新シーズン開幕!
最新技術導入で刷新図る
メトロポリタンオペラ
メトロポリタンオペラの2024〜25年シリーズは、METプレミア4作品、新演出2作品、レパートリー12作品などが、9月23日から2025年6月7日まで殆ど毎日上演される。ただし、1月26日から3月3日までは、休演となっている。
ここ数年、METでは、スター歌手に頼ってきた歴史に終わりを告げ、国籍やオペラのジャンルにこだわらない新進の作曲家を積極的に起用し、多様性という時代の流れに乗っている印象を拭えない。演出も大掛かりな舞台美術から脱却し、プロジェクションや照明などの最新技術を取り入れて、刷新を試み、新しいオペラの世界を切り開いていると言える。
METプレミアの新作は、ジャニーン・テソーリ作曲「GROUNDED(グラウンデッド)」=表紙写真・写真②=、オスヴァルド・ゴリホフ作曲「AINADAMAR (アイナダマール)」=写真③=、ジェイク・ヘギー作曲「MOBY-DICK(モビー・ディック)」、ジョン・アダムズ作曲「アントニーとクレオパトラ」=写真①=の4作品。
新演出に衣替えされるのは、ヴェルディ作曲「アイーダ」とリヒャルト・シュトラウス作曲「サロメ」の2作品。他に「ホフマン物語」や「ラ・ボエーム」、「スペードの女王」など12作品が再演というラインナップ。ホリデー・オペラは、人気のジュリー・テイモア演出のモーツアルト作曲、英語版「魔笛」。
グラウンデッド
GROUNDED
METの委嘱によって実現されたこのオペラは、ジョージ・ブラントの21世紀の戦争がもたらす倫理的ジレンマを題材とした戯曲を基にオペラ化。作曲を手掛けたジェーン・テソーリ(1961年~)は、オペラとミュージカルの双方で活躍し、映画「リトルマーメイド」や「シュレック」、「ムーラン」などを作曲。これまでにトニー賞に5回ノミネートされ、2015年に「ファン・ホーム」で、最優秀作曲賞を受賞。ブロードウェイで2つのオリジナル・ミュージカルを同時期に上演を果たした初の女性作曲家である。
今回のオペラの題材は、世界各地域で勃発している戦争の悲劇が、戦争に巻き込まれていない私たちに強く訴えかけるものとなるだろう。
マイケル・メイヤーのハイテクを駆使した演出は、膨大な数のLEDの画面に様々なアクションを投影し、とりわけドローンによる上空からの捕獲者の眼が表現されている。
主役のジェスに抜擢されたのは、「世界で最も特別な若手歌手」とNYタイムズ紙で称賛されたメゾ・ソプラノのエミリー・ダンジェロ。
■あらすじ:イラクで任務に就いていたF-16戦闘機のエース・パイロットのジェスは、休暇でワイオミング州を旅行中、牧場主のエリックと出会い予想外の妊娠をしてしまう。ジェスは生まれた娘のサムを育てるため5年間家にいたあと、空軍に戻ると任務を解かれ、ラスベガスの基地のトレーラーの中で、12時間、週7日の過酷なビデオモニターによる遠隔操作で、ミサイル搭載の無人ドローン「リーパー」を使って地球の反対側から攻撃をする新たな任務に。標的を攻撃するたび、ジェスは次第に精神的に追い詰められる。ある日、標的からわが子と同い年の少女が現れ、ジェスはドローンをコースから外し墜落させてしまう。ジェスは、軍法会議にかけられ収監されるが、むしろ心の整理と解放、そして自由を手に入れる。
アイナダマール
AINADAMAR
アルゼンチンの作曲家、オズワルド・ゴリコフによる初のオペラ。スペイン内戦勃発時にファシスト勢力に暗殺された詩人・劇作家のフェデリコ・ガルシア・ロルカの生涯と作品をドラマ化した。ロルカのミューズであるカタルーニャの女優マルガリータ・シルグをソプラノ歌手エンジェル・ブルーが演じ、フラメンコ歌手アルフレッド・ロハダがロルカの処刑を画策したファランヘ党の政治家ラモン・ルイス・アロンソ役で登場する。
METデビューの指揮者、ミゲル・ハルス・ペドヤがフラメンコとルンバのエネルギッシュなリズムに挑み、シルク・ドゥ・ソレイユで活躍したブラジルの演出家兼振付師デボラ・コルカーの鮮烈なデビューが実現する。
チケットは通常25ドルから445ドル、オープニング・ガラ公演は、85ドルから700ドル。また、40歳以下の観客を対象として毎週金曜日には、割引料金に加え、公演前にパーティが催される。フルタイムの学生には、学割チケットも用意。更に今シーズンからアプリをダウンロードすると当日のラッシュ・チケットが抽選で25ドルで買えるロッタリーが登場。(針ヶ谷郁)
■会場:Metropolitan Opera House
30 Lincoln Center Plaza
■https://www.metopera.org