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澤野水纓・個展「東京・パリ・ニューヨーク」実物でこそ伝わる力強さと生命力

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澤野水纓・個展「東京・パリ・ニューヨーク」
人物と自然の対話を描く作品群
実物でこそ伝わる力強さと生命力

2025年7月25日号掲載|9

画家・澤野水纓=写真=の個展「東京・パリ・ニューヨーク」が、トライベッカの画廊「サパー・コンテンポラリー(Sapar Contemporary)」で7月16日(水)から始まり、8月29日(金)まで開催されている。同画廊で澤野の個展は初めて。同展では、1850年代のパリで始まった人物表現への関心や、自然との生涯にわたる対話を反映した作品群が展示されている。

澤野水纓
代表作のひとつ「睡蓮」シリーズ

また、代表作の一つ「睡蓮」シリーズも展示。キュレーターでアジア研究者のアレクサンドラ・マンローは、「多層的な構造と色彩を持つシリーズは、光や水、花の物質そのものの、官能的な即時性をとらえている」と評している。

80年代に始まった「桜」シリーズは、日本の伝統的な絵画や、詩の主題を現代的な視点で再解釈したもの。マンローはこれを作家の最重要作と位置づけている。「澤野は、桜を儚さの象徴ではなく、自然の普遍的な力の比喩として捉えている」と話している。作品はSAPAR閲覧サイト(別記)でも鑑賞可。

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澤野の作品は、人物や風景といった具象的な主題をもとに、長年にわたる自然との対話や文化的背景への深いまなざしから生まれる、流動的かつ詩的な抽象世界だ。とりわけ「睡蓮」や「桜」シリーズでは、光・水・花といった要素を通して、「生命」の質感や「時の儚さ」といった感覚的な領域を丹念に可視化している。

その色彩には、見る者を圧倒するような生命力が宿っている。画集や写真では決して伝わらないそのエネルギーは、実物を前にしたときにはじめて、肌で感じ取ることができる。色そものもが呼吸し、光とともに立ち上がるような存在感が、作品全体に強い躍動感を与えている。

澤野水纓
「桜」シリーズも澤野氏の代表作
澤野水纓
近年では珍しい人物作品も展示

澤野は大阪府守口市出身。著名な小説家・ジャーナリストを父に持ち、東京、パリ、ニューヨークを拠点に50年以上にわたって制作活動を続けてきた。東京藝術大学で学士・修士号を取得後、1966年フランス政府給費留学生としてパリ国立美術学校に留学。69年にはニューヨークに移り、アート・スチューデンツ・リーグで研鑽を積んだ。以降は具象から抽象へと、自由で流動的な表現へと移行しながら、人物と風景を主題に制作を続けている。

アメリカの国立女性芸術美術館や、ハーバード大学ライシャワー日本研究所、ブルックリン植物園などでも作品を発表。モロッコではアシラ・フォーラム財団を通じた公共プロジェクトも手がけている。

■7月16日(水)〜8月29日(金)
■会場:SAPAR CONTEMPORARY
 9 N. Moore St.
■SAPAR閲覧サイト:
https://saparcontemporary.viewingrooms.com/

澤野水纓

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