古川康介 KOSUKE FURUKAWA
映像作家 / フィルムキュレーター / NYJCF主催者
短編映画の魅力と可能性
新しい映画祭の形態目指す
13回目を迎える映画祭「ニューヨーク・ジャパン・シネフェスト(NYJCF)」が11月1日(金)から3日(日)まで対面で、4日(月)から10日(日)までオンラインで行われる。毎年、「日本」をキーワードに広く一般からも作品を募集しており、今年の応募締め切りが8月15日(木)に迫った。
選考を担当する同映画祭主催者のひとり、映像作家でフィルムキュレターの古川康介(ふるかわ・こうすけ)氏=写真①=。

「正直、こんなに続くとは思っていませんでした(笑)。映画祭を始めた当時からは考えられないほど、今では『短編映画』の価値も高くなり、一つの『ジャンル』として確立されました」
短編映画は以前、長編映画の陰に隠れ、メインストリームで取り上げられる事は少なかった。
「世の中が変わり、短編映画独自の魅力に人々が気付いた。フィルムキュレーターとして、NYJCFの作品を選考しプログラミングすることにとてもやりがいを感じています。年を追うごとに作品のクオリティーが上がっていることもあり、選出にとても時間がかかります。やはり短い中でも、しっかりとしたストーリーやメッセージが伝わってくる作品はとても魅力的。長編とは違い短編は、ある一人の人生の一瞬を切り撮った作品に出会えます。セリフが少なく、圧倒的な映像美で迫ってくる作品は、短編ならではの魅力。応募されたすべての作品に感謝をしながら選んでいます」
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昨年、同映画祭でワールドプレミア上映された古川氏の最新作「守破離~書の道、我が道~」=写真②=は今年の「ジャパン・フィルムフェスティバル・ロサンゼルス」に入選、9月にロスでの上映が決定している。同作は、京都を拠点に活動する書家・新見知史氏を取り上げた12分36秒のドキュメンタリーだ。
「かねてから同じNYJCF主催メンバーの河野洋氏(マークリエーション代表)と、同映画祭が主導するドキュメンタリー作品を制作したいと考えていました。その矢先、新見先生から河野氏に映画制作の依頼が舞い込んだ。最近ではアメリカ人も書道(calligraphy)への関心が高いと、日常生活の中で感じていましたので、とても希望が持てる題材だと直感。新見先生は、取り組み方や独特な方法で書道を表現されていましたし、彼女自身も世界に書道を発信したいという夢をお持ちでした。僕もNYJCFプロジェクトの役に立てるのであればと思い、参加させていただきました」

作品タイトルの「守破離」とは、千利休の教えで、「道」と名がつく習い事(茶道、華道、武道など)の基本姿勢であると同時に、「本物」になるためのプロセスだという。
「『守破離』とは、確かに基本となるもの、そして本物になるためのプロセス的な意味ですが、それを踏まえた上で、あえてその王道的なものを壊し、新しい表現を探していく、というような意味合いがあると思います。それはまさに、新見先生が書道に対して向き合い、世界に発信していることだと考えました」
400年前から続く利休の教えを軸にした、新見氏の新たな「書の道」が、12分36秒という短い時間に凝縮されている。
「僕にとって映画とは、やはり一から作り上げる制作者的な視点が大きい。その中でも短編映画には大きな魅力と可能性を感じています。今後もマークリエーションとNYJCFで短編映画を制作していきます」
NYJCFは映画上映だけではなく、「作品を制作する」という新しい形の映画祭を目指す。
- NewYorkJapanCineFest(NYJCF)
■対面:11月1日(金)~3日(日)
※1日:会場Asia society (725 Park Ave.)
※2日・3日:会場 TBA
■オンライン:11月4日(月)~10日(日)
★「NYJCF」応募締め切り:8月15日(木)
■詳細:https://filmfreeway.com/NewYorkJapanCineFest