よみタイム|2025年1月10日号・Vol.485デジタル版 & バックナンバーはこちら

「東京からタイムズスクエアへ」早間美紀、山本恵理

「東京からタイムズスクエアへ」
両国の豊かなジャズ文化を祝う
早間美紀、山本恵理

女性ジャズミュージシャンとして穐吉敏子が残した功績は計り知れない。1950年代から、ニューヨークの一流ジャズメンたちの中で活躍し続けた穐吉は、間違いなく道を切り開いた第一人者だった。

そんな彼女が残した足跡に敬意を示したコンサートシリーズ「From Tokyo To Times Square(東京からタイムズスクエアへ)」。穐吉を「日本人ジャズピアニストのゴッドマザー」と評価する主宰のチャールズ・カルリーニは、日本人女性ジャズピアニスト7人にフォーカスした全7回のコンサートを企画。2025年2月と3月に出演する早間美紀と、山本恵里に話をきいた。(河野洋)

百戦錬磨のジャズピアニスト
早間美紀|Miki Hayama

早間美紀は京都生まれ、ニューヨークで揉まれた百戦錬磨のジャズピアニストで、グラミー賞ノミネート歴を持つ。5歳でピアノを始め、小学校で洋楽に、中学校でジャズに感動し、魂が揺れた。高校でオスカー・ピーターソンやキース・ジャレットを聴き、将来ジャズピアニストになる決意をした。

早間美紀
早間美紀(Photo courtesy by artist)

音楽大学ではクラシックのピアノを専攻。京都の藤ジャズスクールで藤井貞泰氏に師事し、ジャズピアノを無我夢中で練習した。1996年に横浜プロムナード・コンペティションに出場。関西グループとして初優勝を遂げるが、関西のジャズに限界を感じ、90年後半ニューヨークへ。ジャズクラブのセッションで腕を磨いていた頃、突然エキストラのオファーが舞い込みコネククョンを作り、仕事を増やしていった。

24年前にメンターとなるケニー・ギャレットとの出会いが、彼女を大舞台へ押し上げ、当時興味があったスムースジャズから、またストレート・アヘッドへ移行。現在の彼女を支えてきたのは、ジャズ歌手のニーナ・フリーロン始めとする数多くのバンドのツアーやレコーディングという音楽漬けの毎日だった。

「グラミー賞ノミネート・シンガーのニーナ ・フリーロンとは15年も一緒に活動していますが、昔、ツアー先でニーナのマネージャーと間違えられることもありました」と苦笑する。黒人ミュージシャンの中で、アジア人が早間だけということも少なくないし、人種差別を受けたとしても自分を主張しないければならない。「やはり2倍ぐらい強くないと、このアメリカ社会で生きていけません」と語気を強める。

その後も数多くの著名バンドに抜擢され世界各国を回り、サイドメンとして活躍した。

「仕事をいただいたら120%頑張って、練習しまくる。それが認められれば次も呼んでもらえる。みんな、頑張っている人をちゃんと見ている。だからチャンスが巡ってくるんです」

サイドメンからリーダーとしての活動を目論む早間美紀。今回はサックス奏者のマーク・シムを迎え、アコースティックとエレクトロニックの二面性を堪能させてくれる。

多様なニューヨーク・ジャズに刺激
山本恵理

山本恵理は大阪生まれ。3歳でピアノを、8歳の時に独学で作曲を始め、大学ではピアノのみならず、声楽、ビオラ、作曲も学んだ。1995年、ニューヨークでトミー・フラナガンの演奏に衝撃を受け、ジャズに傾倒、同年ニューヨークへ。この地で、ポール・ブレイ、ゲーリー・ピーコック、ポール・モーションと言ったピアニストたちのジャズをクラブで初めて聴き、その音楽性にとても共感したという。

山本恵理
山本恵理(Photo courtesy by artist)

「ジャズと言っても、特にニューヨークには多様なスタイルがあることを知り、刺激を受けました。私自身もジャズという名の元、自分を自由に表現していこうと心に決めました」

新しい扉を開いてくれたニューヨークで山本は、合唱団との「江州音頭組曲」、パンデミック時に制作したミュージック・ビデオ 「A Woman With a Purple Wig」など、ユニークな切り口で独自のジャズ・プロジェクトに取り組む。

「合唱曲は、ある日、自然に地元の盆踊り曲をふと口ずさみ、それをモチーフに、沢山の人が参加できる曲を書こうと思い完成させました。MVは、パンデミックをニューヨークで過ごしていたある日、自然にメロディーと歌詞が同時に出来ました。レコーディングの際、自分で歌った方が、メッセージがよりリスナーに伝わると、仲間のミュージシャンに後押しされ挑戦。曲やアイデアは普段の生活から自然と出てくるのです」

2024年は2回に及ぶ欧州と日本ツアーに加え、スペインで録音したソロ、ニューヨークで新たに結成したカルテットの2枚のアルバム・リリースと、世界を舞台に活発に活動。

「25年春は、サイドマンで参加した数枚のアルバムの発表、年内に米国、欧州、日本ツアーも予定しています」山本の音楽飛行はとどまるところを知らない。



コンサートシリーズ「From Tokyo To Times Square(東京からタイムズスクエアへ)」は、一流の日本人女性ジャズピアニストたちの演奏を毎月聴き比べることができる贅沢な企画だ。

From Tokyo To Times Square(東京からタイムズスクエアへ)
■信実美穂:1月7日(火)
■早間美紀 :2月4日(火)
■山本恵理: 3月4日(火)
■加藤真亜沙 :4月1日(火)
■RINA: 5月27日(火) ※各日:7pm/9:30pm
■会場:Klavierhaus:790 11th Avenue
■チケット(各日):$25〜
https://decibelpresents.com/event/from-tokyo-to-times-square

早川&山本

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