷蔵庫、新聞紙、瓶、掃除機のホースまでをも取り入れて音楽にしてしまうのだ。
そんな奇想天外な発想は、まるでルールを知らない子供たちのようだが、シロは教育にも熱心で音楽や打楽器を通して未来の大人たちと向き合うことを忘れない。
「あなたから子供たちに学んで欲しいことは何ですか」と質問を投げると「実を言うとね、学んでいるのは僕の方なのさ!」と無邪気に答えるシロ。教えることで新しさを学び、学ぶことで創造性を高める、無限の可能性を秘めたパーカショニストと言えるだろう。
そのシロ・バプティスタをレジデンスに迎えるのが、イーストヴィレッジでアヴァンギャルドやエクスペリメンタルのライブ音楽を紹介するザ・ストーンである。
今回は4月30日から6日間に渡って12公演を行う。
「どれも素晴らしい音楽とミュージシャンたちで最高のショーになるよ。会場のザ・ストーンもきっと気にいると思うな」と語るシロ。
お薦めは、彼の2大プロジェクトである「バンケット・オブ・ザ・スピリッツ」と「ビート・ザ・ドンキー」が一度に楽しめる5月4日(午後8時&10時)、作曲家、即興演奏家としてニューヨークを拠点に活動中の森郁恵とのデュオが見られる5月5日(午後8時)だろう。
共演の森郁恵も「シロとは30年来の友人で、ジョン・ゾーンのいくつかのプロジェクトで共演したり、お互いのアルバムにゲストで参加したりしました。でも、今回のようにセットを全部デュオで行うのは初めてなので、とても楽しみです」とコメントを寄せてくれた。
シロ・バプティスタがおくる12変化のパーカッション・ライブシリーズ。「パーカッションって何?」そんなあなたにお薦めのコンサートだ。
(河野洋)
THE STONE RESIDENCIES:CYRO BAPTISTA
■4月30日(火)〜5月5日(日)
■会場:The Stone:Avenue C & 2nd St.
Tel: 212-473-0043
■一般$15、学生(13〜19歳)$10、12歳以下無料
※入場時に会場での支払いのみ、前売り無し
■www.thestonenyc.com |