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 よみタイムについて
 
 
よみタイムVol.105 2009年1月23日号掲載
演劇プロデューサー 出口 最一さん

「ブルーマン」から16年ーーー
「TRIP OF LOVE」で新たな挑戦
大阪公演で確かな手応え


「Trip Of The Love」の大阪公演から

 ブロードウエーが今「冬の時代」に突入している。人気作品の「ヘア・スプレー」「モンティ・パイソンのスパマロット」「春のめざめ」「13」「ジプシー」など13の作品が続々閉幕した。
 「ひどい落ち込みですね。TKTS(ブロードウエー47丁目のミュージカルのチケットを約半額で売っているところ)なんか、午後5時以降はガラガラですからね。観光客が減ったんですね」と嘆く。
 実は、今年秋のオープンを目指している作品がある。「トリップ・オブ・ラブ」(Trip of Love)。91年にプロデュースした「ブルーマン」以来、16年ぶりの新作だ。
 10年前から企画を錬り、昨年4月14日から5月28日まで大阪の「シアターBRAVA」で1か月半に渡って「トライアウト」公演を行った。これはブロードウエー上演前に、客の反応を見るために行われるもので、通常は米国内の地方都市で実施される。日本で行うのは異例のことだった。
 「大阪は芸に厳しいところ。ここで成功させれば、間違いないと思った」といっていたが、連日の「満員御礼」で予定回数を2週間伸ばしての追加公演となった。
 この「トリップ・オブ・ラブ」は原案・演出・振付・美術が「キャッツ」「スターライト・エクスプレス」などのヒット作品に携わったジェームス・ウォルスキー、女優でバレエダンサーの鳥居かほりらが出演している。
 ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を下敷きにした構成で、観客席の少女が、舞台上の世界に引き込まれ、幻想の60年代を旅するという物語。歌と踊りだけで、セリフはない。「ムーンリバー」「イパネマの娘」「サウンド・オブ・サイレンス」など26曲が歌われるというもの。
 「客の反応もすごくよかったから、自信ありますが、問題はタイミングですね。果たしてこの秋オープンしていいものかどうか」と迷っているという。劇場からは「是非、やって欲しい」と強いリクエストがあるが、1500万ドルの資金集めも難題だ。
 「やるからには、中途半端はダメですからね。トップ3に入らないと」と気を引き締める。
   ◇
 59年奈良県生まれ。京都外国語大学時代に演劇の世界に魅せられ、演劇部に所属。大阪でミュージカルに出演したこともある。大学卒業したあと、日本で最も人気のある劇団「四季」に応募。800人の中からわずか6人合格という難関を突破、「コーラスライン」などに出演したが「役者より演出に興味があった」と4年間の劇団生活の大半を演出の勉強に精を出した。
 しかし、ミュージカルの本場はニューヨーク。「日本のエンターテイメントは、海外からの輸入ですよね。それならば本場で学ぶ方が絶対にいいと思ってニューヨーク行きを決めました」と知人の伝手を頼って、ニューヨークの劇団に応募。そのうちのひとつ「サークルレパートリーカンパニー」から「合格」の通知が来た。
 87年にあこがれのニューヨークにやってきた。外国語大学で英語は学んでいたため、語学は半年でマスターした。3年間、たっぷりとインターンで学んだ。
 「プロデューサーの下で、制作補佐、演出助手というポジションを得ました。いろんな役者、演出家に毎日会えるんですよオーディションなどで役者の見る目を養いました」という。
 そんな時、「ラ・ママ劇場」でやっている「ブルーマン」に出会った。「すごいグループ」と度肝を抜かれた。見終わったあと即楽屋へ行って、「日本でどうだろう」と打診したが、「ブルーマンはニューヨークで」という。「それなら自分にプロデューサーをさせて欲しい」積極的に申し入れて、友人とともにブルーマンのプロデュースプロジェクトを立ち上げることになった。
 ニューヨークに来てわずか4年目のことだった。当時、40万ドルの費用は莫大だった。知り合いのアメリカ人や日本の人脈を頼って、何とかかき集めた。
 リズム(ビート)にのりながら一言もしゃべらない3人のブルーマンたちが繰り広げる、ミステリアスでコミカルなパフォーマンスだが、最初は集客が大変だった。
 だが、この作品は専門家から注目を集めた。オフオフ・ブロードウエーからアスタープレイスのオフ・ブロードウエーに格上げ。連日満員で爆発的な大ヒットとなった。
 今、エンターテインメント産業は金融危機の影響をまともに受けて、大きな岐路に立っている。
 「でも、我々が何かやらないと立ち上がれないです」。今年、50歳の節目に新しい作品で勝負する。
(吉澤信政記者)