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インタビュー:空手家・清水希容「銀メダルの先に見えたもの」

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勝敗を超えた空手人生
銀メダルの先に見えたもの
空手家・清水希容

2025年8月22日号掲載|8

東京五輪の空手種目「女子形」で銀メダルを獲得した清水希容(しみず・きよう)さん(ミキハウス所属)。彼女はまた全日本選手権7連覇、世界選手権2連覇、アジア大会で3連覇を果たすなど輝かしい戦績を誇り、まさに空手を世界に発信してきた第一人者だ。今回の来米は、NY日米武道館の五嶋龍館長の招聘で実現。8月某日、NY日米武道館を訪問し「心・技・体」空手の本質を体現する彼女に話を聞いた。

清水希容

「空手は、『男の子がするもの』というイメージがありました。ですが、道場を見学した際、女性の練習生が思いのほか多く、その姿を見て『こんなに格好いいものがあるんだ』と感じたことを覚えています」。親に「私も習いたい」と頼み、小学3年生から空手を始めた。

「空手の『形(かた)』を見た時に『美しい』と思いました。『形』は決まったものですが、演者によって印象が変わります。同じはずなのに、同じではない。個性があるところが魅力ですね」

空手を始めたことで、「性格」が変わった。「喜怒哀楽のコントロールが以前より出来るようになった、というべきでしょうか。やはり空手を通して学んだことがたくさんありました。もし空手をやってなかったら、文化系女子になっていたかな(笑)」

子どもの頃はやはり友達と遊びたいと思ったが、「自分から言いだしてはじめたこと」であると同時に、「もっと上達したい」という思いが強かったと振り返る。

「よく『モチベーションは何?』と聞かれることがありますが、モチベーションがあるから続けているという感覚はありません。私にとって空手は人生そのもの。家族みたいに、空気のように、ただ普通にソコにあるものなのです」

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清水さんといえば、やはり東京オリンピックでの活躍が記憶に新しい。

「2020年オリンピックが延期され、21年の開催時もまだコロナが蔓延。空手競技の開催は大会最後の方でしたから、状況次第では中止の可能性がありました。中止にも決行にも備えて心を整えていましたが、期待と不安が入り混じる日々を過ごしました。人生であれほど複雑な思いを抱いたのは初めてです。最終的に試合は決行され、試合場に立てた時は本当に嬉しかったです」

順調に決勝まで進んだ清水さん。日の丸の重圧は重く、ひしひしと感じていたという。

「勝つためにここにきましたので、『負けたら切腹』という程の思いでした。やるべきすべての準備をやり、自分が持てるすべてをここで出すという思いで臨みました」

最終戦ではスペインのサンドラ・サンチェス選手に敗れ、銀メダルに。

「確かに今でも悔しい思いでいます。オリンピックでボランティアをしていた親友に、『私は一生、銀メダルって言われるのかなぁ』と言ったのを覚えています(笑)。私個人は『負けた』という思いでいたのですが、多くの皆さんから『ありがとう!』『勇気をもらった』『感動した』『病気に向き合う勇気をもらった』といった嬉しい言葉をいただきました。やってて良かったと思えました」

清水希容

さらに、負けたことで気が付いたことがあったという。

「それまでは『勇気をもらった、感動した』という言葉は、勝ったからだと思っていました。負けたにもかかわらず同じような言葉を頂いた時、勝ち負けだけがすべてではないのだと。負けて悔しい気持ちは今でもありますが、それ以上に、大切なものを得られたと感じています」

オリンピックから3年後の2024年5月19日、西日本地区大会の特別演武をもって競技を引退。

「オリンピックで負けた悔しさはずっと心に残っていました。しかし、大会が続き忙しい中で、試合に出ることだけが空手のすべてではないと感じるようになりました。もっと空手を極めて向き合いたいという思いから、競技から退くことを決めました」

今は後進の育成と指導。自らが学んできたことをすべて伝えていきたいと清水さん。

「『指導したい』というよりは『一緒に作っていきたい』、そんな思いが強いです。私が一方的に与える立場ではありません。経験はシェアできますが、人と関わる中で私自身も気付くことがたくさんありますから」

現在は、ミキハウスの正社員として、日々の業務をこなしている。「普段は会社の業務が中心ですが、時にはイベントや演武、指導も行っています。海外に出ると、日本の繊細で美しい文化を改めて実感。そうした魅力を伝えていきたいと思っています。今年4月、清水寺で演武する機会をいただき、その際に日本の繊細さや伝統の継承、先人への尊敬といった、世界に誇れる文化の大切さを改めて感じました。これからもそうした日本の良さを伝えていきたいです」

清水さんの座右の銘は「自分を信じて」。
「メンタルは強い方ではなく、自分に自信が持てないので、自分に言い聞かせるつもりで色紙などに書いています。自分を信じることの大切さなども伝えていきたい」

勝敗だけでは語れない深い思いと経験。競技者としての輝きはもちろん、人としての真摯な姿勢こそが、彼女の真の強さだろう。(ケーシー谷口)

清水希容

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