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 よみタイムについて
   
よみタイムVol.86 2008年4月4日号掲載

オーケストラ・オペラ指揮者 伊藤 玲阿奈

「指揮者3代目」歩み始める
オペラデビューも果たす


若手奏者と共演する日系人会コーラス部団員

オペラ・デビューを果たした(Photo: Rebecca Hyams)

 ニューヨーク日系人会コーラス部と若手日本人奏者の精鋭で編成したオーケストラによる「第二回ポピュラーソング・ファミリーーコンサート」が3月21日金曜日午後、静かに始まった。
 コーラス部2回目の晴れ舞台。音響効果抜群として知られるクイーンズのルフラック・コンサートホールのステージに、やや緊張した面持ちのコーラス部団員27人がオーケストラの後方に勢ぞろいする。颯爽と登場した若い指揮者は、これまた若いコンサートマスターとがっちり握手すると、観客席に向かって深々と頭を下げる。収容人数約100人の小ぶりのホールだが、マンハッタンから仕立てたバスで駆けつけた観客も含め、入りは上々。  
 コーラス部の音楽監督でこの日の指揮者、伊藤玲阿奈さんの右手が軽やかにあがり、前半のオーケストラによるモーツアルトなどの歯切れのいい演奏に続いて、いよいよ日系人会コーラス部による、日本の歌曲、荒城の月、五木の子守唄、などが次々と披露される。続いてアメリカン・フィルム・クラシックと題する、映画音楽がオーケストラによって披露され、最終章では、再び、望郷の歌ばかりを集めた、旅立ちの歌、旅先での思い、回想と望郷、故郷への凱旋などの思いを込めた歌曲が、情感たっぷりにう歌い上げられ締めくくられた。

 音楽監督・伊藤玲阿奈さんの日ごろの指導・選曲・構成の成果が結実した瞬間だ。
 実は、このコンサートの3日前に伊藤さんは、ゴールドシュタイン劇場で、初めて「フィガロの結婚」を振り「オペラデビュー」を果たしている。
現在、クイーンズカレッジの大学院に在籍し指揮の勉強を続けている。日系人会コーラス部の音楽監督に就任したのは昨年4月。若さと持ち前の熱心さで、団員をぐんぐんとリード、コーラスの質と団員の数で飛躍的な進歩をもたらした。
 また昨年7月、団員有志と「JIN=ジャパニーズ・インターカルチュラル・ネットワーク(通称ジン)」を設立。日系人会コーラス部及び日系の若手オーケストラ奏者を糾合した音楽活動を通して日米文化交流をサポートする、のが目的のNPO団体だ。
 福岡県生まれ。祖父、母ともに市民オーケストラの指揮者をしており、伊藤さんで三世代とも指揮者という稀な音楽一家ということになる。ただ、意識して指揮者を目指してきたわけではない。
 育ったのは福岡の旧三井炭鉱の城下町。祖父も、母も、特別に音楽学校を出たわけではないが、音楽に対するパッションは人一倍という家族の元で一人っ子として育った。
 ピアノ、バイオリンを始めたのは4歳。9歳では作曲も始めるほど、音楽環境は自然な形で才能に滋養を与えてきたのだろう。
 母親が指揮者を務める「筑豊青少年交響楽団」は子どもから大人まで、クラシック音楽を愛する演奏家たちが集まる県内有数の市民オーケストラとして活躍している。
 高校卒業してすぐにアメリカへ。ワシントンDCのジョージ・ワシントン大学に入学。この時点では、音楽はいつも心の中にありながら、まだ音楽家になろうとという明確な意思はなかった。在学中は音楽の授業も受けるが国際情勢学部を卒業。そのあとニューヨークへ来て、次第に音楽への思いがつのった。
 ジュリアード音楽院の予科に入学した。「ピアノやバイオリンでは、専門にやってきた連中にとても太刀打ちできないと思って、それで指揮法と作曲を選んだ」という。作曲の面白さにどんどん引き込まれていった。もちろん生易しい世界ではない。玲阿奈さんは、一見快活で明るく見えるが、内面はかなりセンシティブ。競争、自分の才能、チャンス、暗く落ち込む日々もあった。「今もそうですよ」と笑う。
 マネス音大で正式にオーケストラの指揮法を学び学位を取得。さらに大学院で学ぶためクイーンズカレッジに進んだが、この分野はきわめて厳しい狭き門。入学を許されるのはたった1人か2人。苦しい勉強の毎日が続いた。暗譜をしては休息。本当に楽譜を理解するには、ガリガリ知識を詰め込むだけではいけないと自覚し、いったん記憶した音符を、距離を置いて眺め返す作業が有効だと自得した。
 結局、意識したわけではないのに、大きな流れに導かれるかのように「指揮者三代目」の道を歩み始めた自分がここにいる。音楽の道でプロを目指す者たちが味わう苦闘が続く。それでも音楽へのパッションは負けない、オーケストラの指揮デビュー、オペラの指揮デビューなどを通過し、手ごたえを強く感じている。
 来年3月には故郷福岡から「筑豊青少年交響楽団」を招き、コンサートを開催する予定だ。もちろん母であり指揮者である伊藤穂波も来る。ニューヨークで母と息子が共に指揮棒を振る日はそう遠くない。
(塩田眞実記者)

日系人会コーラス部は随時団員募集中
JIN(代表・伊藤玲阿奈)
日系オーケストラ奏者と、
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詳細:jinnewyork.blogspot.com
問い合わせ:jaachorus@gmail.com
Tel: 718-672-3247