カラフルなファブリックが整然と並ぶ店内。ガーメント地区ではめずらしい |
今、マンハッタンで大ブレイク中のキルト専門店「シティ・キルター」。色とりどりの糸、布、針、パターン、素材からカラフルな完成品まで、まさにキルト博物館だ。店内に入ってすぐ、日本製の糸や生地専門のコーナーが目を引く。キルト関連の本や雑誌にも興味を持つオーナーの好みで、世界各国から日本の雑誌や書籍までがずらりと並んでいる。日本のタレントでキルト手芸の専門家でもあるキャシー中島さんの本も数冊並んでいる。朝から晩まで客の流れが絶えることはない。男性客もちらほら目に付くのが印象的だ。
この店はマンハッタン西25丁目にある。「ザガット」のショッピングガイドで、品質、サービス、プレゼンテーションのいずれも高得点をマーク、調和の取れた「優良店舗20選」に、ティファニーやサックスフィフィスアベニューなどと肩を並べた。
オーナーはキャシー・イッゾさん。夫のデイル・リールさんが全面的にバックアップしている。キルト店を出すまでは夫婦ともにテレビ業界に身を置いていた。日本の広告業界とも関係が深い。90年代初め、キャシーさんがキルトに魅せられ、97年にキルトストアをオープン。03年に現在の25丁目店に移転した。
シティ・キルターの特徴は、年間通じてのキルトクラスの充実ぶり。「ニューヨーク・マガジン」でも最良のキルトクラスと絶賛されている。初心者から経験豊富な生徒までを対象に毎セメスター45のクラスが用意されていて、ひとクラスの定員は12人まで。ジュディ・ドーニアスさんを始め優秀な先生14人が指導にあたっている。
クラスは月曜日以外は毎日昼と夜2時間ずつ、ろうけつ染めや人気の高い日本の「刺し子」の指導も行われている。日本人の生徒も多く、この日午後のクラスも3人の生徒が受講していた。
日本からわざわざシティ・キルターを訪ねて来る熱心な愛好者も多いという。「手縫いと機械縫いがあるんです」と特殊なキルト用のミシンも扱っている。
キャシーさんとデイルさん夫妻は、ともにかつて日本語を学んだ経験もあり、大の親日家。ほぼ毎年東京や横浜で開かれるキルト・ショーに出かけ各国のキルト愛好家と交流を深めている。
デイルさんは「この前は長野から飛騨高山までクルマを借りてドライブを楽しんだけど日本の紅葉は素晴らしいですね」と目を細める。「キルト手芸は、言葉がなくても通じ合うことができるコミュニケーション・ツール。キルト手芸はアメリカが本場ですが、今、アメリカ人の間でブームとなっている刺し子手芸も含め、日本から学ぶものもたくさんあります。キルトを通じて日本とアメリカがもっと近くなるといいんだけど」と夫妻は微笑んだ。
(塩田眞実記者)
The City Quilter
133 W. 25th St (Bet 6th & 7th Aves.)
212-807-0390
火〜金11am-7 pm,
土10am - 6pm, 日11am - 5 pm
月閉店 www.cityquilter.com
〜キルトとは〜
元々ヨーロッパで発祥した手芸のキルト。主流はボルティモアキルトと呼ばれるもので19世紀後半、メソジスト会派の女性が献金を募る目的で作ったり、牧師さんへの贈り物、結婚のお祝いとして作られたものが多いという。風景を写実的に表した模様や、華やかな花のアップリケが特徴的だ。現在では、その手法を真似て作るものを特にボルティモアキルトと呼ぶ場合がある。日本ではパッチワークと呼ばれることが多いが、まったく同じ物。日本はアメリカに次いで手芸キルトの盛んな国で、毎年国際パッチワーク・フェアが盛大に開かれている。 |
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