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「ムーラン・ルージュ!」ヒット曲のオンパレード

豪華絢爛!
ヒット曲のオンパレード
「ムーラン・ルージュ!」

バズ・ラーマン監督の2001年のミュージカル映画「ムーラン・ルージュ!」の舞台版がブロードウェイで開幕した。
劇場の中は360度豪奢なキャバレー、ムーラン・ルージュの世界。きらめくシャンデリア、そびえ立つ赤い風車と象。ハート型のアーチが連なる舞台には「ムーラン・ルージュ」の文字が輝いている。

そこで繰り広げられるのは、従来のミュージカルにラスベガス的な臆面のない派手さを加味したスペクタクルに次ぐスペクタクル。オフシーズンのブロードウェイに鳴り物入りで登場した贅沢なエンターテイメントだ。

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映画でも有名な「レディ・マーマレード」が歌われるシーン (l to r ) Jacqueline B. Arnold, Robyn Hurder, Holly James & Jeigh Madjus. All photos by Matthew Murphy, 2019

1899年、パリ。アメリカ人作曲家のクリスチャンはムーラン・ルージュの美しいスター、サティーンと出会い、恋に落ちる。二人は共同で新しいショーの創作を始めることに。ところが、実はキャバレーの経営は火の車。オーナーのジドラーは資産家の公爵から投資を取り付けるが、公爵は見返りにキャバレーの所有権とサティーンを要求。サティーンがクリスチャンとの愛を貫けば投資を失い、踊り子たちも皆、路頭に迷う運命にある。そして、彼女は不治の病に冒されていた…。

どこかで聞いたようなストーリーは、オペラの「ラ・ボエーム」、「椿姫」、「地獄のオルフェ」からインスピレーションを受けたという。ミュージカル版の脚本(ジョン・ローガン)には人物たちの過去や関係性が書き足され、人物造型や説得力が深まった。

「ムーラン・ルージュ!」の最大の特色は、多数のアーティストのヒット曲をフィーチャーした究極のジュークボックス・ミュージカルである点だ。「サウンド・オブ・ミュージック」を始め、エルトン・ジョン、デヴィッド・ボウイ、マドンナ…誰もが知っている曲が次から次に歌われる。舞台版にはアウトキャスト、レディ・ガガ、アデルなど映画公開後にヒットした曲も加わり、総数なんと70曲以上。

複数の曲のワンフレーズを繋ぎ合わせて一曲にする使い方もユニーク。例えば、サティーンとクリスチャンのデュエットには、約25曲が詰め込まれている。これだけの数の曲を選び、編曲を手がけたのは、33歳のジャスティン・レヴィーン。全曲の使用許諾をクリアする事務作業と費用も膨大なものだったそうだ。

「あの曲がこんなシーンで!」という楽しみを誰でも味わうことができる作品だけに、観客のターゲットは通常のミュージカルとは比べものにならないほど広い。

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サティーンとクリスチャンの運命的な出会い Karen Olivo & Aaron Tveit

そしてキャスティングは完璧の一言。驚異的なスタイルの持ち主のカレン・オリヴォは、強く熱いサティーンで舞台を牽引。少年っぽさの残るアーロン・トヴェイトはナイーヴなクリスチャンにぴったり。ベテランのダニー・バースティーンはジドラーに人間味を持たせた。

アレックス・ティンバース(「ビートルジュース」)は、サービス精神たっぷりの演出で徹底的に観客を喜ばせる。ソーニャ・タイエの振付は伝統的なフレンチ・カンカンに現代の息吹を取り入れた。装置、衣装、照明、どれを取っても豪勢なこの舞台、予算は驚きの2800万ドル。

仕掛け人は、「キング・コング」と同じオーストラリアのグローバル・クリーチャーズ社。「キング・コング」は8月18日で閉幕するだけに、本作は威信をかけた勝負でもある。

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ジドラー役のバースティーンはトニー賞に6度ノミネート Danny Burstein

劇場には、宝塚の「銀橋」のような張り出し舞台が設置され、かぶりつきの特別席(349ドルから)もある。開演前からパフォーマーが舞台で大道芸を披露しているので、早めに到着したい。上演中は撮影禁止だが、カーテンコールは撮影OK。

観劇中、「過剰…。」という呟きが何度か脳裏をかすめたが、ここまで徹底してくれたら、かえって清々しい。「ムーラン・ルージュ!」は、真夏の夜にゴージャスな夢を見せてくれる注目作だ。
(高橋友紀子)

Moulin Rouge! The Musical

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