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よみタイムVol.66 2007年6月1日号掲載

  インターナショナル・シントウ・ファウンデーション、オフィサー
太田垣 亘世

スチュワーデスから神主へ
アメリカで「神の道」広めたい

 日本文化や神道を海外に紹介しているNGO「インターナショナル・シントウ・ファウンデーション」(ISF)のニューヨーク・センターに、3月に着任した。
 「ISF(国際神道学会)というのは、神職の集まりというより民俗学や仏教、神道を専門的に勉強されている大学の先生が多く、宗教を研究対象としている学術的な面が強い団体です。名前の通り神道を世界に広めていこうという目的と、海外にいるたくさん日本人のために、アイデンティティの拠り所を持とうという目的もあります」という。
 実家は尼崎市にある由緒正しい「えびす神社」。寺島しのぶ主演の映画にも登場した。神主をしている父親から「(神主の)資格だけでも取っておけ。食いっぱぐれてもここに住めるぞ」半ば冗談半ば脅かされ「じゃ資格だけでも取っておくか」と国学院大学の養成セミナーを受講した。
 ところが、やってみるとすっかりこの世界に魅了される。養成所に2年通って権正階(ごんせいかい)という位を取得、宮司になる資格を得た。寮に泊り込んでの修行は辛いこともあった。
 「祭式といって足の運びなどの所作の作法、神様の前では左足が先とか、神様から見て左はこちらの右とか、正座も多くてイライラすることも多かった。資格が取れた時は、やったぁ!と正直嬉しかったです」。
 資格取得後は、別の神社で修行したあと、えびす神社に入った。宮司になる資格を有するので、ゆくゆくは尼崎のえびす神社神主を継ぐことにもなりそうだが、神主が女性であることは、そう簡単なことでもないらしい。まだまだ日本では古いしきたりが残っていて、結婚式場から「神主は男性で」とか「男性の神職を送って欲しい」と、わざわざリクエストが来ることがあるという。
 地区の祭礼に男性神職たちと参加する機会があった時も、神主の長老から「装束が違う」とクレームされ悔しい思いをしたことがあった。男性と女性では装束が違うという規定は神社庁から決められていることで、ただ従っただけだった。「女性がいたことが伝統ある祭礼の習慣を壊した」ということなのだろうか。この時は深く傷ついたという。実際、国学院大学の養成セミナーでも女性は2割ほど。
     ◇
 三姉妹の真ん中で育った。小さい時からはかまを着けて巫女さんにさせられ、特に年末年始は、友人と楽しむ時間はまったく無かったという。
 そんな環境からか憧れはもっぱら洋風な世界だった。「当時、海外に出て行ける仕事の代表的なものがスチュワーデスだったんです。学校の文集にもスチュワーデスになりたい、と書いてたくらい」と当時を懐かしむ。
 立命館大学を卒業した後、憧れていたフライトアテンダントに。初めの1年は上海ベースの中国の航空会社に勤務。その後オーストラリア航空に移籍。住まいを香港に移し6年間客室乗務員として勤務し、十分、自分の夢を実現させた。滑らかで明快な発音、おだやかな会話の間、美しい日本語、立ち居振る舞いはそのころ身に付けたのだろうか。
    ◇
 「ここへ来てまだ三か月ですが、神様を入れたいと自宅用の小さなお社(やしろ=神棚)を持ってこられたアメリカ人がいました。神様に入って頂くためのお祓いと祝詞をあげるセレモニーを致しました。それと近々、結婚式の依頼が二つ入っているのですが、ひと組のカップルはまったくのニューヨーカー。神道ってすごく雰囲気的なところがあって、形から入ったとしても気持をリラックスさせることができれば、神道の役割は充分に果たせるものだと思います。元もと人をしばりつけない、堅苦しくないものなんです」
 「困った時の神頼みって言いますけど、困った時だけ来て日頃の緊張がぱっと解けるような そういう場所にしていきたいですね」
 新しい時代の女性神主。「ここでできるだけ他の国の文化に触れてみたい」。さらに「スチューワーデス、看護師、美容師を目指す人たちにマナー(接遇)とコミュニケーションを教えてきたので、日本人独特の感覚『察する』ということを神道と結びつけて話してみたいですね」と柔らかい言葉の中に意気込みを見せた
 (塩田眞実記者)