2020年5月8日号 Vol.373

「ユダヤ人のペニシリン」チキンスープ

ニューヨークでの自宅待機も7週間目に入り、この新しい生活に慣れた人もいれば、今か今かと社会復帰を待っている人も多いと思います。そんな中、お料理の腕を上げた人も多いのでは? ずっと使っていなかった料理本を出してきたといった声が入ってきます。今回は、アメリカの家庭料理の定番、チキンスープについてお話ししてみますね。

ニューヨーク市にはユダヤ人が多く住んでいますが、熱々のチキンスープは12世紀ごろから「ユダヤ人のペニシリン」として知られています。何世紀にもわたって、風邪用「薬膳」と見なされてきました。風邪は、上気道ウイルス感染によって引き起こされると考えられており、体が炎症を起こし粘液産生を刺激するので、頭痛、咳、くしゃみなどの症状が現れます。ちなみに、風邪などウイルス系の病気にはペニシリン(抗生物質)は効かないので、「ユダヤ人のペニシリン」と言うのは、つまりは「特効薬」みたいな意味だと思います。

実際、このような症状が発生した時に、温かいスープは詰まった副鼻腔を開くのに役立ちます。スープには、水分はもちろん塩分も適度に含まれており、チキンにはシステインと呼ばれる天然アミノ酸も含まれています。システインは、含有する化学物質の量がアセチルシステインと呼ばれる薬物と似ています。アセチルシステインは、気管支炎や呼吸器感染症の際に粘液を除去しやすくするための薬です。

というわけで、昔から伝わるチキンスープは風邪の症状を和らげる作用があるということですね。抗酸化作用の高い食材を加えると免疫力アップにもつながり、風邪も早く治ること間違いなしだと思います。

今回はアレンジしやすいように、ユダヤ人家族の我が家(私の夫はユダヤ人です)に伝わる、昔ながらのチキンスープのレシピをご紹介します。いつも作り置きできるように沢山つくるので、大きな鍋が必要な分量です。

チキンスープ

■材料(8〜10人分)
●鶏 3〜4ポンドの鶏丸ごと
●玉ネギ 中4個(皮をむく)
●ニンジン 3、4本(ヘタを切り落とす)
●セロリ 3、4本(根っこや葉も使えます)
●パースニップ(白人参)1本(ヘタを切り落とす)
●ターニップ(カブ) 小1個
●ディル(生) 10〜13g
●ニンニク  大5、6片
●月桂樹の葉 4、5枚
●海塩 小さじ3
●ペッパーコーン 小さじ1

■作り方
@大き目の鍋に内臓をとって洗った鶏丸ごとを入れ、鶏がすっぽり浸かる量の水を加えて火にかける。
A中火で煮て、アクをこまめに取り除き、スープが透明になったら、野菜全部を丸ごといれる(後で野菜を取り出しやすくするため)。
B鍋が一杯になるまで水を追加(3、4ポンドの鶏だと大体1ガロン)し、塩、ペッパーコーン、月桂樹の葉を入れる。
C蓋をして弱火で45分から1時間煮る。野菜や鶏が崩れないように、時々そっと混ぜる。
D蓋を取り、塩加減を確かめ、必要なら塩を足し、さらに1時間煮る。
E煮ること2時間の時点で、旨味が薄いようなら蓋を外したままで、スープが少ないようなら蓋をしてさらに1時間煮込む。
F3時間煮たら、セロリ、人参、パースニップ、ディルを取り出す。ディルは捨て、それ以外は別の容器に移す。この時に必要なら、ターニップと玉ネギを残したまま更に煮込む。味が整っていれば玉ネギとターニップも取り出し捨てる。鶏もそっと崩れないように丸ごと取り出し、別の容器に移し冷ます。
G中身を全部取り除いたスープを、目の細かいザルを使って濾す。
H濾したスープを鍋に入れ、最後の味付けをし、別容器に移したニンジン、セロリ、パースニップを細かく切って入れ、ほぐして切った鶏肉と、フレッシュなディルをのせてお召し上がりください。


鹿島 香(かしま・かおる)
米国代替医療協会認定ホリスティック・ヘルス・カウンセラー。
遺伝子組み換え食品に反対する非営利団体主宰。
TEL: 917-478-2192 kaoru@krlllc.com
www.kaorukashima.com

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