よみタイム|2024年11月29日号・Vol.483デジタル版 & バックナンバーはこちら

吉澤舞子「描くことは希望」

吉澤舞子「描くことは希望」
MAIKO YOSHIZAWA(日本画家、ボディ・ペインター、パフォーマンス・アーティスト)
・出身:千葉県

吉澤舞子

★異世界への興味
幼少期、私は現状を受け入れることを強く意識しながら過ごし、自分と周りの状態がより良くなるように祈りを込め、理想を絵にしていました。キャンバスに向かうたびに、内なる不安や他者と向かい合うことで起きる違和感が、色彩と形状を通じて希望へと変わり、心の安定を取り戻すことができました。この行為は今でも制作の根底にあります。記憶はありませんが、幼稚園くらいから電気を消しても絵を描いていたと母から聞きました。影響を受けたものは、絵本「よもつひらさか」、アニメ「笑うせえるすまん」、水木しげるの漫画「妖怪大図鑑」、映画「ネバーエンディングストーリー」など。「よもつひらさか」、「笑うせえるすまん」、「妖怪大図鑑」はとにかく怖いもの見たさで、母に読み聞かせをせがんだ覚えがあります。幼いながらに世の無常をそれらで感じ、キャラクターの心情について思いを巡らせていました。また、「ネバ―エンディングストーリー」では、最大の敵が「虚無」であることに衝撃を受け、大人になってからもよく見返す映画の一つとなっています。幼いころから自分をどこかに連れて行ってくれるような異世界への興味が強かったように思います。

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★日本画の魅力
日本画の魅力は、時間がかかることと、馴れないことです。学生の時に始めてから16年以上経ちますが、いつまで経っても扱いづらく、思った通りにいきません。乾くのにも時間もかかるし、立てかけて描く事が出来ない。ですが、一つ一つの工程において時間がかかりブランクができるため、そこで冷静に自分の思考や感情を確認する時間ができます。それは私にとって、とても必要な作業であると感じています。また、岩絵の具の粒子も魅力の一つです。油絵のように絵の具同士を混ぜて混色ができないため、絵の具を重ねていくことで層にして色を出していきます。粒子のきらめきと塗り重ねた層は独特のしっとりした深みがあり、とても魅力的。削ったり、洗ったり、流してマチエールを作ったりと、身体的であるところにも惹かれています。

★目標は絵を描き続けること
私にとって描くことは、希望。幼いころから絵に救われてきましたが、それは今でも変わりません。自分の中に蓄積された物語や祈りを平面の中で再構築し、様々な感情の肯定を図ります。AIが進む時代において、それを発表することで、絵画の持つ力と希望の作り方の提示をしていければと思っています。パフォーマンス・アーティスト、ボディ・ペインターとしても活動しています。絵画は個人で向き合うものですが、ほかのアーティストとコラボレーションができる点が魅力です。二次元である平面から三次元という動的な空間への拡張。精神と肉体の可能性を知るための表現として実験的に続けています。

私の目標は絵を描き続けることです。日本国内だけでなく、海外でも活動の幅を広げていきたいと思っています。また、岩絵の具の魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと考えています。

吉澤舞子

★活動の拠点をNYに
来米してまだ2ヵ月ですので、今後もNYで発表を続けていければと思っています。8年前にNYに来た時、街にアートや音楽があふれ、人も優しく、本当に元気になりました。当時は制作がうまくいっておらず、NYに来て「アートの力」を感じ、細胞から元気になりました。たくさんの国の人が集まる場所で、新たな視座を持つことで、自己と日本画に対して再認識を図り、作品の強度を高めたい。また、私の作品は大きいため、日本ではなかなか展開が難しく思い、海外で力になってくれるギャラリーを見つけたいと考えています。

★ブルックリンで個展開催中
8月25日(日)までブルックリンのJ-COLLABO(BBFL)で個展「OPEN to ATLAS」を開催中です。期間中はヨガのインストラクターを招きボディーペインティングも披露しています。

吉澤舞子

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