2019年7月26日号 Vol.354

地下鉄アート

駅 Grand Central Terminal (Manhattan)  

マーク・ヤンクス「ランドマーク・シティ」
Marc Yankus: Landmark City


All photos by YOMITIME


ニューヨーク在住のファインアート・フォトグラファー、マーク・ヤンクス(1957年生まれ)の「ランドマーク・シティ」が7月中旬、グランドセントラル駅地下のフードコート「ダイニング・コンコース」の一角にお目見えした。ニューヨークの象徴的な建物をとらえた10作品が、ライトボックス(背後から光を当てて展示する方法)で展示、2020年の夏まで1年間公開される。

「ランドマーク・シティ」は、撮影した写真にアナログとデジタル両方のテクニックを施したもの。多くの作品内で「人間」は見当たらず、建造物は「化粧直し」をしたように汚れがなく美しい。見慣れた建物、日常的な風景でありながらも、ヤンクスが作る「街」は非現実的で、鑑賞者に事実とフィクションの境界線を感じさせる。「建物は、長い間生き続けてきた高い木のようなもので、それぞれに物語があります。もし、彼らが話すことができるなら、自分の中に住む人々について教えてくれるでしょう」とヤンクス。高層ビル(高い木)が密集するマンハッタン(森)で、森のような静けさを切り撮るため、撮影は早朝に行うことが多いそうだ。同時に、時代の流れで解体されてしまう美しく華やかな建物が、醜い「何か」に置き換えられていくことに不安を覚えるという。

「ランドマーク・シティ」は、グランドセントラル駅に代表されるような建築遺産へのオマージュであり、ヤンクスが抱くニューヨークへの愛情でもある。


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