2019年5月17日号 Vol.349

地下鉄アート

駅 23rd Street (Manhattan)

キース・ゴダード「23丁目の思い出」
KEITH GODARD: Memories of Twenty-Third Street, 2002


All photos by YOMITIME


第二次世界大戦中の1952年、イギリスのロンドンで生まれたキース・ゴダードは、ニューヨークを拠点に活動するグラフィック・デザイナー。1986年に「スタジオワークス」を設立、メインデザイナーとして、ポスターやロゴ、案内パネル、装丁、パブリックアート、アニメーションなど、多数のプロジェクトを手掛けている。

「23丁目の思い出」は、印象的な120個の帽子をガラスモザイクで描いた作品。1880年代から1920年代にかけ、この付近は「レイディーズ・マイル(Ladies Mile)」と呼ばれ、マンハッタンの一等地だった。ホテルや高級レストラン、オペラハウスに加え、バーグドルフグッドマン、ロード&テイラー、ティファニーなどの高級店が並び、セレブが集い、住んでいた。ゴダードは、そんな人々が実際に身に付けていた帽子を再現、その下には所有者の名前と職業が記されている。「新聞王」と呼ばれたアメリカの新聞発行人のウィリアム・ランドルフ・ハースト、19世紀のアメリカを代表する画家のウィンスロー・ホーマー、西部劇の元祖と呼ばれ「大列車強盗」を監督したエドウィン・S・ポーター、ホイットニー美術館の創設者で彫刻家のガートルード・ヴァンダービルト・ホイットニー、ドリュー・バリモアの祖父で俳優だったジョン・バリモア、ルーズベルト元大統領の妻エレノア・ルーズベルトの名前もある。描かれた帽子の位置(高さ)はバラバラだが、それぞれ持ち主の身長にあわせているという。帽子の前に立つことで「帽子をかぶる」ことも狙ったゴダードの遊び心。過去へのユニークで楽しい旅が体験できる。


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