2019年12月20日号 Vol.365

地下鉄アート

駅 Lexington Ave - 53rd St (Manhattan)

アル・ヘルド「通過」
AL HELD : Passing Through, 2004


All photos by YOMITIME



1923年、ニューヨークのブルックリンで誕生し、イースト・ブロンクスで育ったユダヤ人の画家、アル・ヘルド。家庭は貧しく、1947年に海軍を除隊するまでアートに関心はなかった。ブロンクス生まれの画家、ニコラス・クルシェニックに影響を受け、ニューヨークのアート・ステューデント・リーグで学ぶ。その後、パリのグランド・ショミエール芸術学校で2年間学んだ結果、「リアリズムは自分のスタイルではない」と判断し、抽象へ移行。1952年にパリで初個展を開催後、1960年代から70年代にかけて活気があったニューヨークのアートシーンへ戻り活動した。カラフルでシンプル、厳密に構成された幾何学抽象作品は、アメリカとヨーロッパで広く認められている。

「通過(Passing Through)」と題された壁画は、ヘルドが死亡する前年に設計され、死後に完成。鮮やかな色で描かれた線・面・量塊(マッス)は広大な宇宙を表現、流れるように壁面を踊る。味気ない通路にニューヨークのエネルギーを投影させた、ヘルド最後の作品。


HOME