2018年12月21日号 Vol.340

世界の音楽を
一夜で「体感」する
「グローバルフェスト」

グローバルフェスト
gFメンバー(左から)ブラギン氏、ソファー氏、セーク氏


gFは2003年にビル・ブラギン、マウア・アロンソン、そしてイザベル・ソファーの3人によって設立された。数年後、マウアのあと釜にディレクターとしてシャンタ・ セークが入る。gFが生まれた背景には、インターナショナル・アーティストたちがアメリカにおいて継続的にツアー活動が出来る各地でのコミュニティ作りとマーケットの繁栄があった。
「ワールド音楽をパフォーミング・アーツのメインストリームに引き上げることが目的でした。9・11以降に見られた外国人嫌いや外国文化を遮断する傾向を防ぐ意味合いも持ち合わせています。残念なことに、近年この傾向が再び見られますね」とイザベルは語る。
gFは、毎年1月にニューヨークで行われるAPAP(Association of Performing Arts Professionals)と呼ばれるパフォーミング・アーツの見本市に合わせて開催されてきた。世界中から4万人もの関係者が集まる絶好のタイミングに、gFが選ぶ12組のアーティストをライブ・ショーケースという形で紹介。たった一晩で効果的に業界人や音楽ファンに見てもらおうというのが大きな特徴だ。
「私たちは長年、海外のアーティストをアメリカへ招いてきました。が、国境警備の強化とともに我々は暗黒時代に突入し、彼らが米国で活動するハードルは益々高くなってきました。今年は、国内に介在する政治による対立や不和を戒め、世界中から集まるアーティストたちと米国人の距離を縮めたい。外国人アーティストが自分たちの文化を分かち合い、彼らの物語を伝える場を提供するという意味で、今年も非常に重要な年になります」と意気込みを語る。

gFは毎年意図的に女性アーティストをフィーチャーしていて、今年も例外に漏れず、エミシスト・キア、マゴス・ヘレーラなど半数は女性がフロントを務める。gF2019は女性が活躍する猪突猛進の年になりそうだ。
「私たちgFは、偏見のない心でフェスティバルに来てもらえるようオーディエンスを激励し、世界から集められた新しいサウンドを発見してもらうことを願っています。ぜひこの素晴らしい音楽の旅にみなさんも参加してください」

グローバルフェスト

イザベルお薦め
アーティスト4組


南アフリカ共和国のソウェトから、米国デビューとなるB.C.U.C.(バントゥ・コンティヌア・ウフル・コンシャスネス)は、地元の酒場でしか聞けない伝統かつ儀式的な現地特有の土着サウンドを届けてくれる。ファンク、パンク、ヒップホップ、アフロポップをミックスした伝統音楽は驚異的にユニーク。

47ソウルはパレスチナのビラード・シャームにルーツを持つる四人グループで、エレクトロ・ダブケ(アラブ舞踊)を演奏する。アングラ・サウンドは世界中のファンを魅了。gFがアメリカで初のライブになる。

エミシスト・キアはテネシー出身のアフリカ系米国人シンガー・ソングライターで、音楽学者、マルチプレイヤーでもある。自称、南部ゴシック詩人。味わい深い催眠的な歌声は古くも新しくも心に響く。

コンボ・チンビータはコロンビアにルーツを持ち、ニューヨークで一躍脚光を浴びたホットなバンド。サイケデリック且つ屈折気味なトロピカル・サウンドは麻薬的に楽しい。

ここアメリカ、ニューヨークで一夜にして世界中の音楽を楽しめるグローバルフェストは貴重なフェスティバルだ。ワールドミュージックの繁栄とアーティストがツアーやライブ活動を継続的に行えるサステイナブルな音楽コミュニティ。デジタル音楽が氾濫する現代において、便利にアナログ体験できるライブ・ショーケースは人と人を繋ぐ上でも非常に大きな役割を果たしている。新年の幕開けと共にグローバルフェストに集結する12組のアーティストたち。コパカバーナでの熱いステージが今から楽しみだ。

グローバルフェスト
その他の
出演アーティスト


オルケスタ・アコカンは20世紀中頃に全盛期だったニューヨークのアフロキューバンに傾倒したパワフルなキューバ音楽を演奏する。

クラシックピアノとオペラの素養を兼ね備え、カナダで名誉あるポラリス賞を受賞したジェレミー・ダッチャーは、カナダの先住民『Wolastoqiyik』が歌った音楽を見事に現代のサウンドフォーマットで再構築する。壮大なカナダの大地を震わすジェレミーの歌声に心は躍る。

マゴス・ヘレーラ&ブルックリン・ライダーによるアメリカとメキシコを結ぶ音楽プロジェクト『ドリーマーズ』。ラテンアメリカを代表するコンテンポラリージャズボーカリストとニューヨークならでは斬新かつ革新的な4重奏が織りなす音楽はエレガントかつエキゾチック。音の夢想家たちが追求する世界の果てには、さらなる夢が広がる。

米国ニューオリンズからは、ストリートで繰り広げられるマルディグラを重厚なブラスサウンドで包み込むインディアン・ファンクの真骨頂チャ・ワが登場。最新作「スパイボーイ」の熱いスーパーファンクがステージで再演される。

ウクライナからはアングラ・パンク・キャバレーの女性7人組ダク・ドーターズがやってくる。キエフのダク劇場の女優たちが自ら楽器を取り、フランスの酒場の一場面をシアトリカルに演じるステージは見もの。

デバシシ・バタチャリヤは、ヒンドゥスタン・スライドギターの開発者であり、演奏家、作曲家。同じ演奏家が2度演奏しても、決して同じ結果を生み出さないと言われる即興演奏が基本となるインド古典音楽ラーガをユニークなアプローチで演奏する。

ガト・プレートはプロデューサーのリー・ベースとラッパー/シンガーのガタ・ミステリオーザによるデュオ。ハイパーソニックなエレクトロ・ビートに乗せてアフリカ音楽の楽園が広がるガーナ出身のベースのポリリズム、モザンビーク出身のガタのポルトガル語のスラングが、二人が拠点とするドイツで融合しスパークする。未来を予感させるデジタル・アフロ・ダンス音楽。

1986年に結成されたグアドループの女性グループ、ズーク・マシン。ズークは、パーティの意味で、文字通りの爽やかで弾ける軽快なトロピカルポップスを聴かせてくれる。

globalFEST 2019
■1月6日 (日) 7:00pm
■会場:The Copacabana
 Times Square
 268 W. 47th St.
■$50
www.copacabanany.com
www.globalfest.org


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