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よみタイムVol.138 2010年6月4日号掲載

篠原乃り子「Fountain at Saint Michel」

自作の巨大オートバイの前の篠原有司男
アーティスト 篠原有司男 & 篠原乃り子
夫婦2人展で燃える
まさに平成のポップ絵巻物
ダンスから学んだ筆さばき

 ギャラリーに入るとまず眼に飛び込んくるのは中央にデンと置かれた篠原有司男の存在感満点なゴツゴツしたブロンズ色の巨大オートバイ。恐竜の骨格のようにも見える篠原有司男の代表的な楽しいポップアートだ。
 大展示室から小展示室に移動すると今度は篠原乃り子の作品に圧倒されることになる。乃り子の出品は油彩2点のほかにギャラリー奥の壁面いっぱいぐるっと張り巡らしたキャンバスに奔放に描かれた自身の「Cutie」シリーズの大作=表紙=。
 この展覧会のために毎日ギャラリーに足を運び描き下ろしたものだ。いわば平成のポップ絵巻物として見ることもできそう。全体の大きな流れに、ひとつひとつの独立したエピソードが組み込まれている。男と女の人生、「女の一生」とも読み解ける楽しいカリカチュア・アートで、ユーモラス、コミカル、アイロニカルに描きわけられている。主人公のキューティーは乃り子、ハチャメチャ顔のブリーは有司男、2人の強烈な個性に挟まれながら、無邪気に明るいガミヌリーというキャラクターは夫婦の息子アレクサンダー空海。文字通り篠原ファミリーの愛と戦争がテーマだ。歯切れの良いタッチのブラッシュ・ストロークが印象的だ。
 「キューティーシリーズは96年から始めたんですけど、今回は大きさもあってダイナミックさが要求されましたね」。
 旅行先のアルゼンチンでタンゴに出会う。「いいな!」と思った。タンゴから社交ダンス全般にも関心が高まった。「私にとってダンスは運動みたいなものなんですね。ジムに行くような感覚。それに音楽がついてるでしょ。言うことないですね」「サンドラ・キャメロンという先生のレッスンを受けるとランニングしたあとのような爽快感が得られるんです」「たまたまレッスンのあとスカッとした気持ちでジャパンソサエティーの歌川国芳展に行ったのね。すると国芳のラインとキャメロン先生が教えてくれる足さばきのラインが共通してるってことに気づいた。私もこういうラインが描きたいなと思ってそれから1か月、一生懸命頑張って、今手ごたえが出てきたところ」と息をはずませる。  
 週3回のダンスの鍛錬から学ぶライン、すっとした足さばきは、そのまま今、篠原乃り子の作品にブラッシュ・ストロークとして取り込まれている。

 「ギューちゃん」の名前でよく知られる篠原有司男は東京生まれ。52年に東京芸大油絵科に入学、林武に師事するも57年に中退。60年に「読売アンデパンダン展」で活躍していた吉村益信、赤瀬川原平、荒川修作らとともに「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」を結成。根っからのハチャメチャ・キャラクターは水を得た魚のように短い活動期間に多くの伝説を残す。
 日本ではじめて頭を「モヒカン刈り」にして週刊誌のグラビアで取り上げられるなど、そのユニークさは話題性にもこと欠かなかった。
 69年にロックフェラー奨学金を得て渡米。以来ニューヨークを拠点としてエネルギッシュな制作活動を続ける。しかし、初めはまったく無名な上、作品は簡単には売れずソーホーの一角で赤貧に喘ぎながらも、明日は大金がころがり込むとの「信念」を曲げずに「アーチストとしての生き方」をひたすら追及、毎日たくましく明るく笑い飛ばしながら、しぶとく乗り切った伝説の男だ。グローブをキャンバスに叩きつける「ボクシング・ペインティング」は篠原有司男の代名詞ともなった。暴れん坊ともいえるユニークな生き方、アート至上主義のパッションで日本のアート界にも刺激を与え続け、日本アートの革命者としての評価は高い。
 07年には第48回毎日芸術賞を受賞。(このあたりのことは4月9日付「よみタイム」の連載コラム「飯村昭子の人間模様」を参照)。
 画家で妻の篠原乃り子は、72年にニューヨークのアート・スチューデント・リーグに留学。翌年21歳年上の篠原有司男と運命的に出会う。乃り子21歳の時のことだ。ソーホーの何もないロフトでのハチャメチャ・アーチスト篠原有司男との同棲生活に傷つき苦しみ、その中で成長する乃り子。金が入れば飲んでしまうパートナー、学費のための親からの仕送りはすべて家賃に消え、食費もままならない赤貧の中で、追い打ちのように妊娠、出産、子育てと目まぐるしい戦争のような毎日を体験する。
 夫婦共にアーチストであるために生じる軋轢もあればお互いに良い刺激を与え合うこともある。「ひと言では言い表せない」と乃り子はいう。周囲から一冊の小説になりそうだねと言われ続けた暮らしぶりはやがて本当に小説「ためいきの紐育」(三心堂出版刊94年)として結実した。
 乃り子を鍛え上げたこの当時の体験は現在の作品にも大きく影響を与え続けている。
(塩田眞実記者)

USHIO AND NORIKO SHINOHARA
"LOVE IS ROARRR!"
5月26日(水)〜7月3日(土)
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529 W. 20th St., #2W
212-727-3030
www.hpgrpgallery.com