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よみタイムVol.112 2009年5月1日号掲載
JS新理事長 櫻井本篤

JS新理事長に就任した櫻井本篤氏
「日本の文化しっかり伝えたい」

 現在、ジャパン・ソサエティー(JS)のギャラリーで開催中のマンガ展「KRAZY! 〜アニメ+マンガ+ゲームの熱狂世界〜」(6月14日まで)が、連日大賑わいだ。
 1週間の来場者は1600人と、普段の集客の約3倍の人気となっている。日本が世界に誇るサブカルチャーが賑やかに集客力を見せつける中で、新理事長が就任した。
 「三菱商事時代の3年間をボードメンバーとして、その後総領事の時にも名誉ボードメンバーという形で関わってきたので、ある程度分かっているところもあったんですが、今、組織の見直しのために改めてスタッフ全員と対話して気づいたのは、みんなの熱意とレベルが想像してたのより相当高い。これまでそんなに低く見てたんですかって言われちゃいそうだけど」(笑)。
 米国三菱商事社長から、ニューヨーク総領事大使に就任したのが3年前。この時も初の民間出身の総領事ということで世間の注目を集めた。今回は日本人として初の理事長就任、初という文字がつくのはこれで2度目だ。
 ジャパン・ソサエティーは、非営利団体(NPO)で、企業とは違う。ターゲットをきっちり決めてあとは利潤を追求すればいいというものではない。ターゲット自体が非常に曖昧でつかみにくい上、数値化も難しい。
 民間企業と政府の仕事両方の経験という強みがある櫻井新理事長。「政府の活動というのも、曖昧模糊としてる面がある。私の両方の経験が少しずつでもお役に立てればとお引き受けしました」と話す。
 創立は1907年、2年前に100周年を迎えたばかり。現在のイメージの基礎が出来たのは戦後、52年にロックフェラー三世が理事長に就任してからと言われている。吉村順三が建築した建物「ジャパンハウス」の完成は71年のこと。当時のロックフェラー理事長が定義するジャパン・ソサエティーの役割は、日米の友好親善をより強固にするための双方向性のある文化交流だった。
 「だけど、日本にはもうアメリカの文化が氾濫してますよね。戦後のヒットチャートはアメリカの歌が独占してたし、マクドナルドやスーパーマーケットを始めアメリカ文化で溢れている。だからバランスを取るためにも、もっと日本の文化をアメリカにきちっと伝えていく必要がある、というのが今の僕の印象ですね」という。
 就任してからまだ1ヶ月にも満たない。「ジャパン・ソサエティーの役割とは何か」、一旦ニュートラルな視点から捉えなおし、対話を通じてスタッフやボードメンバーとの距離を詰めることに専念しているという。
 「もっと敷居を下げたほうがいいのかどうか(笑)、でもそんなことしちゃうと格式あるコンセプトを壊しちゃうことにもなりかねない(笑)」などと色々模索を繰り返している。
 「それと、日本で数年過ごしたアメリカ人ビジネスマンがNYに戻ってきて、ちょっと集まって日本の話をしたくても場所がないって言っている。そういう場所を提供するのはどうか、とかね」新しいアイデアも次々に湧いているようだ。「今は少し時間をかけて進むべき方向性をじっくり見定めようと考えているんです」。
 「ジャパン・ソサエティーっていうとね、ハイエンドなギャラリーでの展覧会やパフォーミングアートばかりがメディアで大きくとりあげられているが、企業向けプログラムでは、経済・金融・政治などの講演も活発にやっている。もっとこっちの方もPRしていきたい」そうだ。
 経験上、スポンサー企業の立場で考えることも出来る理事長は「お金出す民間企業の側から見れば、寄付金募る前に中身がちゃんとしてるの?というのが一番気になるんですよ、無駄使いしてるんじゃないかと」。
 スポンサー企業を納得させるために組織を常に効率良く、スリムで締まったものにしておくことが大事だという。実際、昨秋と比べるとスタッフの人数は補充見合わせも含めて30%減らした。
 現在ボードメンバーの約4割が日本人だが、ジャパン・ソサエティーは歴史からいってもアメリカの団体であることに違いはない。もっと「日本人の参加を促すような、参加したいと思わせるようなジャパン・ソサエティーにしていかなければならないと思ってるんです」という。
 昨年秋から続く経済危機の中で、収入への影響は出ているのだろうか。
 「どこのNPOも一緒だと思うけど、お金の集まり方が極端に減っています」と嘆く。
 収入は個人会員、法人会員からの会費、企業寄付やファンドレイズ・イベントの収益などで賄われている。「そういう会員たちをどうつなぎ止められるかが最も直近の重要課題」と口元を締めた。
 領事館大使時代とはひと味違った人々との交流や、アッパーイーストサイドのアパートからの「バス通勤も楽しい」と笑顔で語った。
(塩田眞実記者)