2020年12月18日号 Vol.388

〜新年がん予防考〜
がんとインスリンの関係
無加工・低脂肪食品を食べよう

今回は、糖尿病のキーファクターであるインスリンと、がんについて考えてみようと思います。自分には関係ないと思っていたら大間違い。がんは米国の死亡原因の2位、日本では1位、糖尿病も増加の一途です。

そして、実はインスリンとがんは相互に関係しています。2012年の研究で、空腹時の血清インスリン値が高い人は、がんによる死亡リスクが62%上がり、特に胃腸のがんでは161%上がると発表されています。

がん細胞を増殖させるインスリン?

がんとインスリンの関連性はかなり前から分かっていました。がんを代謝性疾患として認識した治療法は、近年真剣に検討され始めています。実は、ラボで乳がん細胞を増殖させるのは非常に簡単で、乳がん細胞を採取し、そこにブドウ糖、上皮成長因子、インスリンを加えるだけ。すると乳がん細胞は、雨後の筍のように次から次へと増えるそうです。

インスリンは、すい臓のベータ細胞で作られるホルモン。食後の血糖値(血液中のブドウ糖濃度)上昇に反応し、すい臓から分泌されたインスリンが、体内の細胞の表面にあるインスリン受容体に結合することで、血液中のブドウ糖が体内に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。余ったブドウ糖はグリコーゲンや中性脂肪に合成され蓄えられますが、その合成を促進するのもインスリンの働きです。

またインスリンは、さまざまな細胞の成長と増殖を刺激します。細胞内のインスリン値が高いほど(=インスリン抵抗性)、より迅速な細胞分裂を引き起こします。1990年の研究で、乳がん細胞が持つインスリン受容体は、正常な乳房組織の6倍以上であることが発見されています。

インスリン抵抗性を理解しよう

インスリンは、骨格筋・脂肪細胞・肝臓といった標的臓器に、糖分の吸収を促すように働きかける役割を持っています。標的細胞がインスリンに対して反応することを、「インスリン感受性」といい、「インスリン抵抗性」とは、標的細胞のインスリンに対する感受性が低下していることを指します。十分な量のインスリンが分泌されているのに標的臓器がうまく反応せず、糖分を体内に取り込みにくくなり、血液に糖が蓄積されて高血糖になります。

インスリン抵抗性を引き起こす原因として、食生活の欧米化があります。砂糖や精製穀物を多く含む加工食品と、乳製品や揚げ物などの高脂肪食品の組み合わせは、間違いなく深刻な健康被害につながると言われています。

新年、がん予防に取り組むなら

自然食品をとり、加工食品を減らすことが、病気予防のカギと言えるでしょう。真剣に取り組むなら、新鮮な果物や野菜を中心に、加工食品を避けた低脂肪ビーガン食をお勧めします。

高血糖の防止なら、低糖食のケトジェニック・ダイエット(低炭水化物、高脂肪)がよいのではと考えがちですが、これは落とし穴。このダイエットは、食後のインスリンレベルを低下させても、長期的なブドウ糖管理に悪影響を与える可能性があります。

それに、このダイエットの高脂肪食は、インスリン抵抗性のリスク上昇に関連しています。多くの研究で、高脂肪食は細胞シグナルの伝達を妨害し、インスリン感受性を低下させると警告が発せられています。糖尿病を持たない大腸がん、乳がん、膵臓がんの患者で、末梢血中のインスリン濃度の上昇が報告されており、また乳がん細胞にインスリン受容体が過剰発現しているとの報告もあります。

アジア人は欧米人より、体質的にインスリン分泌量が少ないので、欧米食を続けると糖尿病になる確率が上がると思います。血液検査での「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」の数値変動には要注意です。特に中性脂肪が高く、高血圧の人は気を付けてください。


★新年のレシピ:がん細胞と闘ってくれるといわれるニンニクとレモンを使った「ニンニク白和え」と、血圧を下げて肝臓強化に役立つと言われる里芋を使った「お焼き」をご紹介します。

★「ニンニク白和え」

■材料(1、2人分)
●木綿豆腐 150g 
●しらたき 約80g
●ニンニク おろしたもの小さじ1
●レモン汁 大さじ1
●だし汁 大さじ3
●醤油 小さじ1.5 
●みりん 小さじ1.5
●白炒りごま 小さじ1
●ブロッコリースプラウト 適量
●ミョウガ 適量
●大葉 適量

■作り方
@豆腐は水から煮て、ざるに上げて水分を切っておく。
Aしらたきは水洗いし、沸騰したお湯に入れ、再び沸騰させて1分程度サッと茹でたら、ザルに上げて水分を切る。
B鍋にだし汁、醤油、みりんを入れ、Aを入れて火にかけ、沸いたら火を弱めて3、4分煮て、火を止めて冷ましておく。
Cごまを、すり鉢で粒がなくなるまでよく擦り、@を入れてつぶして、滑らかにする。
DCにBとレモン汁、おろしニンニクを入れ、よく混ざったら器に盛る。
E細切りにしたミョウガと大葉、ブロッコリースプラウトをのせて出来上がり。


★「里芋おやき」

■材料(2、3人分)
●里芋 5個
●ほうれん草 細かく切ったもの半カップ
●ニンジン みじん切り4分の1カップ
●長ネギ 小口切り3分の1カップ
●塩 小さじ半
●アロルート粉(Arrowroot =クズウコン)
 または片栗粉 適量
●アボカドオイル 大さじ1

■作り方
@里芋は洗って皮をむき、塩をまぶして(材料外)手のひらでまんべんなくこすりつけるように転がしながら、ぬめりを取る。
A鍋に水を入れ、里芋を茹でる。
B里芋が茹だったら、水気を切り、ボウルに入れドロッとなるまでつぶす。
CBにほうれん草、ニンジン、長ネギ、塩を入れてよく混ぜる
DCの里芋を5センチ程度の平たい円形にし、アロルート粉か片栗粉を表面にまぶす。
E中火で熱したフライパンにアボカドオイルをひき、Dの里芋生地を焼く。両面がカリっとして少し焦げ目がついたら出来上がり。


鹿島 香(かしま・かおる)
米国代替医療協会認定ホリスティック・ヘルス・カウンセラー。
遺伝子組み換え食品に反対する非営利団体主宰。
TEL: 917-478-2192 kaoru@krlllc.com
www.kaorukashima.com

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