2019年8月9日号 Vol.355

いろんな経験が勉強
役の先にある「個人」を演じたい

シム・ウンギョン

1994年生まれ、韓国・ソウル育ち。テレビドラマ『張吉山』で子役デビュー。高校に入るものの、米国に渡り2013年、ニューヨークのプロフェッショナル・チルドレンズ・スクールで高校を卒業。幼少時より韓国と日本で数々のテレビドラマや映画に出演。2014年の韓国映画『怪しい彼女』では、70歳の老婆がひょんなことから20歳の若い姿に戻るという難役を好演し、数々の映画祭で8つの賞を受賞し注目を集める。


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Photo by YOMITIME


ーーデビューは9歳だと伺いました

ウンギョンまだ子どもでしたから「演技」というのものをはっきりと理解していませんでした。もともと人見知りの性格だったので、親が心配して、社交性を持たせるために、演技の学校へ通うことになりました。最初は「親に通わされていた」という方が正解かもしれません。ですが、やってるうちに「演技」に対する理解が深まり、だんだんと好きになって、「面白い」と思えるようになり、「ずっと続けていきたい」と考えるようになりました。

ーー演劇のどんな部分が楽しいですか?

ウンギョン何も考えず、意識しないでも、その役に入りきった時が最も楽しいです。知らないうちにセリフが出てきて、カタルシスを感じます。そういうところが魅力的で、ハマっています。演劇を始めた時は違ったのですが、経験を積む間に、次第に理解できるようになっていったのだと思います。

ーーキャリアを中断して米国留学したのはなぜですか?

ウンギョン私は子役から芸能界で仕事をしていましたので、皆さんが経験する「学生時代」という経験が殆どありません。それを経験したかった 、というのが一番の理由です。「学生時代」という経験が、きっと演技にも役に立つのではないかと考えました。アメリカは、私にとって新しい世界。タイムズ・スクエアは大きくキラキラしていて、ビルも高く、ちょっと別世界に来た感じでした。 コリアン・タウンには、よくご飯を食べに行きました(笑)。

ーー日本で活動しようと思ったきっかけを教えてください

ウンギョン以前から日本や日本語に興味がありましたが、積極的に日本語の勉強を開始したのは、今から1年半ほど前です。話は少しそれますが、俳優を続けていくためには、いろんな経験が不可欠ですし、常に勉強する必要があります。そんな気持ちがあり、アメリカへ留学しました。それから、興味があった日本でも仕事ができればいいな、と思っていました。そんな時、現在の日本の事務所と巡り合い、契約をしたのが2年前。日本で仕事をするからには、日本語を話せるようになりたいと、日本語の勉強を始めました。日本語を話す皆さんと、積極的に接するようにして、日本文化や80年代の音楽の話、もちろんK-POPの話もしましたネ(笑)。

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「ブルーアワーにぶっ飛ばす」© "Blue Hour" Production Committee

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「新聞記者」© 2019 "The Journalist" Film Partners

ーー「新聞記者」では日本人を演じていますね。政治、社会派の内容で、苦労されたことも多かったと思いますが、どんなところが難しかったですか?

ウンギョンやはり、セリフが難しかったのですが、私が集中したのは、内面の描写でしょうか。主人公は、私が演じた記者・吉岡と、松坂桃李さんが演じた杉原の2人。彼らの行動には、自分たちにも共通するところがありました。この作品には「人としてどんな選択をすべきか、どうすれば人間らしくいられるのか」というメッセージが込められていると考えています。そういう部分が、この役をやらせていただいた理由です。また、特に専門的な言葉が多かったので、その意味をしっかりと勉強し、理解した上で演技に臨みました。

ーー「ブルーアワーにぶっ飛ばす」は、「新聞記者」と全くキャラが違いますね

ウンギョン「新聞記者」の吉岡は、日本人でありながら、様々なバックグランドを持っていました。「ブルーアワーにぶっ飛ばす」の清浦は、日本人でもちょっと不思議な人物で、言ってしまえば「どこから来たの?」っていう感じ、国籍不明のキャラだと思います。個人的には、韓国人の役、日本人の役、それぞれの役作りは大切ですが、それよりもっと、その役における「個人的なキャラクター」を大切にしたいと思っています。韓国人の私が日本人を演じるということよりも、役の先にある「個人」をいかに演じるか、その映画で何を見せたいのか、何を表現したいのかを大切にしたい。自分の中でキャラクターの国籍は、あまり重要ではないと思っています 。

ーー今後は、どこを拠点に活動されますか?

ウンギョンありがたいことに、日本の仕事が増えてきましたので、日本滞在の割合が増えています。ですが、韓国でも、お仕事をいただいていますので、両国間を行ったり来たりすることになるでしょう。日本もそうですが、できればアメリカでもお芝居ができたら、と思っています。さまざまな経験をすることで、役者としての幅が広がると思っていますので、チャンスを頂けるなら、別の国にでも行ってみたい。今回の来米がきっかけになればいいですね(笑)。

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Photo by Mike Nogami



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