2019年5月17日号 Vol.349

地下鉄アート

駅 Times Square-42nd Street (Manhattan)

ジャック・ビール「春の訪れ/冬の始まり」
JACK BEAL: The Return of Spring/The Onset of Winter, 2001/2005


All photos by YOMITIME


アメリカを代表する写実主義の画家のひとりジャック・ビール(1931-2013)。綿密な静物画、物思いにふける裸体画、古代神話から現代生活まで、そのテーマは幅広く、ホイットイニー美術館やニューヨーク近代美術館など、多くの美術館やギャラリーが作品を収蔵している。

タイムズ・スクエアに設置されたのは、ギリシャ神話に登場する冥界の女王ペルセポネをテーマとしたガラスモザイク画2点。神話でペルセポネは春をもたらす農耕の女神。彼女が地上へ現れると春が、冥府(地下)へ戻れば冬が到来するという。ビールはそんな神話の中に「普遍性」を見出し、現在のニューヨークの人々と街並みにペルセポネを同化させた。2011年に完成した「春の訪れ」=写真上=は、青果店で花を買うために地下鉄から出てきたペルセポネ(ピンクのトップスで緑のスカートの女性)で、一方、2005年に完成した「冬の始まり」=写真中央=は、地下鉄に乗るため地下へ降りようとするペルセポネが描かれている。


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