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 よみタイムについて
 
 
よみタイムVol.129 2010年1月29日号掲載
切り絵作 久保 修さん
文化交流使でNYに
大震災を境に日本の風物を
小松左京、岡本太郎から厳しく


椿

 独自の手法と丹念な手仕事で、常に新しい「切り絵」の世界を追求している。
 文化庁から文化交流使に任命されたのは昨年7月。だがニューヨークへの赴任は展覧会などのスケジュールの都合で暮れも押し詰まった12月30日となった。任期は3月25日までの3か月。
 「過密スケジュールが続いてますが、多くのアメリカ人に『切り絵』を紹介したい」と講演やワークショップに精力的に取り組んでいる。
 久保は51年山口県美祢市生まれ。海外の風景、人物、日本の民家、旬の食材など何気ない日常の中のひとコマをモチーフとし繊細な技と独特の色調で切り絵界の第一人者となった。テーマによってはパステルやアクリル絵の具、砂、布、和紙など、様々な材料を取り入れたミックスメディアの手法で従来の切り絵のイメージを一新する作風を確立。上品でカラフルな配色の作品は幅広い人気を誇り現在、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで大活躍中だ。ニューヨークでは08年に日本クラブギャラリーで個展を開催している。

 切り絵画家としてトップランナーの地位を得るまでの道のりは平坦ではなかった。
 切り絵との出会いは大学時代に遡る。建築家を目指していた久保は完成予想図などを制作する中、ふとしたきっかけでナイフで切った紙の線のシャープな魅力にとりつかれる。朝から晩まで紙を切る日々が続いた。実家の父親は山口県で実績ある建築事務所を営んでいた。4人兄弟。上に姉が3人、末っ子の長男ということで、小学校の作文で建築家以外の職業になりたいなどと書けば父親から大目玉を食らうほど建築事務所の跡継ぎとして期待されていた。
 父は明治生まれの封建的な精神の持ち主。その厳格な父の膝元で大学進学のため大阪に出るまでキャンプにも行かせてもらえないような環境で育った。建築から切り絵の世界に人生の舵を切った時、当然のように父親からは勘当同然の扱いを受けた。
 子どものころから手先が器用で、工作では多くの賞を手にした。特に小学校時代に作ったロープウエーが走る「街並み」(ジオラマ)は学校中で評判となり、規模の大きな市展に出品する際にはサイズを大きくして出品を依頼されたほどだ。

 初期の個展にフラリと現れた作家の小松左京は、紙切りのワザを認めてくれながらも「一枚の絵としてもう少し何とかならないのか」と苦言する。小松左京を通じて個展に足を運んでくれた巨匠・岡本太郎からも「若いのにこんなにきれいな絵を描いていては駄目。もっと冒険しろ」と痛烈なコメントを浴びショックを受けた。
 「海外も見たほうがいい」との小松左京からの勧めもありスペインに1年遊学。マドリッドとエル・エスコリアルでアーチストと交わった。
 「木の文化から初めて見る石の文化、吸い取り紙のようにいろいろなものを吸収した」と言う。それまで図面に引かれた通りの事をきっちりこなす自信はあった。が、枠をはみ出るということが出来なかった。
 スペインでは、パステルを砕いて絵の具に混ぜるなど画材に対する自由な考え方ひとつ取っても目から鱗が落ちた。ピカソ美術館やパリのロダン美術館などで見た巨匠たちの切り紙作品からも多くを学んだ。それまで学んだ常識のほとんどを再考するほど自由な発想をスペインでは学んだ。
 西洋的なモチーフも多かった作品にやがて大きな変化が起こる。95年1月に起きた阪神・淡路大震災を境に作品の題材は日本の風物が中心となった。
 「震災時は西宮にいたんです。新築の家が建ち並び始めた復興の最中、ごみ捨て場に伝統工芸品がどんどん捨てられていくのを目の当たりにした」という。
 危機感を感じた。「日本の人もちょっとおかしくなってるなと感じたんです」。何百年もかかって積み上げられた伝統文化が一瞬のうちに灰燼に帰してしまう。災害に続く復興のたびに古いものは棄てられていくのではないかと。
 「身近にある文化に目を向けて大事にしたいと思うようになったんです」と穏やかな久保の眼が熱を帯びる。

 「切り絵は中国の剪紙(せんし)をルーツとしていますが、日本で育ち独自の熟成を遂げた日本独自の文化。「紙のジャポニスム」切り絵を「キリエ」として世界に通用させたい。文化交流使としてニューヨークで活動できる期間はわずか3か月だが「また必ず戻ってきます」ときっぱり。今回のニューヨーク滞在はその第一歩、久保修の世界への基盤作りは着々と進んでいるようだ。
(塩田眞実記者)

2月20日にワークショップ
 フェアフィールド・カウンティー日米協会は、切り絵アーティスト久保修氏を迎え、切り絵についての講演と実際に体験するワークショップを織り交ぜたイベントを開催する。
 久保修氏の切り絵は、海外の風景・人物・日本の民家・旬の食材などさまざま。テーマによっては、パステルやアクリル絵の具、砂、布、和紙など さまざまな材料を取り入れ、従来の切り絵のイメージを一新した。現在、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで活躍中。

■2月20日(土)午後2〜4時
■Greenwich Library
 101 West Putnam Avenue,
 Greenwich CT 06830
 2階コンファレンス室
■講演者:久保修氏
 (日本語、英語通訳で行う)
■費用:無料
■参加条件:講演・実演は60名限定
 ワークショップは年齢12歳以上
 (カッターなど使用するので)
 20名限定 ※どちらも先着順
■参加方法:日米協会 阿知波まで
 naokiachiwa@optonline.net
 (203) 542-0636